骨髄バンク ドナーが足りない…

NHKジャーナル

放送日:2024/01/17

#医療・健康#カラダのハナシ

ジャーナル医療健康は、「骨髄バンク」についてお伝えします。
白血病など、血液をうまく作れなくなる病気の治療に欠かせないのが骨髄移植です。移植には白血球の型が合うことが必要で、なるべく多くの人に、あらかじめ「骨髄バンク」にドナーの候補として登録してもらうことが重要です。
しかし、この5年でおよそ10万人が年齢を理由として登録を外れる見込みで、このままでは救えるはずだった命を救えなくなるのではないかという危機感が高まっています。(聞き手:緒方英俊ニュースデスク・打越裕樹キャスター・結野亜希キャスター)

【出演者】
戸田:戸田泉(とだ・いずみ)さん(日本骨髄バンク広報渉外部長、骨髄バンクコーディネーター)

骨髄バンクとは?

――戸田さん、骨髄バンクとはそもそもどういう仕組みなんでしょうか。

戸田:
はい、骨髄バンクの役割は、白血病や再生不良性貧血など、うまく血液を作れなくなることで発症する病気の方と、正常な血液を作れるドナーの人たちをつなぐことにあります。
こうした病気の治療には、赤血球や白血球を作るもとになる「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」を、正常なものに入れ替えるという方法があります。その細胞は、みなさんの骨髄の中に多く含まれていますので、入れ替えのために行われるのが「骨髄移植」なんです。
ただ、骨髄移植をするには、患者さんとドナーの白血球の型が一致する必要があります。その確率は、他人同士だと、数百から数万分の一だと言われています。

――数万分の一と聞きますと、かなり低い確率ですよね。

戸田:
そうですね。昨年度、国内で移植を希望されているバンク登録の患者さんは2千人ほどいらっしゃいました。しかし実際には、半数程度しか移植には至りませんでした。ですから、できるだけ多くの人に骨髄バンクに登録してもらってドナーの候補になってもらうことが重要なんです。

いま、若い方のドナー登録が必要!

――今、骨髄バンクに登録している人って何人ぐらいいるんでしょうか。

戸田:
去年12月末の段階では、55万3千人ほどです。数字だけお伝えすると多いと思われるかもしれませんが、このうち、50代以上のかたが10万人ほどいらっしゃいます。ドナー登録できるのは、55歳の誕生日前日までとなっていますので、5年後には10万人ほど、つまり全体の20%近くの登録者数が減ってしまうことになるんです。

――なるほど、白血球の型が合うのは他人同士だと数百から数万分の一だということなんですが、そうすると、20代とか30代とか若い人たちが登録してくれればいいんですが、そうした人たちがドナーになるにはハードルがあるんでしょうか。

戸田:
そうなんです。実は、ドナーとして選ばれると医療機関に5~6回ぐらい行って、健康のチェックや意思確認のための面談などをしてもらう必要があります。その後ようやく、3~4日ほど病院に入院して骨髄液の採取などを行います。提供のために仕事を休む必要もありますし、全身麻酔をかけますので、リスクはゼロとは言えません。中にはやはり、ためらう方もいらっしゃるんだろうと思います。

求められる支援は

――仕事のことを考えると、休みの取得に協力してくれる企業があればいいなと思うんですけどね。

戸田:
そうですね。わたしどもも啓発活動を進めた結果、ドナーになるために特別に休暇をとらせてくれる企業は800社以上になりました。しかし、患者さんのことを考えれば、まだまだ足りないと思っています。
もちろん、ドナーになることを無理強いすることはありません。ご本人にも周囲の方にも、しっかり納得してもらうことが重要だと考えています。

――これでどんなふうに命が救われるか、みなさんに知ってもらうことも重要かもしれないですよね。

戸田:
その通りです。患者さんからは、「ドナーさんからの骨髄提供によって、いま私は生きています。」というメッセージが聞かれたり、一方で、ドナーの中には「提供した患者さんが小さいお子さんと聞かされた。人生観が変わったような気がした」と話す人もいました。誰かの命を救うことにつながっているんだと実感していたく機会だと思います。

ドナー登録できるのは?

