【みんなの子育て☆深夜便】子育てリアルトーク「世界の子育て」

24/03/02まで

ラジオ深夜便

放送日:2024/01/25・2024/01/26

#子育て#家族#コミュニケーション#お悩み#ワールド

1月のテーマは、「世界の子育て」。 世界の子育て事情に耳を傾け、意外な共通点やギャップに注目することで、これからの子育てに生かせるヒントを探ります。(聞き手・村上里和アンカー)
*放送の一部をこちらでお読みいただけます。全体は「聴き逃し」からどうぞ!

【出演者】
小林:小林エリカさん(作家・漫画家)
汐見:汐見稔幸さん(子育て支援の専門家)

おやつは、にんじんやきゅうりのスティック

――きょうの子育てリアルトークは「世界の子育て」をテーマに、作家で漫画家の小林エリカさん、そして子育て支援の専門家、汐見稔幸さんをゲストにお送りしています。

さて、ユニセフが発表する「子どもの幸福度ランキング」で、常に上位にくるデンマークの子育て事情について、デンマークで9歳と11歳の子どもを育てている、デンマーク文化研究家の針貝有佳(はりかい・ゆか)さんに伺ったお話をご紹介します。日本の常識、習慣と全く違って驚いたことがいろいろあったようです。


針貝:
デンマークでは、赤ちゃんを外でお昼寝させる人が多いですね。新鮮な空気を吸うと良いとか。で、外で昼寝をするのをマイナス10℃までOKみたいな…(笑)。しかも、わりとすぐ「もう大丈夫よ、マイナス10℃まではOKよ」っていうことで、病院から退院してすぐ「本当に大丈夫かな…」と思いながら、ベビーカーを押して、散歩した記憶があります。

――そうなんですね。

針貝:
困ったのが、デンマークの子育て本に書いてあることと、日本の子育て本に書いてあることが違うんですよね。例えば離乳食から、デンマークでは、「じゃがいもとにんじんで、バター入れていいんだよ」 「え、バター? バター入れるんですか? 胃にもたれませんか?」みたいな(笑)。ちょっとどっちを信じていいんだろう? みたいなのは、けっこうありましたね。

――で、どうしたんですか?

針貝:
それで結局バター入れました(笑)。

――郷に入っては郷に従えですね。大丈夫でした?

針貝:
大丈夫でした。

――おもしろいですね。なんかちょっとギャップを感じたところ、もう1つぐらい教えてください。

針貝:
あとは、おやつ。
保育園とか幼稚園で出されるおやつが、きゅうりとかにんじんのスティックなんですよね。子どもたちにしてみれば、それはスナックなんですよね。生の野菜をそのままポリポリポリポリかじって食べているっていう。それがこうおやつとして出てくるのがおもしろいなと思っていました。ちょっと脱線するんですけれど、大人になっても、私、デンマーク人の夫に「ちょっと、スナック買ってきて!」って言ったんですよ。そしたら、にんじん買ってきてびっくりしました(笑)。


――というデンマークの針貝さんのお話ですが、「スナック、買ってきて!」って言ったら、にんじんが出てきたっていうのが笑ってしまいましたが、小林さん、どんなところが気になりましたか?

小林:
そうですよね。生のにんじんとか、きゅうりとか、それ、スナックでいいよねってちょっと思いました。やっぱり私、“(母は)料理をしたり、お弁当を作らなきゃいけない。それが愛情だ”的な呪いにかかっていたときがあって…。どんどんつらくなるほど、頑張りすぎちゃったりして。でも台湾の友達に「え、お弁当を早く起きて作っているなんて、なんで? 買えばいいじゃん!」って言われて「あ、だよねー」って、そのとき初めて我に返ったっていうか。

何かそこだけが愛情じゃないのに、そこにすごく頑張らなきゃみたいな、自分も無理して、そのせいで子どもに当たっちゃったりする…みたいなことがあったので、もっと気軽に「野菜スティックおいしいね」とか「買った屋台のごはん、最高だね」とか、外食したりとか、そういうふうにできるといいんだろうなって、ちょっと他の人たちの視点をもらって、気付いたところがありました。

――汐見さん、いかがですか?

