「尾瀬のミズバショウ復活へ」 尾瀬高校の取り組み

23/11/18まで

石丸謙二郎の山カフェ

放送日:2023/11/11

#登山#ネイチャー#環境#ローカル

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登山を趣味とし、山を愛する石丸謙二郎さんが「山」をテーマに、さまざまな企画をお届けする<石丸謙二郎の山カフェ>。今回のテーマは、「尾瀬のミズバショウ復活へ」。尾瀬沼への登山口にあたる群馬県の大清水湿原では、激減したミズバショウを復活させようという試みが行われています。プロジェクトを担うのは、群馬県立尾瀬高校の生徒たち。山本アナウンサーが、湿原で苗を植える作業に挑戦!

【出演者】
石丸:石丸謙二郎さん(俳優・ナレーター)
山本:山本志保アナウンサー
青嶋:青嶋春奈さん(尾瀬高校 自然環境科 3年生)
荒井:荒井裕二さん(尾瀬高校 実習助手)

ミズバショウの苗を3年かけて育てる

山本:
ここからは、私が尾瀬に行きまして、群馬県立尾瀬高校の生徒たちと一緒に、ミズバショウの苗を植える活動に参加してきた様子をお送りします。群馬県側から尾瀬沼へ向かう玄関口として、大清水湿原という場所があります。そこのミズバショウは、かつては2万本ありましたが、シカの食害や環境の変化などが原因で、一時5パーセント以下、つまり1,000本以下に激減してしまいました。

石丸:
そんなに少なくなっている。

山本:
そこで、2020年から、ミズバショウの復活を目指して、尾瀬高校や地元の企業、地域の皆さんが協力して「尾瀬の水芭蕉プロジェクト」が始まりました。尾瀬高校には、全国的にもめずらしい「自然環境科」があり、生態系の勉強や自然の中でのフィールドワークに力を入れています。授業の一環として、ミズバショウの苗を育てる活動を行っています。

石丸:
高校生が苗を育てているのか! 「うらやましい」とも言えるし、大変だろうね。

山本:
前回、ことし5月に出演してもらった尾瀬高校自然環境科3年生の青嶋春奈さんと荒井裕二先生に、校内の様子や苗を育てている場所を案内してもらいました。

~尾瀬高校探訪~

山本:
群馬県の沼田駅からバスで1時間、尾瀬高校に到着しました。けさはよく晴れていますよ。青い空に木々の緑がよく映えています。
尾瀬高校の校舎が見えてきました! クリーム色の壁にテラコッタの瓦、おしゃれですね。リゾートホテルという感じがします。……あ、おはようございます!

青嶋:
おはようございます。尾瀬高校自然環境科の青嶋春奈です。よろしくお願いします。

山本:
お久しぶりです! 5月の「山カフェ」ではお世話になりました。あのときはテレビ電話でしたけれども、直接お会いできてうれしいです。

青嶋:
私もうれしいです!

山本:
緑のギンガムのシャツに、ズボンは山登り用で、メッシュのベスト。これは制服ですか?

青嶋:
これは自然環境科が、実習に行くときの専用の制服になっていて、実習がしやすい服装になっています。

山本:
かわいい! きょうは、いろいろお手伝いさせてください。
ところで、この校舎、すごくおしゃれですね。

青嶋:
内装もきれいになっています。

山本:
では、ちょっと見せてください! よろしくお願いします。

「自然環境科」と書かれた木の看板がありますよ。広い吹き抜けのロビーですね。春奈さん、あれは?

青嶋:
地域の動物のはく製になっています。

山本:
大きなイノシシ、ツキノワグマと、シカ、カモシカ。こうした動物のはく製が飾ってあるのは、いかにも自然環境科ですね。鳥のはく製もあります。これは、ムササビ! こうして見てみると、地域の生き物がよく分かりますね。

~校舎そばの「圃場(ほじょう)」に移動~

青嶋:
ここが、ミズバショウの苗を育てていた圃場(ほじょう:苗を育てる場所)です。

山本:
上に金属の柱があって、銀色のメッシュ状のシートがかけてありますね。

青嶋:
圃場は、ミズバショウを直射日光から守るための場所で、この圃場は、卒業した先輩が設計したものです。

山本:
生徒さんが自ら考えて。人工のプールのような、深さ10~15センチぐらいでしょうか? 畳3枚分ぐらいのプールを作ったのですね。そこで日陰を作っている。
ミズバショウは、そんなに繊細な植物なのですか?

青嶋:
まだ小さいものだと、かなり弱かったり、日光で枯れてしまったりもするので、日陰にして守っています。

山本:
苗を育てるまでに、どれぐらいの日数かかるのですか?

