【大竹しのぶサイコロ回顧録】井上ひさしさんの言葉

24/01/24まで

大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”

放送日:2024/01/17

#ライフスタイル#舞台

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リスナーからのおたより“喜怒哀楽”に、雪の中、スーパーに買い物に行って、作った料理。「おいしい」とも言わず、首をかしげるだけの夫に“怒”。しのぶさんも「頭にくるよね」と言いつつ、「ちょっと聞いてくれる?」と。友達がご飯を食べに来ていたとき、友達がしのぶさんの息子に『お母さんのごはんで、にっか(二千翔)くん、何が好きなの?』『うん、しゃぶしゃぶかなあ…』って言ったんですよ。「どう? それも嫌でしょう? しゃぶしゃぶって、切るだけでしょ!(怒)」


大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”
R1・ラジオ第1 毎週水曜日 午後9時05分~9時55分

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言葉を伝える仕事をして幸せな2004年

私、大竹しのぶは、去年の秋、デビュー作のドラマ『ボクは女学生』の放送開始から50年を迎え、ただいま芸能生活50周年イヤーに入っています。全然うれしくないですけどね(笑)。

そんな節目の年を迎えたこの機にですね。これまでの活動を振り返りつつ、お世話になったみなさんに感謝を伝えていこうというのがこのコーナー。今、スタジオには、年代別に私の出演作などをまとめたリストとサイコロが2つ用意されています。サイコロは、1つが、私がデビューした1970年代の“197”から2020年代の“202”までの数字が書かれた六面体と、もう1つが、0から9までの数字が書かれた十面体。この2つのサイコロを振って、出た目の年代の作品について振り返っていきます。

前回はですね、2022年、最近ですね。あの、きのうぐらいの感じですね、のお話でした。

【大竹しのぶ サイコロ回顧録】2022年 ほんとに歌が好きなので(2023/11/22放送)

それに続き、今回は何年が出るのでしょうか? 早速サイコロを振りたいと思います。行きますよ~。また、最近だったら嫌だなー、昔がいいなぁ、回顧録だから…。

カラカラカラカラ~♫(サイコロを振る)

えっ? 2004年?!

けっこう、前ですね。20年前? 20年前でもすごいー(笑)。もう、やだー。50年もやってんの? 私。
おかしいでしょ?! もう2004年、すごい昔じゃない! っていったって、もう、ベテランになっちゃっているよ、どうすんの(笑)。2004年、平成16年。はぁ~、47歳。

『見当たり捜査25時』ドラマですね、これはね。『恋の門』、ああ、松尾スズキ監督の映画ですね。舞台『太鼓たたいて笛ふいて』(演出)栗山民也さん。『ママが私に言ったこと』、『喪服の似合うエレクトラ』これも、栗山民也さん。芸術選奨文部科学大臣賞受賞、すごい!

そうですね。もう、話せっていったら、もう、この2004年だけで、3時間ぐらいしゃべれそうなんですけども……(笑)。

そうですね、『太鼓たたいて笛ふいて』井上ひさしさんの作品ですね。『喪服の似合うエレクトラ』もすばらしい作品だし。うーん、『太鼓たたいて笛ふいて』は、林芙美子の生涯を『放浪記』を書いて、人気女流作家になったあとの林芙美子の生涯を、井上ひさしさん流に描いた物語なんですけれども。それは、ことしの秋にもまた、上演します。

本当に、これは、今上演しなければいけないなって思いますね。女流作家で売れて有頂天になった芙美子が、やがて戦争が始まって、その戦争についていって、戦争を美化するような、あおるような文章を書いて、自分のしたことが間違っていたと気付くわけですね。

そこからは、この日常の庶民の生活の大切さを描いて、戦争がいかに愚かなものだったかを書き続けてきて、まるで、自分の命を削って書いて、最後は亡くなるわけですけれども、そんな林芙美子の生涯を描いています。

で、井上ひさしさん、栗山民也さんが演出して、私はその作品をやったときに「ああ、ほんとにこの言葉を伝えられる仕事をしている、井上ひさしさんのおっしゃる言葉を、私の体を通して、みんなに伝えられる仕事しているんだ」というので、毎日、毎日がもう幸せでした。毎日、空を見上げながら「きょうも芝居をさせてもらって、ありがとう」って気持ちになりました。

なぜならば、お客様が、その言葉をひしひしと受け止めているのが分かったから…。で、「こういう芝居をたくさんの人に見てもらいたい」と私は思ったし、だから、こまつ座って、井上さんが作った劇団の公演だったんですけども、私、こまつ座の宣伝部長になって、もっと、ちゃんと若い人にたくさん、おじさん、おばさんとか、おじいちゃん、おばあちゃんだけじゃなく、本当に、若い、今これから未来をつくる人たちに観てもらいたいから、「私、宣伝部に入らせてください」っていうぐらい、幸せな時間だったんです。

一番覚えているのは、山崎一さんが、これ、前にも話したかもしれませんけど。役者さんが一緒に出てらして、そのお子さんが小学生だったんですね。で、舞台の終演後に井上ひさしさんが、一さんの息子さんと息子さんの友だち4人で観に来ていたのかな。で、「ねえ、きみたち、きみたち、これはね、昔の話じゃないの」。戦争がだんだん始まるかもしれないっていう描写もあるんで。「あのね、これはね、君たちの未来の話なの。日本の10年後の話かもしれないの。それを覚えといてくださいね。」ってすっごい真面目な顔で、小学生の子どもたちに言ったんです。

それから再演がありまして、もうそのあいだに、井上ひさしさんは、お亡くなりになられたんですけども。その再演をしたときに、その男の子たちは高校生になっていました。そしてまた、観に来てくれたんですね。で、そのあと、4人の男の子たちはファミレスに入って、あのときの井上ひさしさんがおっしゃった言葉の意味について、すごい討論をかわしたんだそうです。何か、自分なりに答えを探して、「これからの日本について、考えたいって思った」っていうふうに言ってくれたんだそうです。

何だか、芝居ってそういう力があって、またまたうれしいなと思います。そして、その芝居をまたできる喜びを私は、今持っています。そんな芝居に出会えた2004年、『太鼓たたいて笛ふいて』でした。他にもいっぱい話したいんですが、他のコーナーができなくなっちゃうので、今度またお話ししたいと思います。というわけで、今回振り返ったのは2004年、平成16年、私が47歳のときのことについてでした。

大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”

ラジオ第1
毎週水曜日 午後9時05分~9時55分

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【放送】
2024/01/17 「大竹しのぶの“スピーカーズコーナー”」

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