アフロ記者 家事を人生の敵ではなく、味方につける方法

23/08/20まで

ラジオ深夜便

放送日:2023/07/13

#アフロ記者#ライフスタイル#家事アイデア

暮らしを豊かにする達人たちにお話を伺う「ライフスタイル 令和つれづれ草」。アフロヘアーがトレードマークの元新聞記者・稲垣えみ子さん。前回の放送で「家事さえできれば、お金に頼らずとも自分で自分を幸せにできる」と語った稲垣さんでしたが、「そもそも家事が大変」と感じる人も多いのでは? きょうはそんな方に向けて、家事をラクにする方法について教えていただきます。(聞き手・村上里和アンカー)

【出演者】
稲垣:稲垣えみ子さん(元新聞記者)

ワンパターンな生活で家事をラクにする

――毎年のように聞いていますが、電気を極力使わない生活をされていて、このところかなり暑い日が続いていたので、「稲垣さん、お元気かな?」と思っていました。

稲垣:
もうすっかり夏が得意になっているので。この前も別の方に同じ質問をされて、「どうやっているのですか?」って言われました。エアコンは使ってないのですが、家の中でも涼しい風が吹く場所がいくつかあって、家にいるときはずっとそこにいるのですが、その話をしたら、「うちの猫と同じですね」って言われて。猫は涼しい場所を知っていて、そこに移動するらしいです。

――居心地のいい場所をわかっているんですね。

稲垣:
私も猫レベルの野生の勘が戻ってきたんだなと思って、自分を誇らしく思います。

――生き物としての機能があるという。声も元気そうで。

稲垣:
いつもガラガラ声なので、ときどき指摘されるのですが、夜眠いのもあってよりガラガラ声になっています。

――ふだんは寝ていらっしゃる時間帯で。

稲垣:
そうですね。

――この放送のときは習慣を崩して頑張っていただいているのですね……。

稲垣:
頑張って起きています(笑)。

――ありがとうございます! きょうはどんなお話でしょうか?

稲垣:
『家事か地獄か』という新刊を出して、前回はそのエッセンスをお話ししたんですけど。

――私、読みました。おもしろかったです! たくさん付箋をつけてしまいました。

稲垣:
ありがとうございます。そう言っていただけると、本当にほっとするのですが、前回の放送で「家事さえできれば、お金に頼らずとも自分で自分を幸せにできる」というお話をしたのですが、放送が終わったあとに「ちゃんと伝わったかな?」と、だんだん不安になってきて。恐らく「深夜便」を聴いている世代で、特に女性の方は、家事を一家の主婦としてや、働きながらでも一手に引き受けてきた方が多いのかなと思いました。「家事か地獄か」ではなく「家事が地獄なんだよ」という方が多いのかなと思って、「家事さえできれば安心・幸せ」と言われても、「いやいや、安心どころか家事が問題なんだ」という方が多いかなと。ちゃんと意図がお伝えしきれなかったのではと気になりまして、本日リベンジで、家事を人生の敵ではなく、味方につける方法を改めてお話ししようかなと思います。

家事が地獄になってしまうとしたら、その理由は100%明快でして、家事が大変すぎるからなんですね。国の統計によると、「日本の一般的な家庭の家事時間は3時間を超える」ようで、毎日3時間以上家事にかかるとしたら、専業主婦だとしても大変ですし、働いている方が帰ってきて、3時間以上も家事をしなきゃいけないのは大変ですよね。

――赤ちゃんがいる方も「そんな時間ない!」って思いますよね。

稲垣:
これは家事だけの時間なので、育児の時間はまた別なんですよね。そうなると地獄と言ってもいい大変さだと思います。

私、育児はやったことないので育児に関してはわからないのですが、家事に関してだけ申し上げますと、発想を変えれば決して大変じゃないのです。私は自分に関してだけ家事をしますが、掃除10分、洗濯10分、料理10分、これが私の家事の実態です。

――すごく短いですよね。

稲垣:
食事を2回作るとしても合計で1日40分、3回作る人は1日50分なので、そんなに大変じゃないんですね。この時間で衣食住が非常に充実して整うとすれば「家事が幸せのもと」と言ってもよいと思います。

問題はそのコツですよね。「どうしてラクに家事ができるのか?」ということなのですが、私が発見したコツは、「毎日の生活を限りなくワンパターンにする」ということなんです。判で押したような生活。具体的に自分の生活を言いますと、日の出とともに起床。今だと4時すぎに起床しまして、まずお湯を1杯飲みます。次にめい想をします。これ、小1時間めい想します。

――小1時間めい想してるんですか!

稲垣:
今は早起きで4時すぎに起きるので、ゆったりめい想ができるのですが、そのあとに排せつをします。そのあとに先ほど言った10分の洗濯と10分の掃除をします。それからヨガをします。7時に家を出まして、ピアノの練習場がありますので、7時~9時までピアノの練習します。9時になったらいつも行くカフェに移動しまして、3時間仕事をします。家に帰りまして、10分で炊事をしてお昼ご飯を食べます。そして軽く昼寝をします。だいたい30分。至福の時間です。そのあとは別のカフェに行きまして、3時間仕事します。5時になったら銭湯に行って帰ってきて、6時ぐらいに夕食を食べます。あとはゆっくりして10時ぐらい寝る。毎日この生活なんですね。

