【アフロ記者】盆踊りの魅力とは?

23/09/07まで

ラジオ深夜便

放送日:2023/08/03

#アフロ記者#ライフスタイル

暮らしを豊かにする達人たちにお話を伺う「ライフスタイル 令和つれづれ草」。アフロヘアーがトレードマークの元新聞記者・稲垣えみ子さん。今回は地元の盆踊りのお話。老若男女関係なく一緒に楽しめる盆踊りの魅力とは?(聞き手・渡邊あゆみアンカー)

【出演者】
稲垣:稲垣えみ子さん(元新聞記者)

お年寄りと若い人が一緒になって楽しめる行事

――稲垣さん、「あさイチ」にご出演ということでしたし、お暑い中、お元気なようですね。

稲垣:
ありがとうございます。なんとか元気にやっております。

――きょうのお話は?

稲垣:
きょうは、このコーナーでも何度かお話をさせていただいた、地元の盆踊りのお話をさせていただこうかと思います。

――今お住まいの都内での盆踊りですね。

稲垣:
コロナでお祭りができなかったのですが、3年ぶりに3日間フル開催されました。私的には非常に楽しく思い出に残る盆踊りでした。

ここに至るまで非常に長いお話がありまして、会社を辞めて今住んでいるところに引っ越して、銭湯の常連さんのお友達に「地元の盆踊りがすごいよ」という話を聞いて、見に行ったんですね。そしたら本当にすごくて、盛大な盆踊りでした。近所のおばさん・おじさんが、その会場に行くと、急にチャカチャカってみんな踊るんですよ。当たり前に踊っていて、「これは私もぜひ踊るべし」と思いまして、地元の公民館で月に1回、盆踊りの練習会が開かれているということを聞きまして。

――それは冬でも秋でも、ということなんですか?

稲垣:
はい。月に1回お稽古があって、勇気を出して1人で参加をしました。無事に盆踊りデビューを果たしたのですが、すぐコロナが来まして、1回踊っただけでずっと練習もないし、お祭りもない状態が続きました。気がつけば踊りを教えてくださる大先輩というか、メインの方々が皆さん90歳でして、かなりのお年ですし、皆さんコロナでずっと家にこもっていたので、元気がなくなっている方もいたりして、このままほっといたら練習会も自然になくなってしまうのではないかと思いまして、新参者ながら「練習会を再開しませんか?」と進言しました。言った限りは何かやらなきゃいけないので、会場を予約するくらいのことですけど、ちょっとお世話も多少させていただいて、練習会が再開し、若い友達にも声をかけたら、結構たくさん来てくれました。そんな練習会をことし初めから半年やりまして、満を持して、先日本番を迎えました。

――盆踊りが開かれたわけですね。

稲垣:
やっと開かれまして。これが大変盛り上がって。いつも盛り上がっているのですが、大体は、踊れる人が踊って、そうじゃない人は周りで見物という感じなのですが、ことしは初めての人も果敢に踊りの輪に入って、みんな踊ったんですよ。

――あら。どうしたんでしょう?

稲垣:
踊りの輪が二重、三重、四重、五重になるくらいに、みんな踊ってすごかったんです。

――では、何十人、何百人という感じですか?

稲垣:
いや、もっとだったと思いますね。本当にすごくて。1曲終わるたびに互いをたたえ合って拍手。見たことない光景。我ら練習組もそろいの浴衣を着て、踊れない人もいるので見本になるように一生懸命踊りまして、ささかやかですけど、盛り上がりに貢献しました。

若手が非常に頑張りまして、本番が終わったあとに、みんなでご飯を食べたのですが、「この振り付けはどうだこうだ」という確認から始まって、結局、みんな立って踊り始めて。打ち上げの席でもみんな夢中で踊ってたくらい楽しかったんですよね。

――例えば有名な盆踊りといえば、郡上八幡だとかいろいろありますけど、都内でそんなに確立している盆踊りってあるんですね。

稲垣:
確立しているかわかりませんが、大体6曲くらい決まった踊りがありまして、それをみんなで毎年踊るという単純なことなんですけど。

――例えばどういう音楽が?

稲垣:
「東京音頭」ですね。これは欠かせない。あと「炭坑節」ですね。これは全国どこでもありますよね。あとは、「ソーラン節」とか、福島県の「相馬盆唄 (そうまぼんうた)」など、私の地元は伝統的な踊りを6曲踊りますね。

――ということは、6曲分の振り付けがあるわけですよね。

稲垣:
これが月1回のお稽古では、全然覚えられなくて。若手はYouTubeを見て、「家で自主練した」と言っていましたね。

この盆踊り、何でこんな楽しいのか考えてみました。私は3つ要素があると思っていて、1つは踊りそのものがすばらしいですよね。大体決まった振り付け4パターンを繰り返し踊るものでして、調子に乗ってくると何も考えなくても体が動く。ちょっとトランス状態というか、瞑想状態みたいな気持ちよさがあります。輪になって延々続く感じが、独特の高揚感があるすばらしい踊りだというのがあります。

