別府発 「リネン」を無駄にしない!(大分)

NHKジャーナル

放送日:2023/12/19

#ローカル#大分県#環境#SDGs

旅館やホテルなどの宿泊施設で大量に使用されるタオルやベッドシーツなどの「リネン」を、むだなく利用する取り組みがはじまっています。大分放送局の宮崎大地(みやざき・だいち)アナウンサーが取材しました。

何度も使えばいつかは…

宮崎:
宿泊施設に備え付けの「リネン」と言っても種類はさまざまです。例えば、タオルだけでも、バスタオルにフェイスタオル、バスマット。ほかにもシーツに枕カバーなどがあります。これらは一般的に宿泊施設側がレンタルしているもので、使用後に業者によって回収されクリーニングされています。

――繰り返し使われるんですよね。パリッとしたシーツに寝転んだり、ふかふかのタオルを使ったりするのは気持ちがいいですよね。

宮崎:
そうですね。宿に泊まる楽しみは食事やお風呂などいろいろありますが、これらが整った清潔な客室で過ごすのも旅の醍醐味ですよね。
ただ、全国一の源泉の数と湧出量を誇り、300以上のホテルや旅館が立ち並ぶ温泉のまち・別府市は、このリネンを巡って頭を悩ませていました。

――リネンで悩みですか?

宮崎:
そうなんです。この地域の宿にリネンを供給している、豊後大野市のリネン供給会社の工場を訪ねると…。

♪「大型洗濯機」の稼働音

宮崎:
工場内に響き渡る「大型の洗濯機」の大きな音。この日はフル稼働していました。使用後に回収されたリネンは、こちらの工場で洗浄から乾燥、アイロンがけなどが施され、再び新品同様の状態によみがえります。驚いたのはその量、1日で20トンにも及びます。
その工場の片隅に布が山のように積まれた大きなコンテナがありました。ここには「役目を終え廃棄されるリネン」が集められていたんです。高さ2メートルほどのコンテナの前で、リネン供給会社の常務・宮迫奈緒美さんに話を聞きました。

宮崎:
だいたい何日分くらいになるんですか?
宮迫さん:
2週間ぐらいでいっぱいになります。やはりお客様に一番いいものを提供したいので、ダメなものは廃棄しています。

宮崎:
回収したリネン類は検査機や人の目でチェックされ、破れやほつれが見つかったり汚れが取れなかったりするものは処分されます。廃棄される量はこの工場だけで、1か月で700㎏になるといいます。

シーツがシャツに、シャークに!?

宮崎:
別府市を訪れる観光客の数は、回復傾向にあります。このほど公表されたデータによると、2022年に別府市内を訪れた観光客の数は、新型コロナの感染拡大前に比べて6割強にまで戻ったとのことです。それに伴い、リネンを扱う業界としても大量の廃棄リネンをうまく活用できないか模索が続いています。

――いままではどうしていたんですか?

宮崎:
こちらの工場では、リネンのおよそ8割は「業務用の雑巾」を作る会社に引き取ってもらい、リサイクルされてきました。
そうしたリネンにさらに付加価値を与えようと目を付けたのが、別府市の外郭団体でした。シーツとして利用されていたリネンを使って、新たな製品としてよみがえらせる取り組みを始めたんです。
例えば…、おしゃれなオープンカラーシャツとスタンドカラーシャツです。それぞれが1点もので、去年10月からネットを通じて販売をはじめたところ、早速「リネン特有の肌触りがいい」とか、「シワはつきやすいけど独特の風合いがあっておしゃれだ」などの声が寄せられています。
この活動をはじめた、別府市の外郭団体で特産品の開発や別府の新たな旅行プランの企画などをしている、内山恵美さんの話です。

内山さん:
できれば別府の課題を何か解決できる取り組みができないかなと思っていました。地域にはたくさんの宿泊施設があるので、リネンの廃棄されるものがたくさんあるんじゃないかと思い、それを利用することにしました。

宮崎:
内山さんはさらに廃棄リネンを有効活用できないか模索をつづけています。去年、手のひらサイズのぬいぐるみをデビューさせました。

宮崎:
「サメ」がモチーフの『湯ザメ』というキャラクター。素材はリネンなので色は真っ白。バッテンの目に食いしばった歯がチャームポイントで表情に愛きょうがあります。『湯ザメ』の製造は地元の障害者就労支援施設にお願いし、一点一点が利用者による手作りです。別府駅の観光案内所などで販売されています。旅の思い出に浸ったまま夢から“サメ”たくない、そんな人たちのお土産になってほしいという願いが込められている…とか。
温泉のまち・別府で廃棄リネンが息を吹き返し始めています。これからも“じょーず”な利活用に期待したいと思います。

大分放送局
宮崎大地アナウンサー


【放送】
2023/12/19 「NHKジャーナル」

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