医師が教えます 健康的で効果的なダイエットのしかた

Nらじ

放送日:2023/06/30

#インタビュー#医療・健康#カラダのハナシ

まもなく夏本番。ダイエットを意識されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。その一方で、「ダイエットの情報がありすぎて何がいいのかわからない」「結局リバウンド! やってもしかたがない」という声も聞かれます。そこで今回は医師の奥仲哲也さんが、ダイエットに関する疑問について解説。ご自身が長年行っている、おすすめのダイエット法を紹介してくれました。(聞き手:眞下貴アナウンサー、菊野理沙キャスター、出石直解説委員)

【出演者】
奥仲:奥仲哲弥さん(国際医療福祉大学医学部教授)

炭水化物を少し控えてたんぱく質をとる

――ダイエットにトライする人は多いですが、長続きする人は少ないようですね。

奥仲:
「食べないダイエット」や「体に負担のかかるような運動」では、なかなか継続できず、ダイエットが成功しない理由に直結してしまいますのでおすすめできません。ダイエットの前提として、減量は1か月に1.2kgのスローペースで行うことをおすすめします。体重を1kg減らすには、およそ7000kcalの削減が必要とされています。つまり1か月で体重を1kg減らすには、7000kcal÷30日で、1日およそ230kcal減らす必要があります。これは毎日、6枚切りの食パン1.5枚分を減らす計算となります。

――食パン1枚半を減らすだけなら、なんとなく無理なく続けられそうに思いますね。主食となるパンやごはんをなるべく食べないようにする「炭水化物ダイエット」が話題になっていますが、効果はどうなのでしょうか。

奥仲:
「炭水化物ダイエット」を行うと、確かにやせます。なぜなら私たちの体は、炭水化物が少なくなると、エネルギー不足を補うために体内に蓄積されている中性脂肪を分解して、新しいエネルギー源を作り始めるからです。しかし体のエネルギー源となる炭水化物の不足は、集中力の低下や疲労感の原因となるので注意が必要です。

厚生労働省では、炭水化物の摂取目標量を、摂取する総エネルギーのおよそ50~65%としています。1日の摂取カロリーが2000kcalであれば、そのうち1000~1300kcalを炭水化物でとるイメージです。しかし普通の食生活をしていますと、確実に炭水化物の摂取目標量をオーバーしてしまいます。そうしたことから、炭水化物を少し控えめにして、代わりにたんぱく質を積極的にとる食生活が、健康的なダイエットにつながると思います。

食事は副菜から。そろりそろりとよくかんで

――何を食べるかということのほかにも、大事なことはあるでしょうか。

奥仲:
どのように食べるか、食事のしかたも、ダイエットに関係します。まず大切なのは、よくかむことです。食べ物をよくかんでそしゃくすると口の中の刺激が脳に伝わり、「神経ヒスタミン」という物質が分泌されます。この神経ヒスタミンが満腹中枢を興奮させ、「もう、おなかがいっぱいだ」と感じさせてくれるため、よくかむことで食べ過ぎを防ぐことができるのです。

また、食事にかける時間の長さや食べる順番も、ダイエットの重要な要素となります。空腹時の早食いや、いきなり大量の炭水化物を摂取するのはNGです。早食いをしたり、食事の最初に糖質をたくさんとったりすると、血糖値が一気に上昇します。すると、すい臓から大量の「インスリン」というホルモンが分泌され、血糖値を抑える方向に作用します。インスリンは同時に、血液中の糖を脂肪細胞に取り込むよう促す働きも持っています。そのため、インスリンが多く分泌されると、血液中の余った糖がどんどん脂肪にため込まれ、体脂肪の蓄積につながる原因になるのです。

ですから食事の際には、「いきなりごはん」ではなく、野菜や副菜などのおかずから、そろりそろりとスタートするようにしましょう。

目指すは“細マッチョ”。リバウンド防止にも

――いったんダイエットに成功しても、リバウンドをしてしまうケースもよく聞きます。どうすれば防げるのでしょう。

奥仲:
ダイエットの結果、筋肉量が減ってしまうと基礎代謝の低下を招いて、結果として、やせにくい体質、リバウンドしやすい体質につながってしまいます。 一方、筋肉がつくと基礎代謝が高まり、運動をしていないときにも脂肪の分解を促す効果が期待できます。

成功への近道は、大きな筋肉を鍛えることです。大きめの筋肉は、お尻や太もも、胸や背中にありますので、そこを意識して鍛えるとよいでしょう。おすすめは、下半身の大きな筋肉を鍛えるスクワットです。 さらに、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動は、筋肉を鍛えるのと同時に体の中に酸素を取り込み、脂肪を燃焼させるダブル効果が期待できます。リバウンドを防ぐためにも、目指すは、ガリガリではなく“細マッチョ”です!

「やせ呼吸」を習慣に。「いの口」呼吸にトライ

――先生はおなかも出ていませんが、何かダイエット法を実践されているのですか。

奥仲:
私は身長180cm、体重63.5kgで、この値は20歳ぐらいから還暦をだいぶ過ぎた現在まで、ほぼ変化したことがありません。好きなものは食べていますし、運動も、スポーツジムには9回入会しましたが9回退会していて2か月以上続いたためしがないという、ズボラ人間です。そんな私が唯一続けているのが、「やせ呼吸」という呼吸法です。「やせ呼吸」にはいくつか種類がありますが、きょうは「いの口」呼吸をご紹介しましょう。

やせ呼吸/「いの口」呼吸

  • 1)まず口を、「いー」と発音するように横に開く
  • 2)「い」の形にした口から、10秒くらいかけて息を吐く
  • 3)おなかがグーッとへこむまで、しっかり吐き出す

吸うのは鼻からですが、しっかり吐くことができれば、意識して吸わなくても勝手に空気が入ってくる感じです。この長く強く吐く「いの口」呼吸を続けて4~5セット行うと、代謝がアップしているのを実感できるはずです。

私はこうした「やせ呼吸」をやる習慣がついていますので、信号待ちや会計待ちなどの待ち時間はもとより、暇さえあれば、1日に100回以上はやっているんです。いつでもどこでも手軽に出来る「やせ呼吸」を、皆さんもぜひ試してみてください。

――ありがとうございました。


【放送】
2023/06/30 「Nらじ」

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