アフロ記者 慣れてない町でも安心! 失敗しない飲食店選びのコツ

23/04/11まで

ラジオ深夜便

放送日:2023/03/02

#アフロ記者#ライフスタイル#たべもの

暮らしを豊かにする達人たちに話を伺う「ライフスタイル 令和つれづれ草」。アフロヘアーがトレードマークの元新聞記者・稲垣えみ子さん。今回は「外食で失敗しないためのお店選び」について、教えていただきました。(聞き手・渡邊あゆみアンカー)

【出演者】
稲垣:稲垣えみ子さん(元新聞記者)

立ち食いそば、町中華、古い大衆居酒屋を選ぶべし

――きょうのお話は?

稲垣: きょうは「私の店選び」という。店というのは飲食店のことで、食べ物屋さんの店選びのお話をしようと思います。外食するとき、お店を選ぶのが難しくないですか?

――そうですね。ちょうど、友達と「3週間後ぐらいにご飯を食べよう」なんて話をしましたが、そういうときは、ネットでいろいろ星の数を見たり……とかしますね。

稲垣: いろいろ情報はたくさんあると思うのですが、会社員時代、外食は単純に大好きで、多少おいしければいいぐらいで、同僚とワイワイ行っていたのが主だったので、どこでも楽しくて大好きだったんですけど、会社を辞めて1人になって、基本、家でご飯食べているんですね。たまに出張で、家で食べられないときは、出先で外食する感じになったんですけど、基本1人なんですね。1人だと、むだに食と向き合うので、ちょっとしたことが気になってしまって。

私も、時間があればネットで調べて、見た目がよさそうなお店に入ったりするんですけど、いざ行くと、個人的見解ですが、料理が出てきたら、こけおどしっぽいというか、インスタ映えの時代というのもあって、料理の見た目は凝っているけど、肝心の味は大したことないなとか。「この食事代は、ほとんどインテリア代なのでは?」という、インテリアが、やたら豪華で出てくるものはうーん……とか。あとは、最近の傾向なのか、店員さんがむだにイケメンぞろい。「絶対これ、顔で採用してるよね」みたいな。

――それと味はどうなんでしょうね(笑)。

稲垣: 味は絶対関係ないとうか、そういう細かいツッコミをする、イヤな中年の一人客なんですけど、どうも客としてだまされているような……と言うと言い方がきついですが、何か納得できない。

――そういうときありますね。

稲垣: ところが最近、外し続けた外食の歴史の中で、ようやく「外さない店選びのコツ」が分かったので、そのご報告を。

――ぜひ。

稲垣: 簡単なんですけど、知らない場所に行って店を探すとき、だいたい3種類に絞っておりまして、1つは「立ち食いそば」です。

――じっくり座って、というわけじゃないんですね。

稲垣: どこにでもありますよね。お昼にちょろっと立ち食いで。次が「町中華」。古くてちっちゃい中華料理屋さんも結構ありますよね。もう1つは「古い大衆居酒屋」。これは夜ですけど、だいたい、この3つに絞って選ぶと間違いない。想像していただいたら分かるんですけど、どれも別におしゃれではなく、これといってスペシャルな味がするわけでもないお店ばかりなんですけど、すごくいいんです。

これにはきっかけがありまして、何か月か前に、大阪に行く用事がありまして、お昼ご飯食べたいなと思って、1人だしのんびりできるような、こじゃれたお店がいいなと思って探したんですが、どうもなくて。古い商店街をウロウロしていたら、たまたま立ち食いそば屋さんがありまして、本当に古くて小さくて、言っちゃあれですが、かなりボロっとしたお店なんですけど、結構にぎわっていて。

――しかも立ち食いなんですね。

稲垣: 立ち食いなんです。にぎわっているから悪くないのかなと思って、勇気を出して入りまして、とろろ昆布そばを頼んだんです。すぐに出てきて食べていたら、人気店なので、次々お客が入れ替わりで入ってきて、隣に来たおっちゃんが、「天ぷら、ネギ多め、ご飯」って言ったんです。天ぷらは、天ぷらそばですよね。「ネギ多めって、そんな注文できるのか?」と思って、私ネギ好きだったので、思わず「ネギ多めで」と言おうと思ったんですけど、お店は忙しいので、この店の呼吸を乱してはいけないと思って、我慢したんですけど、ご飯というのが、かやくご飯なんですよ。分かりますか?

――わかりますよ。炊き込みとか。

稲垣: 炊き込みです。かやくご飯の種類って結構あるんですけど、それを「ご飯」って言ったんですよ。明らかに常連さんじゃないですか? かっこいいなと思って。でも、常連さんでも、別におしゃべりするわけでもなく、さっと食べて帰っていかれるんですけど、そのたたずまいがいいんですよね。

おもしろいのが、そういう人がいると、他のお客さんも常連のマネをするというか、パッと注文し、パッと食べて、パッと帰るみたいな、店全体のリズムがある感じになるんですよね。この「あうんの呼吸」というか、客とお店がともに店を作っている感じが、すごいいいなと思って。

――リズムを乱して考え込んでいるお客さんがいないのですね。

稲垣: そうなんです。むだに注文し直す人もいないし。店と客がお互いリスペクト、みたいなものをすごく感じて。

さっき私が言った残念な店は、お客さんに来てほしいから、話題性のあるものとか、写真に撮られて見映えがいいものとか、そういうものを一生懸命出して、できれば高いお金を取りたい……。資本主義社会ですから、そういうものだと思うんですけど、お客さんもそれにだまされてはならないと思って、コスパがいい店を探すみたいな、お互いの腹の探り合いを見てきた中で、このすがすがしさというか……。