汐見:
デンマークとか、スウェーデン、フィンランド。みなそうなんですけども、子どもたちを昼間、お昼寝させるときは、だいたい外なんですね。去年の9月にスウェーデンに行って来たんですけれど、保育園でも、みんなベビーカーに乗せてお昼寝させている。「なぜか?」って聞いたら、基本的にね、お日様が弱いんですよ。だから日光にたくさん当たらないと“くる病”になっていくわけですよ。だから可能な限り、日光に当てていく。

――はい、健康のため…。

汐見:
そう、「健康のために、外でお昼寝させている」と言っていましたね。でも寒さにすごく強い。(寒さに対応する)練習をしているような気がしますけどね。
あとね、おやつはね、野菜をポリポリって、実は僕の子どものころは、だいたいそうですよね。ふかし芋かサトウキビ。

小林:
へぇー。

汐見:
こうやって、ガリガリ…。だいたいそれぐらいですよね。それをずっと維持しているっていうのは、すごくおもしろい文化だなと思いましたね。日本も参考にしていいような気がする。「本当のおいしい野菜って、こういうものなんだよ」っていうようなね。にんじんなんかもね、上手に作ったら、生で食べた方がおいしいです。
フランス料理なんかで一番いいサラダは、こういうポリポリなんですよ。

――そうですか!

汐見:
そうです。一番上等なのは古い野菜じゃなくて、採れたてだっていうのが売りなんですよね。

――野菜ポリポリで、それでおやつでいいなら、本当に切るだけでいいから助かりますね!

最初のスタートから一緒に始めることで、パパも子育ての主役になれる

――針貝さんにデンマークの子育ての良いところ、出産事情から伺いました。


針貝:
まず、入院がすごく短いですね。
基本的に何もなければ、第二子以降は日帰りです。それは本当にびっくりしまして、出産して、その後、数時間後には皆さん車を運転されていたりとか、自宅に普通に帰って、家事をしていたりとか。やっぱりまだ第一子がまだこうしっかり手を離れていないこともあって、1人目の子がさみしくならないようにとか、そういうこともケア、考えて、そのような対策になっています。

――そのあとは支援的なものっていうのは、何かあったりするんですか?

針貝:
それがね、おもしろくて、自宅に戻ってくると、今度は看護師さんが自宅を訪問する形になります。全体を見て体重を量ってとか、こう基本的なところをチェックするという感じですね。結構お任せというか…。厳しくいろいろ指導したりとか、そういうことはないですね。

――そうすると、日本のお母さんたちだと「私が頑張らなきゃー」ってなっちゃいそうな気もするんですけれど。

針貝:
それがですね。すごくデンマークの良いところで、基本的に出産は、旦那さんの立ち合いなんですね。で、生まれてすぐ、旦那さんもおむつですとか、いろんなケアをひととおり一緒に学んで、最初のスタートから一緒に育てていくっていう意識があるので、お母さんが1人にならないんですよね。本当に親の出発点として、子育ては、母親がするものって思わせない。子育てっていうのは、夫婦共同作業なんだっていうことを、最初の段階で感じる上でとっても大事なことだと思いますね。

――実際、針貝さんはご主人と一緒にいちからスタートして、どうでしたか?

針貝:
もう、すごいよかったです(笑)。子育てを自分でしなきゃ、一人でしなきゃみたいな意識が、最初から全くなくすごく気が楽でしたね。

――共働きが多い国ですよね?

針貝:
そうなんです。デンマークは、男性も女性も基本フルタイムで働いている。子育ても仕事も平等にしていくっていう意識があります。基本的に約1年間の育児休暇をもらえて、それを夫婦で分けられるんですよね。一番のスタートは、一緒なんですよ。男性も2週間の育休を取って、一緒に最初に子育てを始めて、それからまた男性が仕事に復帰して、女性が子育てをして、だいたい9か月とか10か月ぐらい、その辺になると男性が育休を取って、女性が働き始めたりとか、そういった家庭もあります。

――1年間から取れるよっていう(育休)制度をどのくらいの人が活用されるんですか?

針貝:
基本的に男性は、まあ、何かしらの形で育休は取っていますね。最初の2週間は、ほぼ100%じゃないかなと思います。基本的に休んで、家庭で子育てをする。もしそれをしていない男性がいると「ん? 大丈夫かな?」っていう感じだと思いますね。パパも子育てにも参加するっていうことじゃなくて、参加って、ちょっとまだなんかこう自分が主役じゃないというか、サポートみたいなイメージがありますけど、参加じゃなくて、がっつりするっていうのが、もう社会のみんなの意識としてありますね。デンマークのパパは、結構ほんとにがっつりやっています。


――はい。ということで、パパも子育ての主役だと。最初の2週間は親としての最初の一歩だから一緒に過ごす。お父さんもお母さんも赤ちゃんと一緒に過ごすというスタイルなんですね。ここ、いいですね。

小林:
理想的ですね。

――最初って大事だと思いませんか?