――ドナー登録できるのは55歳の前日までということですが、他にはどんな条件があるんでしょうか。

戸田:
そうですね。ドナーになれるのは、健康な方。例えば、体重が女性なら40キロ以上、男性なら45キロ以上ある方。過度の肥満の方も難しいんです。健康が第一ということになります。ふだんから薬を飲んでいらっしゃる方や、病気の治療中の方もドナーになれないんです。
もし、ドナーになってもいいという方がいらしたら、献血の際に申し出てもらえれば良いかと思います。その時点で、健康状態など問題なければドナー登録することができます。

――最後に、リスナーにメッセージがあれば、ぜひお願いします。

戸田:
私たちは、移植を必要とするすべての患者さんの、いわば「助かるはずの命」を助けたいと思って取り組んでいます。そのためには、みなさんの、特に若い世代の方の協力が欠かせません。ドナー候補になることを検討してもらえれば、本当にうれしく思います。

エンドコーナー

エンドコーナーでリスナーからの質問や感想についてもお答えいただきました。

ドナー登録について相談する場合、どこに問い合わせをすればいいでしょうか?

戸田:
まずご登録は、近くの献血ルームや保健所、それからお近くで献血バスなどがあれば受け付けていますので、お出かけいただければと思います。そこで簡単なことでしたらご相談の受付はできます。後は骨髄バンク窓口がございますので、そちらにお問い合わせをいただいても結構です。

北海道50代の男性から
骨髄バンクのドナーって、数年前に水泳の選手が白血病だと発表したあと、ドナーが増えたって聞いた気がするんだけど、違うんだろうか。

戸田:
ありがとうございます。実際にこの時にありがたい事にドナーの登録は増加しました。ただその後ですね、一次的に増加はありましたけれども、また減っているという状況もありました。
でも、池江璃花子選手の素晴らしいご活躍を拝見していると、とてもドナーさんの存在というのは、貴重だなと改めて思います。ですので、多くの方にご協力いただければと思います。

SNSです
ドナーになるにはハードルが高いけど、健康な若い世代の方にドナー登録をしてもらえるように地道な啓発活動が必要ですね。

戸田:
その通りですね、私たちも若い世代の方々に登録をしていただけるように、いろいろな啓発活動、SNSで情報発信をしています。こういったことを中心に様々な機会で呼びかけていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

30代男性
単刀直入なのですが、恐怖心などがあると思いますが、どうやって払拭(ふっしょく)するといいですか?ご意見もらえると幸いです。

戸田:
そうですね、リスクについては本当によく問い合わせを受けます。この件は十分な説明が必要ですので、ドナーさんとして候補になられた時に、医師からの説明も受けられますし、十分な説明に努めています。それからそういったいろいろな健康被害がありましたら、そういったデータも示してご説明をしています。
骨髄提供のほかに末梢血管細胞の移植という方法もあります。これは成分献血の形で行う方法です。リスクについては骨髄提供とあまり変わらないと言われておりますが、こういった方法もありますので、ご検討いただければなと思います。

そのほか、放送では紹介できませんでしたが、このようなメールもありました。

静岡県 60代男性
私の親戚も、白血球異常で移植が必要だと言われて、私を含め親族みんなの検査をしましたが、残念ながら誰も適合しませんでした。何とか生きたいと、頑張っていましたが小学5年生の冬に、命が尽きてしまいました。あの時思ったのは、ドナー登録の機会を、もっと増やせないだろうか、ということ。意識の高い人の善意に頼るのではなく、成人式や卒業式、といった若い人が集まるイベントでのアピールや、国を挙げての何らかの優遇措置等が必要なのではないか、と感じました。

多くのメッセージを有り難うございました。


【放送】
2024/01/17 「NHKジャーナル」

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