みんなでファクトチェック 第1回 みんなでファクトチェックをする理由 〜SNSの偽情報から身を守るには

24/04/12まで

Nらじ

放送日:2024/04/05

#インタビュー#SNS

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ネットやSNSにあふれる情報から身を守るには、何が正しい情報なのか検証することが大切です。今回は、なぜ今「ファクトチェック」が重要なのか、NHKネットワーク報道部デスクと考えます。(聞き手:杉田 淳 ニュースデスク・柴田 祐規子キャスター)

【出演者】
足立:足立義則(NHKネットワーク報道部デスク)

“偽情報社会の歩き方”を伝えます

――このコーナーのタイトルの「ファクトチェック」は、どういう意味ですか?

足立:
まだなじみない言葉ですが、文字通りでは「ファクトをチェックする」つまり「事実を確認する」ということ。
ただそれにとどまらず、公の場での誰かの発言や、ネットとかSNSで広まっている情報、画像とか動画、メディアのニュースなどで伝えられていることなどが本当かうそかを検証して、それを伝えることを指します。

「ファクトチェック」という言葉を聞いたことがなくても、例えばSNSで、ほんとかな? という情報を見たり、明らかに偽物でしょう? という画像とか動画などを見聞きしたことは、今かなり多くの人があるんじゃないかと思います。
例えば台湾で地震がありましたが、こうした大きな災害があるたびに偽情報がSNSに投稿されて拡散するということが、もう当たり前になってしまっているんですね。
全く関係ないビルが倒れる動画とか、人工的に引き起こされた人工地震だという偽情報が拡散したんです。

このコーナーでは、最近どんな偽情報が広がっているのか説明して、注意を促したり、偽情報に対抗する取り組みを紹介したりして、偽情報があたりまえになっている世の中の、いわば「偽情報社会の歩き方」を伝えていきたいと思います。

著名人からラインが来たら 「偽アカウント」に注意

足立:
さっそくですが「偽アカウント」が問題になっているのをご存じですか?

――「なりすまし」ということですよね。

足立:
そうなんです。アカウントとはSNSの利用者の登録名ですが、勝手に他人の名前をかたっても作れてしまう。有名人の名前をかたった偽アカウントとか、人以外でも有名企業とか金融機関をかたった偽アカウントを、いろいろなSNSで当たり前のように目にするようになってしまっています。

――それが今問題になっていると?

足立:
そうです。「SNS型投資詐欺」という犯罪につながっているんですね。
去年から問題になっているのは、SNSのフェイスブックやインスタグラムで有名人になりすましたアカウント。その人の写真を勝手に使って「無料でもうかる方法を教えます」といった広告を載せて、うっかりクリックすると、例えば実業家の堀江貴文さん、経済評論家の森永卓郎さんという名前からLINEがきて、中には3か月ぐらいやり取りを懇切丁寧にするという事例もあったそうです。あげくの果てに暗号資産の取引や、投資名目の銀行振込などを持ちかけられて、お金をだましとられてしまう。
SNS型投資詐欺の被害がどれくらいかというと、警察庁のまとめでは去年1年間に、わかっているだけで全国で2,271件で、およそ277億9,000万円にのぼっているということです。

――これは取り締まれないんですか?

足立:
勝手に名前を使われた著名人の堀江さんとか森永さんも、自分じゃないですよ、だまされないで、と呼びかけているのですが、中でも最近、活発に動いているのが実業家の前澤友作さん、宇宙に行かれたりした方です。
先月、自ら詐欺広告被害の通報窓口というものをネット上に設けて被害の情報を集めたところ、その件数は、今月2日までに188件、被害総額約20億円にのぼっているということなのです。
前澤さんは、自身のSNSで「詐欺広告だと分かっていながら、それを見過ごし続けるフェイスブックなどのSNS事業者に対しては、詐欺のほう助にあたる可能性があり、警察当局に対応を求めた」と述べています。

SNS事業者は助けてくれるのか?

――問題は解決に向かうのでしょうか?

足立:
SNS事業者に何とかしてくださいといっているわけですが、そもそも、例えばテレビとか新聞、雑誌などに広告を出す場合は、掲載企業の審査があります。それに対してSNSなどのネット広告は、個人でも携帯電話の番号やクレジットカードがあれば比較的手軽に広告を掲載できることで急拡大してきたという経緯があるんですね。その手軽さが悪用されてしまっているというのが現状なんです。
それに対してフェイスブックやインスタグラムの運営側のメタ社は、不適切な広告をAIや人の手で見つけたら削除する、そしてユーザーにも問題だと思った広告を見つけたら報告してほしい、と主張しています。
前澤さんはメタ社から送られた回答を公開していますが、それによると「詐欺的な広告には措置を講じている。ただし、このような措置も完全ではなくすべての問題を検出することは困難だということを理解してください」といった内容だったとのことです。

――詐欺広告の全滅は難しいということ?

足立:
そうです。私たちも努力はしていますよ、でも難しいことも理解してくださいというニュアンスですね。
メタ社のSNSなどを利用している人は全世界で40億人にのぼるとされています。フェイスブックやインスタグラムは無料で利用できるわけですが、この巨大な無料サービスを支えているひとつがネット広告なので、詐欺広告に対策は講じているが、限界があるということです。
とはいえ、詐欺の広告が今後も多く配信されることが当たり前のようになっていくと、結局はプラットフォームの広告事業にも影響が出てくる、やがて収益が悪化していけば、チェックも行き届かなくなるという悪循環におちいりかねないんです。

「偽アカウント」から身を守る“偽情報社会の歩き方”は

――そうすると利用者が自衛していかなくてはならないということですか?

足立:
はい。“偽情報社会の歩き方”と最初に申し上げましたが、今回の“偽情報社会の歩き方”は、『SNSのフェイスブックやインスタグラムで、有名人の名前と顔写真などで投資のテクニックを教えます、といった投稿を見つけたら、まずは疑ってかかった方がいい』
残念ながらこれが現状です。新NISAもはじまって投資に対する関心が高まっています。そこを巧妙に突いてくる犯罪が増えているので、くれぐれも注意が必要です。


今回は偽情報の中でも、偽アカウント、偽広告の問題についてお話ししましたが、詐欺をする人がもちろん悪いのですが、偽広告を掲載しやすくなっている、またチェックも行き届かなくなっているプラットフォーム側の問題もあると言えます。偽情報がまさに収益につながっているという、偽情報をめぐる生態系みたいなのが出来ているというのが現状だと思います。
このコーナーでは、偽情報を巡る問題について考えていくために、毎回、さまざまな取り組みを紹介して、みんなで偽情報対策をアップデートさせていきたいと思います。


【放送】
2024/04/05 「Nらじ」

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