小林:
本当に、最初がとっても大事だと思います。

――すごく実感がこもっていますね!

小林:
こもっています(笑)。

――汐見さん、どうでしょう?

汐見:
いや、あの僕もね、3人子どもがいて、3人目から当たり前のように立ち合いとか、おむつの替えとか何とかやってから、育児がね、自分の問題みたいにやっぱりだんだんなってきた。男はやっぱりやらないと、自分が親だということの実感が、やっぱり薄くなりますよね。
でもこれ、そういうことで積み重ねてきているから、父親も当たり前のように育児をするんだっていうことも文化になっている感じがして。日本だって、ここまでいくと思いますけどね。先にデンマークが走っているなって感じがしましたね。

――そうですね、早く追いつきたいって思っているお父さん、お母さん、多いんじゃないでしょうかね。

子どもの幸福度をあげるためには

――国連が発表する「世界幸福度ランキング」、ユニセフが発表する「子どもの幸福度ランキング」で、常に上位に入ってくるデンマーク。その理由、背景に何があるのかを聞きました。


針貝:
子どもがすごく大切にされているなっていうことは感じますね。守られていて、穏やかに成長を見届けられている、大人から。そういう感じはしますね。すごくね、伸び伸びと育っていると思います。遊ぶっていうことがとても大事なことなんだと。遊ぶ中で、自分を発見していくというか、自分が自分で成長していくというか、そういうプロセスをすごく大切にしています。

保育園の先生にインタビューしたことがあって、その先生がおっしゃっていてすごく印象的だったことが、「一番大切なのは、その子がその子でいられること」 「その子がその子でいて、安心を感じていること。それがとても大事なことで、その安心感がなければ、そこの上に何を詰め込んでも倒れてしまう」ということをおっしゃっていたんですよね。

――おうちでもやっぱりそれを意識されているっていう方が多いんでしょうか?

針貝:
そうですね。デンマークですごく感じるのが、どなっているお母さんとかあんまり見ないんですよね。何かこう対等に話しているというか、対話している。その辺がすごく違うのかなって感じます。

――どうしたら、対等に対話できるんですかね?

針貝:
いやー、それはちょっと、私もね、観察しているんですけど(笑)。なかなかね、やっぱり難しいところもあって…。
待つのが大事っていうんですよね。「こうしなさい、ああしなさい、早くしなさい」じゃなくて…(笑)。その子のペース、その成長を眺めながら、やるのを待つ。その待つ時間っていうのね、大事にしているような気がします。デンマークの方は。

親は子どもに指示するというよりは、親は子どものサポートをする。成長をサポートするっていう、そのあり方ですかね。その親子間みたいなものもすごく違うなと思って、ちっちゃいときから、子どもの意見をちゃんと聞いていく。親が全部決めるんじゃなくて「どう思う?」って言うことは、聞いて話しているなっていうのは感じます。

――そうやって育つことで、自分っていうところをしっかり持ちながら、やっぱり大きくなれるっていう…。

針貝:
そうですね。だから、すごくデンマークの子って、自分のことをよく知っている。ただ常にその大人からも「あなたは、どう思うの?」っていうことを聞かれているから「自分はこう思う」って言うことを自然に身につけられる。自然に自分で考えて意見を言えるように育っているような気がしますね。

――日本って主体性のある保育をっていわれているんですけれど…。

針貝:
例えば、デンマークだと、子どもがまだ小学校入る前でも小刀を使っていい。うーん、何か、危ない物を避けないで「危ないものは、使い方だよ」っていうことを教えて、「こういうふうに使えばいいんだよ」っていうことで、使い方を身につけさせる、「それが、学べるものなんだよ」みたいなことは、教えている感じがしますね。そこをやっぱり大人が子どもを信頼している。「何かあったら、危ないから避けよう」じゃなくて、「子どもは学ぶ力を持っているんだ、できる力を持っているんだ」っていうことを信頼して、やらせている。


――デンマーク文化研究家の針貝由佳さんのお話でした。小林さんどうですか?

小林:
あの、冒頭に私が相談した悩みの答えが、まさにここにありました!