青嶋:
だいたい3年ほどかけて育てたものを移植しています。

山本:
3年って大変ですね。

青嶋:
3年という期間なので、私たちの先輩が育ててきたものを、私たちが植えるという形になっています。

山本:
では、苗そのものを見せていただけますか?

山本:
かわいい! 高さが7センチ、ものによっては5センチぐらいかな? 下からニョキっとミョウガのようなものが出てきて、それが双葉のようにパカッと広がっている。みずみずしい緑色ですよ。ミズバショウの苗の頃って、こういう感じなのですね。柔らかそうな肉厚の葉っぱです。一番気をつける世話のポイントはどこでしょう?

青嶋:
「水が枯れないこと」と、「直射日光が当たらないこと」ですかね。水の量が多すぎると、ポットの中の土が流れてしまうので、ポットからあふれない範囲で、水の量を調整するのは大変でしたね。

山本:
学校生活をしながらのお世話ですよね? みんなで交代しながら?

青嶋:
ミズバショウの世話は、3年生の授業の中で行っているので、みんなで一斉にやっていますね。

山本:
授業の一環なんですか! 育て方はどうやって学ぶのですか?

荒井:
授業で教えて4年目になりますが、試行錯誤ですね。

山本:
みんなで考えながら、年々ノウハウを蓄積していく感じなのでしょうか?

荒井:
天然だと湧き水が流れていますが、学校だと湧き水が流れていないので、水道水とか、そういった条件を考えながらですかね。

山本:
これから大きくなってほしいな! 皆さん、ミズバショウを何株くらい育てているのですか?

青嶋:
育て始めは、1,000株ほど。最終的に育つのは、その半分くらいになってしまいます。

山本:
成長してくれるのは、そのうちの50パーセント。先輩から春奈さんに受け継がれて、春奈さんからまた後輩たちに受け継いでいく。

青嶋:
先輩たちが時間をかけて育ててきたものなので、植えるのは緊張しますが、うまく根づいてくれたらいいなと思っています。

~スタジオより~

石丸:
ミズバショウの苗を見てきたんだね。

山本:
小さなミョウガみたいな形で、そこからグググッと伸びてくると、2枚の葉っぱが双葉のように開いて。「ミズバショウを育てる取り組みは大変めずらしい」ということで、全国から「参考にしたい」という問い合わせも多く来ているそうです。

大清水湿原で苗植えを体験!

山本:
これから行くところは、尾瀬の玄関口、大清水湿原です。尾瀬沼へ向かう登山口の一つになっている場所です。大清水湿原にミズバショウの苗を植えるために、尾瀬高校から車に乗っておよそ30分、生徒たちと一緒にマイクロバスで揺られながら、標高およそ1,200メートルの大清水湿原に向かいました。

~大清水湿原に到着~

山本:
大清水湿原口に到着しました。今、天気は曇り空です。尾瀬高校に入ったときは晴れていたので、ぐっと気温が下がった感じがしますね。そして私、初めて尾瀬の入り口に来ましたが、丈の低い草が一面に生えていて、ところどころに大きな木が立っています。葉っぱは落ちているものが多いですが、中には紅葉している木があって、だいだい色、焦げ茶色、黄色、いろいろな色の葉が見えます。
近くに川があるのでしょうか? 沢の水の流れる音がして、それが周りの山に反響しているような音がします。とても静かなところですね。
そして、地面を見てみると、じめじめとした、むき出しの地面が見えているところがあって、たまに水がたまっていたり、流れているところもありますね。ここを「湿地」というんでしょうね? そして、幅の広い木道が通っています。

青嶋:
これは「ワイド木道」といい、尾瀬ヶ原などの木道よりも広くなっていて、誰でも来やすいような環境になっています。

山本:
尾瀬沼の木道って、よく写真や映像で見たことがありますが、この木道は、下に沈まないようにするためなのですか?

青嶋:
そうですね。下に沈んでしまうと、そこに生えている植物などにも影響が出てしまうので、木道を使って植物を守ったり、見やすくしたりしています。

山本:
私、人生初めての尾瀬なんです。このあたりを案内してもらってもいいですか?

青嶋:
分かりました!

~尾瀬沼への入り口、大清水口へ移動~

山本:
大清水口というところにやってきました。尾瀬沼に行く玄関口のようなところですね。先ほど、大清水湿原に着いたときは、「冷え込んできたな」と思いましたが、今は歩いているせいか、ちょうどいい気温になってきました。風はそよそよと吹いていて、山の葉を揺らすと、葉が落ちてきます。今は、落ち葉が積もっている道を歩いていますが、ここはどんな道ですか?

