2月22日は“猫の日” 知っておきたいペットアレルギー

NHKジャーナル

放送日:2024/02/21

#医療・健康#カラダのハナシ#どうぶつ

ジャーナル医療健康、今回のテーマは「ペットアレルギー」です。2月22日は、2が3つで「ニャン・ニャン・ニャン」ということで“猫の日”です。各種メディアでかわいい猫の動画などをみて、ペットを飼いたいと思う人が多くなるかもしれません。しかし、安易に飼い始めると、あとから自分や家族がアレルギーだと分かって困ってしまうこともあります。そこで、猫や犬、鳥、ハムスターなどのペットアレルギーの検査方法や、アレルギーがある人がペットと触れる際の対策などを専門家に伺います。(聞き手:山崎淑行ニュースデスク、打越裕樹キャスター、結野亜希キャスター)

【出演者】
海老澤:海老澤元宏さん(医師、国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター長、日本アレルギー学会理事長)

ペットアレルギーとは

――まず、ペットアレルギーとはどういうものなんでしょうか?

海老澤:
動物の毛、フケ、唾液、ふん尿などに含まれる物質のアレルギー反応として、くしゃみ、鼻水、せきなどの症状や皮膚のかゆみ、目の充血などの症状が起きることです。重篤な場合、呼吸困難、ぜんそくのような症状が出る場合もあります。

猫アレルギーがよく知られていますが、犬や鳥、ハムスターなどの動物でもアレルギーが出る人もいます。研究職で動物実験をしている人の中には、ネズミのアレルギーで受診される方もいます。

――ありとあらゆる動物で、アレルギーが出るんですね。

海老澤:
はい。たとえば金魚などの魚とかカメなどのは虫類であれば通常問題ないんですけれど、一般的な、毛が生えているようなペットであればアレルギーが出る可能性があります。

ペットアレルギーの検査法

――自分がペットアレルギーかどうかは、検査で分かるものでしょうか?

海老澤:
はい。クリニックや病院で検査すれば分かります。検査には2通りあって、どちらも保険適用になっています。
通常、一般的なのは血液検査で、アレルギーの元となる物質「アレルゲン」に反応として出る「IgE抗体」という物質が我々の身体の中にあるんですけれど、血液を少量採取して調べます。たとえば、猫、犬、鳥などのアレルギーや食物アレルギーなどについても同時に検査できて、費用は1項目あたり1,500円程度です。
少量の血液を採取するだけなので体への負担が少ないのがメリットですが、結果が出るまでに1日から2日かかり、費用が比較的高いのがデメリットかもしれません。

――もうひとつの検査は、どんな方法ですか。

海老澤:
もうひとつは、アレルゲン物質を少量だけ皮膚の上に置いて血が出ない程度の傷をつけて様子を見る検査です。
比較的安価で、結果が15分程度で出るというメリットがある一方で、テスト結果に影響する可能性がある投薬治療を中断する必要があることや、陽性に反応が出た場合には皮膚がかゆくなるなどのデメリットもあります。それから、テスト用のアレルゲン物質の種類が犬猫などのフケなどに限定されているため、自分が検査したいアレルゲンが病院にない可能性もあるので、事前に確認していただくとよいと思います。

いずれにしても、検査はアレルギー専門医のいるクリニックや病院で受けるのが望ましいと思います。近所にアレルギー専門医がいなければ、症状に応じて内科、小児科、耳鼻咽喉科、皮膚科などのクリニックでも検査を受けられますが、基本的には血液検査になることが多いと思います。

飼う前に検査と試す期間を

――これからペットを飼いたいと考えている人は、アレルギー検査を事前に受けるとよいですね。

海老澤:
そうですね。
そして、病院での検査に加えて、実際に動物とふれあうという「お試し期間」を設けるとよいと思います。たとえば猫カフェや、ご友人などのお宅で実際にふれあってみて問題ないかを試すのもよいと思います。

ひとつお伝えしたいのは、昔は大丈夫だった人が何年か後にペットアレルギーになるということもあります。そのメカニズムはケースバイケースで断定はできないんですけど、「実家で猫を飼っていて問題なかった方が、親元を離れて一人暮らしをして、しばらくして帰省したら猫と接してアレルギーが出た」というような例もあります。

――今の話とは逆に、ペットアレルギーが自然に治っていくということもあるのでしょうか?

海老澤:
全く症状が出なくなるということはないかもしれないんですけど、徐々に症状が穏やかになっていくことはあります。例えば、猫を飼い始めてすぐはひどかったんだけども、だんだんに慣れてきて症状が出にくくなることはあって、そういう状態を「脱感作」と呼びます。

一方で、ペットを飼い始めたときは平気だった人が、あとでアレルギーになるということもあります。

ペットアレルギーには対症療法

――ペットアレルギーは治療できるものなんですか?

海老澤:
完治させるような特効薬などはないんですけれども、基本的には対症療法が中心となります。くしゃみやかゆみには「抗ヒスタミン薬」、ぜんそくのような症状には「気管支拡張薬」の吸入をしたりとかですね、症状を和らげるのが一般的です。それぞれの症状に対して保険適用のある薬が通常処方されます。

ペットに触れる前に薬を

――ペットにアレルギーがある人が動物と接触する場合の対策、改めて教えてください。

海老澤:
症状が出てから薬を飲むのではなく、あらかじめそういうことが分かっている場合には、そういうお宅を訪ねる場合などに予防的に事前に薬を飲んでおくとよいかもしれません。たとえば、祖父母の家がペットを飼っていて、そこにペットアレルギーのある孫が遊びに行くときどうしたらいいかという相談などを私も外来で受けていて、事前にそういう薬を処方して飲んでいただいていることが多いです。

室内のアレルゲンを減らそう

海老澤:
あとは、室内のアレルゲンの量を減らすっていうことが大切だと思うんですけれど。念入りな掃除、あるいは空気清浄器などもよいと思いますし、布製のアレルゲンが付着しやすいカーテンとか、あるいは布製品によるソファなども、できたらツルツルの合成皮革とか革製にするとよいと思いますし、じゅうたんなどもやはりフケが残ったりしますので敷かないほうがよくて、フローリングとかそういうのがオススメかなと思います。

あとは、ペットと触れ合ったら、服を着替えることなども非常に効果的だと思います。ペット自体も、犬なんかは可能であればシャンプーを比較的まめにするとよいかもしれません。ただ、猫などはシャンプーっていうのがなかなか、繰り返しするとストレスになってしまうので、ぬれたタオルで体を拭くとかブラッシングするとかですね、そういう対策でアレルゲンをできるだけ減らしていくようなことがよいと思います。

飼う種類を選ぶのも一案

――動物の毛にアレルゲンがたまりがちということなんですね。だから、もしこれからペットを飼う段階であれば、毛の量が少ない種類にしたほうが、アレルギー対策としてはよいということですか。

海老澤:
そうですね。また、持っているアレルゲンが少ないと言われている種類を選ぶのも、ひとつの方法かもしれません。

――そういう種類があるんですね。

海老澤:
はい。猫の種類については、海外で行われた測定で個体差もあるので、まあ参考程度の話ですけれど、バリニーズ、デボンレックス、サイベリアン、スフィンクスなどが比較的アレルゲンが少ないという報告があります。


【放送】
2024/02/21 「NHKジャーナル」

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