――そうですね。8歳の娘さんと何だかこう親子のステージが変わってきた気がすると…。

小林:
ネクストステージが来て。私はついつい、やっぱり子どものことを赤ちゃん扱いしてしまったりして、「自転車に乗りたい」って言っても「危ない!」みたいに言ってしまったり、先回りして「宿題をやりなさい」とか、今ね、「待つ」って言われたことも、ついつい口走ってしまって、もっと心では「子どものことを信頼して、背中を押せるような親になりたい」とか、「もっと信頼したい」って思っているんですけど、どうしたら、それができるんだろうってすごく思っています。どうしたらいいんでしょうか?

――汐見さん!

汐見:
あのね。デンマークのこととか別の本でも読んだことがあるんですけどね。原理はすごく簡単なんですよね。子育ての目標が日本と違うんです。目標は何かっていうと、“自分の意見を言えるようにすること”それが目標なんです。なぜかっていったら、市民社会っていうのは民主主義社会っていうこと。それは自分がこう思っているってことをみんなが言わなければ、議論にならない。

だから、デンマークでは、小学校でも「先生が言っていることを覚えなさい」ということは、ほとんどの授業でないそうです。そうじゃなくて、「花はどうしてきれいな色をしているのか、みんなで調べよう」「あなたはどう思う? あなたはどう思う?」って言って、「何が根拠でそういうの?」とか、意見が違ったら、どうやったらその意見が一致するかということで、「もうちょっと議論しましょう」ってそういうふうにすることが市民としての能力なんです。

だから子育ては、“自分の意見をしっかり言えるようにする”っていうことが、一番大事な目標になっているわけですよね。だから、赤ちゃんに対しても「あなたはどう思う?」ってみんなが聞いているってよくいいますよね。

――へー。

汐見:
それはもう、根気強く待ってあげるわけ。自分の意見が言えるまで。それがママの意見と違ったら、「でも、ママはこう思うんだけどね、それはだめなの?」ってまた聞く。そうやってとにかく「自分の意見を言ってごらん」「自分の意見を言ってごらん」って、できたら一致するまでは粘り強く(待って意見を促す)、言ったことを評価するっていうか。

小林:
すごくいいですよね。そうやって、やっぱり自分の意見を言えるようになれば、それがこう…市民であり、それが政治を動かして、国がより良くなるっていう。すごく好循環!

汐見:
そうです! もともと民主主義ってそういうものですよね。

小林:
ですよね。

汐見:
だからそういうために、学校に行ってもらっているんだっていうことなんです。

小林:
それですよね。やっぱり、言わなくても分かってくれるんじゃないかとか、当たり前のように政治とか国とかのシステムがあるように、つい、私とかは錯覚しちゃうことがあるんですけど、やっぱりきちんと「こうしてほしい」とちゃんと伝えないと、政治とか国って変わっていかないのかもって、ようやく初めて気付いて。それを実現していくためには、やっぱり私自身もだし、子どもたちも一人一人、ちゃんとそうやって意見を言えるようにならないと、変わらないってことですよね。

汐見:
それをするのが親の務めってなっているわけですよね。

――それが子どもたちの幸福度にもつながっている。

汐見:
そうですよね。自分の意見を言ったときに、ちゃんと受け止めてくれる、とにかく待ってくれる。「あなたはあなたでいいんだよ」っていうもう1つの価値観があって、「みんなが同じであるのはおかしい」っていうね。「今の自分がこれで、こんなことやっている、あんなことやっている、これが大好きだ」っていうのを親が受け止めてくれて「それでいい」って言ってくれている。自分の意見を言ったらちゃんと聞いてくれるし、それで評価してくれる。これが精神的な幸福度ってものに僕はうまくつながっているんだと思っています。

――ユニセフの調査で、精神的幸福度を見ると、日本は38か国中37位とほぼ最下位ですが、これを上げていく。子どもたちが幸福だと感じるためのヒントがね、すごくお話の中にあったと思います。


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左:工藤直子さん
右:新沢としひこさん

次回の放送は2月22日(木)です。
テーマは「子育て事件簿 第8弾」。
子どもにまつわる思いがけない出来事、かわいいエピソードや懐かしい思い出。
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皆さんからの声をスタジオで受け止めてくださるのは、詩人で児童文学作家の工藤直子さんと、シンガーソングライターの新沢としひこさんです。

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2024/01/25・2024/01/26 「ラジオ深夜便」

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