――まあ、立ち食いそばですからね(笑)。

稲垣: インスタ映えは全然しないですけど、普通のものを普通に出して、お互い納得できるところで折り合ってきた歴史というか、そういうのを感じて。こういうのは一朝一夕にできないと思うんですよね。店も、それなりの値段でやっていくには、かなりたくさんのお客さんが次々来て、回転率をよくしなきゃダメだし、リズムが長いこと続いてきたから、今でもちっちゃい古いお店をやっているんだなと思ったら、居心地のよさが大変いいなと思ったんですよ。

この前、名古屋へ行ったときも、きしめんが食べたかったんです。迷わず新幹線を降りたその足で、新幹線のホームの立食いきしめん屋さんに行きまして。同じようなリズム感の中で、みんなパッと食べて。新幹線のホームだから、やたらと出てくるのが早いんですよ。お客さんが乗り遅れたらいけないので。前に、名古屋で名物食べようとしてぼられた経験をしたこともあり、立ち食いが一番間違いないなと思って。

町中華や居酒屋は、うちの近所でもよく行くんですけど、間違いのない味がして。客と店のリスペクト感があるという意味では、同じような感じがあって。この3つを探すっていうことで、本当に、外れのない外食生活を送れるようになったと。

――店主さんは黙々とやっている系がお好きですか? お客さんと多少コミュニケーションを図ってくれるような店がお好きですか?

稲垣: どっちでもいいんですけど、もちろん店が暇だったら会話をするし、私も会話するんですけど、一番大事なのはリズムなので、忙しいときは話しかけたりはしないのが大事ですよね。リズムを作っている一員だという、客の認識が大事だなと学びましたね。

――お客さんも店を作り上げているという。

稲垣: それが楽しいんですよね。

――しょっちゅう外食するわけではないから、たまにお金を出していくわけだし、立ち食いそばであっても、おいしかったらうれしいなと思いますよね。

稲垣: 年も年だから、1食1食を満足したいんですよね。

――あと何食、食べられるかって(笑)。

稲垣: 思うじゃないですか? 昔はそれがごちそうだと思ってたんですね。

――いいものを食べることがね。

稲垣: 今は店も客も納得みたいな、ちょうどよさがごちそうだなと思える年になってよかったなと。

――失敗もしたことあるんですか?

稲垣: ごちそうを食べようとして、失敗したのは数知れずなんですけどね。今一番心配なのは、基本こういうのは、「昭和な店」なので、どんどんなくなっていくじゃないですか。

――特にコロナをへて。

稲垣: 私の好きな立ち食いそば屋が、コロナで2店なくなって、居酒屋が1店なくなっていて。うっかりしていると、今は「タッチパネルや携帯のQRコードから注文してください」みたいなお店が結構あるんですよ。

――便利なこともありますけど、おそば屋さんは時間をかけて作ることはないと思うので、例えば家からでも注文しておくのもあるじゃないですか。でもちょっとなじまない形態かもしれませんね。

稲垣: 機械に弱いので、タッチパネルだけでも結構おびえるんですよね。

――さっき言っていた、かやくご飯のことを「ご飯」と言うとかやくご飯が出てくるのは、タッチパネルじゃできないですよね。

稲垣: そうなんですよ。だから、そういう店があるうちに行っておこうと思って。

――町中華や居酒屋は、いわゆるチェーン(店)ではないわけですね?

稲垣: チェーン(店)だと、タッチパネルやQRコードなんですよ。うっかり、そういう店に行ってちゃんと注文できなくて、「携帯持っていない」って、うそついたことありますからね(笑)。

――たしかに、そういうとこでモタモタしていたりすると、「周りからどう見られるかな」とか……イヤですよね。

稲垣: だから「ご飯」と言って、かやくご飯が出るお店に、1日でも長く営業していただきたいですね。

――跡継ぎの問題で、その味が継承されるか、ということもあるでしょうし。

稲垣: それもありますね。少なくともお店に行かないとなくなってしまうので、微力ながら行こうかなって。

――たしかに、お客さんとして行かないと存続できないですから。

稲垣: リズムを作る一員として責任を果たすと、その場のみんなの幸せも確保できるかなって。

――外食に対する貢献度ですね。

稲垣: 価値観は皆さんいろいろですけど、私はそういうところで落ち着いて、自分の好きな店が選べるようになってよかったなと思ってます。

――大人の外食のあり方かもしれないですね。

稲垣: 渡邊さんはどんなの(がお好き)ですか?

――私も、忙しいときは、駅のコンコースにあるおそば屋さんに。この間も、夫と久しぶりに入って。前に1人で入ったことあるんですけど、意外においしくて。変な言い方ですけど、期待していなかっただけに「あら、おいしいのね」って。だから1食1食を大事にしたい思いはありますよね。お金の問題じゃなく。

稲垣: 「期待していなかったけど、おいしかった」は、1つのごちそうですよね。

――満足して「午後から、また頑張るぞ」みたいな。

稲垣: わかります。

――ミニマリストということで、稲垣さんのお話は、毎回参考になるのですが、今回は町中華と居酒屋と立ち食いそば屋。

稲垣: ちょっとボロっとした立ち食いそば屋があったら、ぜひ行ってみてください。

【放送】
2023/03/02 ラジオ深夜便 「ライフスタイル 令和つれづれ草」 稲垣えみ子さん(元新聞記者)

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