心臓病 新たな知見と予防について

24/02/21まで

NHKジャーナル

放送日:2024/02/14

#医療・健康#カラダのハナシ

放送を聴く
24/02/21まで

放送を聴く
24/02/21まで

冬の時期、寒さだけではなくて、さまざまな要因で、心臓に不調を訴える人が増えるといいます。専門家に、生活の中で起こりやすい心臓病のことや予防法についても聞いていきます。(聞き手:緒方英俊ニュースデスク・打越裕樹キャスター・結野亜希キャスター)

【出演者】
東條:東條美奈子さん(医師・北里大学教授)

寒い時期に気をつけた方が良いこと

――1年で最も寒いこの季節、心臓はどんなことが起きやすいのでしょうか。

東條:
問題は、この時期の気温の差です。
寒暖差が激しいと、交感神経が緊張した状態になるんですね、そうすると血圧が上がりやすくなります。血圧が上がると、場合によっては血管が裂ける病気の「大動脈解離」、心臓の血管が詰まる「心筋梗塞」が起きやすくなるので、寒暖差には注意が必要です。

――寒暖差というとこの時期ヒートショックなどもよく聞きますよね、寒い時期だからこそ気を付ける事、ほかにはどんなことがありますか?

東條:
この時期はお鍋を召し上がる方も多いと思いますが、鍋物・汁物などで塩分が多くなるんですね。塩分を取りすぎると血圧は上がりやすいので、具を食べて汁は残すとか工夫していただきたいです。
また、この時期は、運動不足になりがちです。肥満や、糖尿病の悪化、さらに悪くなると心不全、心筋梗塞、脳卒中などの原因になります。

心臓の病気についてわかってきたこと

――心臓病についてですが、新たに分かってきたこともあるそうですね?

東條:
① 男性と女性では、「自覚症状」に違いがあることが分かってきました。
心臓の血管が詰まる心筋梗塞は、男女ともに、ぐっと胸の前が締め付けられて、冷や汗が出るというのが典型的な症状です。ところが女性は、顎が痛い、歯が痛い、肩がこる、めまいがするなどといった症状があって、調べたら心筋梗塞だったということがあります。
女性のほうが痛みに我慢強いということも影響するのか、ご本人も、医療者側も大したことがないと判断してしまい、見逃されるリスクがあることが分かってきました。男性にも、あまり典型的な症状が出ない方もいるのですが、割合としては女性よりはずっと少ないです。

② また、女性は「更年期以降」に心臓病のリスクが高まることが分かってきました。
女性ホルモンのエストロゲンは血管を広げたり、心臓を守ったりする作用があるのですが、更年期によってエストロゲンが減ると血圧が上がり、コレステロールが高くなるなどの変化が起こるため、動脈硬化が進んで心臓病になりやすいと考えられています。

③ もともと循環器病は男性に多いと言われてきましたが、ただ、男性の死因のトップががんで2位が循環器です。しかし今、女性の死因のトップが心臓病と脳卒中を合わせた循環器病で、2位はがんになっている。女性こそ、循環器、心臓に十分なケアをしてほしいです。

予防するには?

――今は一日の気温差も大きいですからね。このあたりも注意が必要でしょうし、女性だけでなく男性も気を付けなければいけないですよね? 心臓病の予防はどのようにすればいいのでしょうか?

東條:
最近では、心臓病の多くは、その原因を知り対策を講じることによって発症を予防できる、悪化を予防できる病気とわかってきました。

――そうなんですね。それはなぜなのでしょうか?

東條:
研究が進み、どんな人にどんな予防策をするとどのくらい病気が減るのか、どのくらい再発が防げるのか、といったエビデンスが集まってきているからです。

例えば、心筋梗塞などの循環器の病気の原因は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、およびこれらの組み合わせで起こるのですが、それぞれ研究によって、効果のある治療やリハビリなどのプログラムが進歩し予防できるようになってきました。また、予防として効果があるのは適度な運動です。全身の血のめぐりを改善することにより、病気のリスクを減らします。

――適度な運動といってもいろんなレベルがあると思いますが、どの程度になりますか?

東條:
具体的には、“息は少し上がるけれども、鼻歌が途切れない程度の強さ”、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。最初から無理をせず、時間は10 分を朝と夕方で2回でも良いです。徐々に時間を長くしてスピードを速めていくとよいと思います。
えいっと力を入れて、呼吸を止めて力むような運動ではなくて、壁や机に手を添えて行うスクワットなどの筋トレもおすすめです。普段全く動いていない方や心配な方はお医者さんと相談しながら進めてください。

能登半島地震で避難されている方への注意事項

――いま、能登半島地震で、寒い中避難生活をしてらっしゃる方も多くいますが、どんなことを気をつけたらいいでしょうか。

東條:
地震などの災害時は、脱水や運動不足により血の塊が詰まってしまう血栓症とか、エコノミークラス症候群に気をつけていただきたいと思います。血栓ができると脳梗塞や心筋梗塞になりやすいので注意が必要です。