もうひとつは、労働を踊りにしているのが多いんですね。例えば「炭坑節」なら、石炭を掘って担いで運ぶとか、「ソーラン節」だったら船をこいで魚を捕ってみたいな……。そういう労働って、都会にいるとやったことないですよね。腰を入れて船をこぐとか、踊りなので疑似的ですけど、「昔の人はこうやってたんだな」と、タイムマシンに乗ったような不思議な感覚があって、それもすごく楽しいですね。

――それぞれの動作に意味が。子どものときはそこまで考えてなかったけれど。

稲垣:
意味がわかると振りも覚えやすいです。先輩もよく「掘って掘って担いで掘って~」と、言葉で教えてくださるので、覚えやすいですね。

もうひとつ「これはすごいな」と思うのが、誰でも入れるオープンな踊りであること。本格的な踊りは、見る人とやる人でわかれがちだと思いますが、単純さによって誰でも踊りの場に入ることを拒まれないので、本当に平等なんですね。例えば、お金持ちもそうじゃない人も、人生が上向きの人もイマイチな人も、若い人もお年寄りも関係なくみんな踊ると。踊っても別にお金をもらえるわけではないけど、一生懸命踊るのが自由な感じがして。

――誰かに強制されて踊ってるわけでもないし。

稲垣:
しかも褒められたりするわけでもなく、ただただ踊る平等さがあって。これが気持ちいいというのがありますね。

――確かにそうですね。

稲垣:
盆踊りを絶賛したものの、盆踊りのこと実はよく知らなくて、ネットで調べました。お盆の踊りですよね。ご先祖様の霊をお迎えするのがお盆なのですが、霊を踊っておもてなしするそうです。それで無事にあの世にお帰りいただくということらしいです。もともと念仏的な踊りから来ているらしいですね。改めて考えると、時空を超えた大変壮大なことですよね。あの世までつながっているという。

そう考えると、この壮大さの前では、細かいことはどうでもいいなと思うんですね。だから老若男女関係なく一緒に楽しめる。今の世の中は進歩が速いから、お年寄りと若い人となかなか話も合わないし、心を合わせて一緒にやることもないですが、その中でも貴重なすばらしい行事だなと改めて思いました。

――確かにお祭りって子どものときから参加して、今ではお年寄りになっている方々のほうが一日の長があって、新参の住民はいろいろ教わって、長幼の序がありますよね。

稲垣:
そうなんです。なかなかないじゃないですか? お年寄りでスマホを使えないと若い子にイライラされてとか、レジで会計しようと思ったら自動レジになっていてまごまごするとか、年取ると敬われないことが多くなってきているじゃないですか?

――そうですね。一緒に何かをやるって難しいですね。

稲垣:
その中でも、知らない人の中の輪に入って踊って楽しめる、すてきな行事だなと思います。

――踊りを教えてくださっている、90代になられたお姉さま方は、久しぶりに盆踊りが開かれたことに関して喜んでいらっしゃる?

稲垣:
そうですね。それこそ練習会で、若い人が参加したら一生懸命教えてくださって。以前練習会に参加したときは、私1人だったので、ほぼほっとかれたんですけど(笑)、「これどうするんですか?」とか、若い子が聞いたら、本当に皆さん熱心に教えてくださって。コロナの3年間で「足が悪くなったわ」という方もいますが、踊れる範囲で来てくださって。見守ってくださったのも含めて、踊りの火を引き継いで受け取った感じがありました。

――地方で伝統の祭りがいろんな形でありますけれど、東京でも大勢が参加するのはいいですね。

稲垣:
都会で近所づきあいがなくても、こういうところで踊ると、ちょっと顔見知りが増えます。皆さんも近所で盆踊りがやっていたら、踊れなくても見に行くだけでもいいですし、「東京音頭」は東京では必ず踊ります。地方に行っても踊ることもあるので、1個覚えると、踊りの輪に入る勇気もわきますので。

――「東京音頭」の振り付けは共通なんですか?

稲垣:
えーっと、たぶん共通です(笑)。意外と細かく違っていたりするんですけどね。

――わかります。

稲垣:
そこはちょっと戸惑いますが、郷に入れば郷に従えで。1日で踊れるようになるので、失敗しても一生懸命踊っていたら大丈夫です。

――輪の外で見ているわけじゃなくて。今週末、私の家の近所でも盆踊りあるんですよ。子どもにくっついてお菓子をもらいに行くだけじゃなくて、勇気を出して踊っちゃおうかと(笑)。

稲垣:
失敗しても誰も嫌がらないし、まごまごしていても教えてくれますから。「下がって下がって~」とか、かけ声入れてくれるので大丈夫です。

――また稲垣さんから、勇気をいただきました。

稲垣:
逆に私が、渡邊さんの踊りを見に行きたいくらい。

――浴衣着る楽しみもあって。

稲垣:
浴衣を着ても楽しいですし、浴衣を着たら踊りやすいです。

――浴衣のときも、トレードマークの髪型は同じですか?

稲垣:
そうなんです。1度暑くて髪を縛ったら苦情が出まして。アフロに戻しました(笑)。

――ありがとうございました。またこういったお話で、勇気と元気を与えてくださいませ。


【放送】
2023/08/03 「ラジオ深夜便」

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