青嶋:
会津と沼田をつなぐ道になっていて、400年以上の歴史がある道になっています。

山本:
福島県の会津と、群馬県の沼田を結ぶ道なのですか。昔の人は、ここを行き来してきたんですね。
「大清水登山口」という柱が見えてきました。ここからいよいよ尾瀬沼の中心部に入っていく、そんな道でしょうね。

~尾瀬沼を見てきた登山客と出会う~

山本:
こんにちは~。尾瀬沼は見てきました? 寒かったですか?

女性観光客:
寒かったです。

男性観光客:
きれいでしたけれど、人はあまりいなかったですね。

山本:
木道のあたりとか歩かれました?

男性観光客:
尾瀬沼を1周。

山本:
いいな~! お疲れ様でした。お気をつけて!

積もった落ち葉の上を歩くのは、気持ちいいですね。ひさびさに山に来ましたが「山っていいな」と思いました。

青嶋:
秋の時期は、実もたくさんできるので、それを探すのも楽しいです。

~スタジオより~

石丸:
いよいよ尾瀬に踏み込みましたね。
秋は、花はないわけでしょう?

山本:
色合いはきれいなんです。ただ、実を探そうと思いましたが、なかなか見つからなかったですね。

石丸:
今、水の音がしていたのでしょう? あれは沢?

山本:
大清水湿原の下のほうに流れている沢でして。

石丸:
苗を植えるところは湿原ではない?

山本:
湿原なのですが、ちょっと乾いている印象です。時期的なものかもしれませんし、環境の変化で生まれた状態かもしれませんが。

尾瀬高校の生徒たちがいよいよ苗を植えるわけですが、(他県出身など)尾瀬の近辺にホームステイをしている生徒たちもいますので、マイクロバスで尾瀬高校を出発して、みんなを道中で乗せながら、わいわいおしゃべりをして、道中、車内はにぎやかでした。

石丸:
楽しそうだね。課外授業なんでしょ?

山本:
みんな元気なんですよ。和気あいあいと行きながら、大清水湿原に到着したというところなんです。

いよいよミズバショウの苗を植えていきます。今回は、尾瀬高校の生徒の皆さんに加えて、地元の企業の方々、ボランティアの方たちなど、20人ほどが参加をして、およそ200株の苗を植えました。
どうやって植えるかと言いますと、長さ150センチぐらいの、はさみのような形状のスコップがありまして、それを土にさし、ちょっとひねりながら持ち上げて、空いた穴の中に苗を入れるという作業です。木道から下におり、よきところを探って植えるという、そんな作業でした。

石丸:
長靴かな?

山本:
もちろんです。長靴にゴム手袋でバッチリ決めて、参加してきました。様子をお聴きいただきましょう。

~ミズバショウの苗を植える様子~

荒井:
水があるところがミズバショウは好きなので、この辺りが育ちやすいです。

山本:
掘る深さは?

荒井:
掘る深さは、このポットのぐらいの深さなので、10センチぐらいで大丈夫だと思います。

山本:
ちょっとぬかるんだところに、スコップのようなものを入れていきます。

青嶋:
ポットくらいなので、これぐらいですね。結構土が固いんですよ。

山本:
手伝いましょう。……よっと!

青嶋:
スコップを抜くときは、はさんで回すと……。

山本:
ミズバショウ植えるためにあるかのような道具があるのですね。土がひとつかみ取れましたね。15センチぐらいの穴が開きましたよ。ミズバショウの苗をポットから出す……すごい! 真っ白い根がぐるぐる回ってます。今、2人で開けた穴に苗を植えました。

青嶋:
ここに、さっき取り出した土を(苗のまわりに)戻します。

山本:
苗の先端が2~3センチ見えるぐらいまで、土を戻すことができました。

青嶋:
こんな感じで大丈夫だと思います。

山本:
一つ苗を植えることができました!

青嶋:
この作業を繰り返していきたいと思います。

~スタジオより~

石丸:
掘るのがおもしろそうだね!

山本:
土がスポッとすぐ抜けるかと思いきや、大変つらいところもありまして。できるだけ土が柔らかいところを選ぶのですが、硬いところもあるんです。時期によるものだと思いますが、乾いている場所も多くて、穴を開けるのが苦労しましたし、木の根っこがはびこってる部分もあって。森の中にある湿原ですから、環境のせいなのでしょうかね? 木の根を断ち切るのも、時間がかかりました。

石丸:
寒かった?

山本:
寒い! キーンとした山の寒さですよ。
すでに湿原にある苗は、見えにくいものですから、傷つけないように細心の注意を払って、植える場所を探して植えました。


番組では、写真や番組へのメッセージの投稿をお待ちしております。また、最新の放送回は「らじる★らじる」の聴き逃しサービスでお聴きいただけます。ぜひ、ご利用ください。


【放送】
2023/11/11 「石丸謙二郎の山カフェ」

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