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2020年11月18日(水)放送より

「舌には体の不調が真っ先に出る」という専門家もいるほど、いわば“健康のバロメーター”としての側面があります。まもなく冬本番。新型コロナウイルスだけでなく、感染症にかかりやすくなる季節です。舌をチェックして早めに体の不調を見抜くポイントを伺います。

【出演者】
瀧さん:瀧邦高さん(大阪大学大学院歯学研究科臨床教授/歯科医師)
岩本デスク:岩本裕ニュースデスク
武田キャスター:武田涼介キャスター
菅野キャスター:菅野真美恵キャスター


岩本デスク: 「舌」というと、毛細血管が多く集まる粘膜組織なので、例えば血液などの体液の変化が真っ先にあらわれるといわれていますね。
瀧さん: 舌はまず、食道や胃腸とつながる消化器官の中では外から見えやすい器官です。特に舌の裏にある「舌下静脈」は皮膚に覆われていないこともあり、体の血管の中では目で見えやすい血管だといえます。
岩本デスク: 目でチェックできるというのが、大きいわけですね。
瀧さん: そうですね。また体液の状態によって潤いや渇きの変化を受けやすいので、舌は健康状態があらわれやすい器官だと思います。意識的に舌をチェックすることで、体調管理がしやすく、病気の早期発見・早期治療へとつながると考えています。
菅野キャスター: 早速、舌のチェック方法を教えてください。
瀧さん: まず、「あっかんべー」をするように舌を出してみてください。鏡の前に立って自分自身でチェックをしてもいいですし、家族に見てもらうのもよいと思います。コーヒーやカレーなど、舌に色がつきやすい食事の後は避けたほうが良いです。分かりにくくなりますので。毎日の変化を見るならば、チェックする時間や場所、明るさは一定にしたほうが比較しやすいと思います。
武田キャスター: 健康な舌、理想の舌の状態というのは、どのような見た目ですか。
瀧さん: 元気な子どもさんの舌をイメージされるといいと思います。
武田キャスター: ピンクでハリがあって……、という感じですか。
瀧さん: そうですね。薄いピンク色できれいなだ円形をしています。
武田キャスター: 具体的にチェック項目を教えてください。
瀧さん: 4つのポイントに注意してチェックしてみるといいと思います。
まず1番目。舌の色、それから、舌の表面の、舌苔(ぜったい)という白いこけのようなものですね。舌の色からは血流や体の温度が分かります。また舌苔からは、体液や免疫力の状態が分かります。量や色、まだらになっていないかを見ましょう。

2番目に、舌の形です。体液、水分量の状態、乾燥ぎみかむくみぎみかが分かります。歯形が付いているか、舌の表面にあるシワが濃くないかなどを見ましょう。

3番目、舌の裏の血管を見てください。舌の裏は見えにくいんですけれども、上の前歯をなめるようにヌーッと出してもらうと見やすくなると思います。ここで血液の流れを見ます。血管の太さ、形、色、左右に差があるかをチェックしましょう。

4番目、舌の動きを見ます。舌にきている神経や筋肉の働きを見ます。まっすぐに出せるか、余計な力が入らないかをチェックしましょう。
岩本デスク: そもそも、どうなったら注意したほうがいいと考えればいいのですか。
瀧さん: 注意したほうがいい舌には、次のようなものがあります。
まず1つ目として、舌自体が赤いとか、舌表面のこけのような部分が黄色いとか、舌の表面に亀裂があるような場合。こういうときは、「水分不足」もしくは「熱がある状態」です。体全体の体温が高くなって熱がある場合と、胃腸に熱があって炎症を起こしている場合にも黄色くなります。こまめに水分をとるようにしたり、炎症が起きているようならば内科にかかったほうがいいかもしれません。
岩本デスク: 色で炎症が起きていることまで分かるんですか。
瀧さん: そうですね。
2番目として、舌が紫色になっている状態です。舌全体、あるいは部分的に紫色だったり、紫色の斑点が出ていたりします。そういう場合、舌の裏の血管が太く目立つ状態になっていることが多くて、「血液の流れが滞った状態」「手足の冷えやむくみがあらわれやすい状態」を指しています。ドロドロの血になっている場合もあると思います。そういう場合は、散歩など軽い運動をして水分補給をするといいと思います。

瀧さん: 3番目に、舌全体が腫れぼったい、舌の縁に歯形が付いている状態です。「胃腸が弱っている」「体にむくみがある」状態のときに起きやすいです。体力や免疫力が低下しがちで、食べ過ぎや飲み過ぎが原因の場合もあります。温かいものをとるようにして胃腸を休ませましょう。
舌に歯形が付く場合は、舌がむくんでいる場合以外にストレス等で歯を食いしばり過ぎていて、舌に歯をグーッと押し付けて歯形が付いている場合があります。歯を食いしばり続けると歯茎に負担がかかり歯周病になる可能性もあるので、意識的に上下の歯が長い間くっつかないようにする必要があるかと思います。
岩本デスク: 体力や免疫力が弱っている可能性もあるとのことですね。
菅野キャスター: そうしたことから、大きな病気が潜んでいるのも分かるのでしょうか。
瀧さん: すべての病気が分かるわけではないのですが、舌の異変が大きな病気の前兆である可能性はあると思います。例えば、舌の表面のこけのような部分が、先ほどは黄色で炎症があるといいましたが、こげ茶色をしている場合は、消化管に炎症が強くなってきていて、それで色がだんだん濃くなったりすることがあります。こげ茶色をしている場合は、消化管の炎症がある可能性があると思います。
岩本デスク: 胃炎や胃潰瘍、そして腸などの炎症ということもあるのですか。
瀧さん: そうですね。胃の状態が悪いときに舌のこけが大きくなりやすいです。また舌がまっすぐ出せない場合は、神経が侵されたり、血管が詰まりかけたりしている可能性があります。脳卒中などのおそれもあるので、「いつもと違うな」と思ったら病院へ行くことをおすすめします。
岩本デスク: 舌がまっすぐに出せない場合は、神経が侵されている可能性があるのですか。
瀧さん: そうですね。普通にまっすぐ出せたらいいのですが、神経が侵されていると舌がまっすぐ出せず、右にいったり左にいったりというような状態の場合は、脳をチェックしてもらったほうがいいと思います。

岩本デスク: 脳の血管が詰まっていることも考えられるのですね。コロナ禍で病院に行くのをちょっと敬遠する方もいらっしゃるかと思いますが、この他にも、タレントの堀ちえみさんのように舌がんということもありますので、口内炎が長引くとか、舌が変だなと思ったときには、ぜひ、病院に行くということですね。

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2020年11月18日(水)放送より