時間もワンパターンですけど、中身もワンパターンでして、食べるものはほぼ同じ。ご飯・みそ汁・漬物です。着るものも毎日ほぼ同じです。行く場所もほぼ同じです。どっちかと言うと刑務所のような生活ですね。こうなると暮らしも空間も時間もスリムになりまして、人生そのものがすっきりと片づいた状態になります。オプションがないんですね。「きょうは誰々と食事に行く」とか、そういうフェスティバル的なものは一切なく、土日も絶えずこの暮らしなんです。こうなると部屋はすっきり片づかざる得ない状態ですし、毎日同じものを食べているので料理もラクですし、服も大したものを着ていないので洗濯もラクという。

――洗濯は手洗いされているんですもんね。

稲垣:
洗濯機を使うまでもないですね。下着と銭湯行くときのタオル1枚ぐらいなので。夏はTシャツ洗うぐらいですかね。こうなると本当に家事はラクにならざるを得ないですよね。

――稲垣さんが短い時間で毎日ラクできるのは、さまざまな電化製品を手放したのがきっかけですか?

稲垣:
きっかけはそうなんですけど、電化製品を使わずに家事をするとなると、そんな大変な家事はできないじゃないですか? その結果、このようなスリムな生活になりました。派手な生活はできないので、ますます家事がラクになって今に至るんです。

「ここまで地味な生活をしていたら、家事もラクだよね」と、想像していただけるかなと思いますが、問題はここから先です。「そんな地味な生活、何がおもしろいのか?」と。「そんな人生に何の意味があるのか?」と。「人生を楽しむために、幸せになりたくて生まれてきたのに、そんな地味な生活をしたくないよ」って、だいたい皆さん、そう思うのかなと思います。

――先ほど「刑務所」とおっしゃいましたけど、刑務所がどんな感じかくわしくわかりませんが、「修行僧」みたいな。

稲垣:
そうですね。修行僧的な生活に近いと思います。
「そんなのつまんないじゃないの?」って、私も若いころはずっとそう思ってきました。実際、生活してみた感想を言うと、ワンパターンの生活が今や一番の快楽と言ってもいい状態なんですね。生きているといいこともあれば悪いこともあって、ワンパターン生活を志していても、ときどき人と会食しなきゃいけなかったり、仕事で出張しなきゃいけなかったりして、疲れちゃったり、体調がイマイチなときってやっぱりあるんですよね。そのときにいつもの地味なご飯を食べると、体調も整って落ち着くんですよね。だから忙しくなると「いつものご飯が食べたい」ってなるんですよ。

――「戻りたい」って思うのですね。

稲垣:
地味なご飯を食べることで、自分が落ち着いて、いわゆる整う状態ですよね。整うことがどれだけ幸せか、という感じになってくるんですよね。

――わかります。20代や30代の人にはまだわからない。

稲垣:
体が丈夫だから。暴飲暴食しても全然大丈夫なんですが、今はそれがつらい。

――体もちょっと無理したらあちこち痛くなってきたり……シンプルな生活の大切さを感じますね。

稲垣:
戻ることが快楽で、ワンパターンの暮らしに戻ることが一番体調もよくて、一番幸せなんですね。

――戻れる場所があることが大事なのかもしれないです。

稲垣:
ワンパターン生活は、「自分はこれでいいんだ」と確認する行為なんですね。

若いころ一生懸命お金を稼いで、いろんなものを手に入れて幸せになろうとしてきたんですけど、その結果、「手に入ったものは何だったかな?」と思い返すと、落ち着かない生活、ものにあふれまくって絶対に片づかない部屋。それでいてどこまでも満たされない気持ちだったなと。あれを続けていたら本当に地獄だったなって今となっては思います。ワンパターン生活で家事がラクにできて、気持ちが満たされているのは天国じゃないかなと。

……ということを、この前の放送のリベンジとして説明しました。どうですか? 納得できますかね?

――私はすごい実感として感じます。シンプルなワンパターンの生活をきちっとやっていくためには、自分でできる家事なのかは大事ですよね。

稲垣:
自分でやりきれるか。昔はやりきれなかったですよ。大変すぎて。

――「誰かやってくれないかな」と思っていました(笑)。

稲垣:
家事能力がないのではなく、自分の生活が散らかりすぎて。あれを整えることは無理でしたね。

――いろんな料理を作らないといけないと思うだけでプレッシャーだったりとか……。

稲垣:
「いろんなものがほしい」「いろんなことがやりたい」がありすぎて。

――それを手放して手放して、シンプルにして残ったのが、本当に短い時間の家事で自分をしっかり生きていくことができる。

稲垣:
「きょうもちゃんと整えることができましたね」というのが、一番の幸せだったなって。

――『家事か地獄か』を読んで、こういう生活ができたら最後まで生きられると思いました。

稲垣:
体が弱ってきたら弱ってきたぶんだけ暮らしをスリムにして、ワンパターンの度合いをさらに強めていけばいいと思っております。

――それを、いち早く高齢者になる前に、稲垣さんは知ってしまったという(笑)。

稲垣:
そうですね。もうすぐ私も還暦なので、本当に安心感があります。「こうやっていけばいいんだな」という。

――安心感、大事ですよね。

稲垣:
老後不安が今はないので、ありがたいなと思います。

――そういう意味の『家事か地獄か』というのが、リスナーの皆さんにも。

稲垣:
納得していただけたかなと。

――ありがとうございました。次回のお話も楽しみにしています。


【放送】
2023/07/13 「ラジオ深夜便」

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