また、私が気をつけてもらいたいのは、大きな災害などによる、精神的に強いストレスが与える体への影響です。交感神経が過剰に反応して、心臓のポンプの働きに部分的に異常が出て、うまく血液を送り出せなくなる状態により、心臓がたこつぼのような形になる「たこつぼ心筋症」と言われる病気があります。これは高齢女性に多く、症状は、息切れや疲れやすさ、胸の圧迫感や動悸、吐き気などがあります。健康な方でも急に大きなストレスを受けるとなってしまうというのが特徴です。新潟や熊本地震のあとにもなった方が多くみられました。
放っておくと、重症の心筋症などを引き起こすので、こういう病気があることを知っていただき、もし異変があったら、早めに受診をしてほしいと思います。

エンドコーナー

エンドコーナーでリスナーからの質問や感想についてもお答えいただきました。

SNSから
強いストレスによる「たこつぼ心筋症」、どんな症状がでるんですか?

東條:
息切れ、めまい、胸痛、疲れやすさ、そういうものが特徴的です。特に高齢の女性で、精神的なストレスがあった時になる病気です。

東京都60代の女性
適度な運動の話がでましたが、ラジオ体操は効果がありますか?

――「フルでやると汗だく」っていうふうにも書いてありますが、どうですか?

東條:
はい、効果あると思います。有酸素運動と筋トレのセットがいいと思います。ラジオ体操はどちらの効果も期待できると思います。特に寒い時期にウォーキングに出る前には準備体操が必要かなと思いますので、おうちのなかでラジオ体操してから動いていただくのがいいと思います。ストレッチなども有効かと思います。

――少し体をほぐしてからがよさそうですね。

神奈川県50代の女性
現在アラフィフ真っ盛りの私ですが、更年期に悩まされています。心臓病にも関係があると聞いて、震えあがっています、大豆製品を多くとるといいと聞きましたが、効果はあるでしょうか。

東條:
大豆に含まれるイソフラボンというのが女性ホルモンと同じような作用を持つので、効果があるというふうに言われています。ただやはり大豆だけでなくバランスのよい食事をとるということが一番大切だと思います。

愛知県50代女性
肩こり、心臓が関係していることがあるんですね。慢性的な肩こりは心臓に関わることありますか?

東條:
肩こりがなぜ起きるかということなんですけども、実は血圧がすごく高くて肩こりの症状が出ることがあるんですね。なので肩こりがある場合には血圧を測っていただきたいと思います。高い場合にはクリニックを受診していただいて、治療が必要か判断してもらう必要があるかなと思います。
あとは運動不足でも肩こりはありますので、そういった場合にはストレッチをしたり動かしたりしていただくのがいいかなと思います。

広島県40代男性
僕は喫煙者ですがタバコを吸う事で心臓病のリスクは高まりますか?

東條:
はい、すごく高まります。タバコを吸っている方はすぐにやめていただきたいと思います。タバコというとついがんのことを考えてしまうんですが、血圧も高くなりますし、糖尿病や脂質異常症の代謝に与える影響も大きいんですね。あとは動脈硬化が進んでしまって、脳卒中とか心筋梗塞などの病気になりますので、何とかやめていただきたいと思います。いま禁煙外来などもありますので、うまく利用していただければと思います。

東京都60代男性
――このかた、町で小さな薬局をされているようなんですが。

心臓をはじめとする循環器の病気の患者さんは、薬の種類が多くなります。薬を調剤して患者さんにお渡しするときに、血圧やどうき、息切れ、むくみ、などの体調変化などをお聞きしても、ある意味では当然のことですが「変わりありませんよ」と言われます。東條先生が患者さんの診察時に薬の副作用の初期症状で注意して確認されている点があれば教えてください。薬局店頭での服薬指導に活かしていきたいと思います。

東條:
お薬を最初に処方したりとか変えたりするときは、そのお薬のアレルギーがないかを心配します。なので一番最初に出すときは、日数を少なめにして出すことが多いですね。あとは薬の種類によって違います。例えば血圧の薬ですと下がり過ぎても困るので、最初は「ふらつきがないですか?」とかそういった聞き方をすると患者さんが「言われてみると立ちくらみがします」とか具体的なお話が出ると思います。
あとコレステロールを下げる薬の種類の中には、横紋筋融解症といって筋肉が痛くなったり、おしっこが赤くなったりするものがあります。そういったものについては、お薬の具体的な副作用の出やすさについて説明してお聞きするようにしています。


【放送】
2024/02/14 「NHKジャーナル」

放送を聴く
24/02/21まで

放送を聴く
24/02/21まで

この記事をシェアする

※別ウィンドウで開きます