中国のマイコプラズマ肺炎 日本への影響は?

NHKジャーナル

放送日:2023/12/13

#医療・健康#カラダのハナシ#感染症#コロナウイルス

ジャーナル医療健康、今日は、感染症についてです。日本でも広がっているという感染症ではあるんですが、実は中国ではさらに心配な状況もあると言います。そうした影響が、日本にもたらされることはあるのか専門家に聞いていきます。(聞き手:緒方英俊ニュースデスク・打越裕樹アナウンサー・結野亜希キャスター)

【出演者】
賀来:賀来満夫さん(東北医科薬科大学 特任教授・東京感染症対策センター所長)

感染症 同時流行:免疫力の低下

――賀来さん、今いったい、中国で何が起きているのでしょうか?

賀来:
そうですね、中国では、新型コロナウイルス感染症が発生して以来、ゼロコロナ政策と言われる、人と人との交流を徹底して制限した政策がおこなわれてきました。
現在、中国では、新型コロナウイルス感染症はある程度抑えられていますが、一方で、報道でもみられますようにインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、RSウイルス感染症など、特に子どもたちの間で、いろいろな呼吸器感染症が発生しています。
この原因としては、この4年間、徹底した対策をとったことで、新型コロナウイルスを含め、多くの病原体に接触する機会が減ったこと、そしてそのことで、特に、子供たちの病原体に対する免疫力が低下したことが原因ではないかと考えられます。

日本でも感染症 同時流行?

――そうした免疫力の低下というのは、日本でも言われていることでもありますよね?

賀来:
そうですね、同様のことは日本でも子どもたちの間で免疫力が低下し、インフルエンザや咽頭結膜熱などが流行していることともつながります。マイコプラズマ肺炎は4年ごとに流行があるといわれていて、今年度もやや増加傾向にありますが、中国やヨーロッパ、最近感染が増加している韓国のような状況ではありません。
いずれにしても、現在、中国では、中国衛生当局での発表にもみられますように、未知の病原体によるものではなく、複数の病原体による感染症が同時多発的に起こっているのではないかと考えられます。

新型コロナの教訓を活かして

――ちょっと悪く言うわけではないんですが、気になるのはですね、新型コロナの時にも、中国の発表って信頼性のあるものなのか、ということが疑問だったりしたわけですが…。そのあたりはいかがですか?

賀来:
そうですね。確かに2019年、武漢で新型コロナウイルス感染症が発生し世界中に広がったわけですね、この時中国からの情報についてはWHOを含め、世界各国で懸念が示されていました。そのため、やはり今回は同じく、注意深く見ていく必要はあるのではないかと思います。
現在、国や東京都では、渡航歴のある方、特に中国に行かれた方で、発熱や呼吸器症状がある場合の注意喚起が行われています。場合によっては、21種類の病原体が同時に検出できる「遺伝子検査診断装置」などを利用して診断が行われていますし、さらに詳しい遺伝子を解析するなど、注意深く監視していく対応がとられています。

マイコプラズマ肺炎とは

――教訓にしているということですね。

賀来:
はい。

――マイコプラズマ肺炎、聞いたことはあっても、どんなものなのかあまり詳しく知らないって方は多いと思うんですけれども、知識として知らなければいけないこと、どういったことがありますか?

賀来:
マイコプラズマ肺炎は比較的、子どもさんに多い病気なんですね、特に発熱と夜間に眠れないほどの激しいせきが長く続くのが特徴の感染症です。マイコプラズマ肺炎の原因となるマイコプラズマには種類があり、以前は効果があると言われていてよく処方されていた「マクロライド系抗生物質」が効かないタイプのマイコプラズマによる感染も多くみられるようになってきています。ですから、抗生物質が効かないので、症状が長引くことがあるので注意が必要です。

――今後、日本で、マイコプラズマ肺炎が流行していく場合はどうでしょうか?

賀来:
特に現在、日本でもせき止めなどの薬剤が不足していますよね、マイコプラズマ肺炎では長く続くせきが特徴なんですね、ですからこの場合注意をしていくことが必要になってくるかと思います。
違う種類であるんですけども、マイコプラズマに効果がある抗生物質もありますので、症状が良くならない場合、長引く場合は一度、先生に相談されるのもよいかと思います。

日本への影響は

――年末年始、2月には中国の旧正月・春節があって人の流れが多くなりますが、コロナの時を思い出すこともあって、日本への影響ですね、どう考えたらいいのでしょうか?

賀来:
現在、日本に来られる外国の方は、韓国や台湾からの方、そして欧米の方が多いんですね、中国から来られる方はそれほど伸びていないんです。特に、中国の子どもさんたちが日本に来る頻度は比較的少ないので、現時点では、大きな影響はないと思うんですね。
ただ、やはりどうしても「すり抜け」は避けられないですね。ですから現在、WHOなどでも中国での状況を重視していますので、国や東京都も新型コロナウイルスでの経験を踏まえて、中国での感染状況を注意深く情報収集し、特にマイコプラズマ肺炎などの発生状況についての注意を促しているところなんです。

感染対策は

――改めて、我々ができること。感染対策、予防接種があるかと思うんですけど、どんなことが大切になってきますか?

賀来:
そうですね、私たちはこの3~4年間、新型コロナウイルスを経験してきています。現在、東京都でも、インフルエンザ、咽頭結膜熱、溶血性レンサ球菌性咽頭炎が増えています。また、新型コロナも全国的に再び増えていく傾向が見られていますので注意が必要ですね。
今後、どのような変異株が出てくるかにもよりますが、重症化する可能性がある人、高齢者や基礎疾患をもっていらっしゃる方、妊婦さんなどは引き続きワクチン接種を、多くの人ともし接触がある機会がある場合は、マスクの着用などを自主的に行っていく必要があるかと思います。
特にインフルエンザではワクチン接種をしていただくことも重要でありますし、咽頭結膜炎でも手洗いなどをはじめとする基本的な感染対策を、引き続きおこなっていただくことがとても大切になるかと思います。

――本当に何度もお伝えしていただいたことですけど、新型コロナでせっかく学んだわけですからね。

賀来:
そうですね。

――そのあたり、また、徹底していくことが必要ということですね。

賀来:
そうですね、この経験を活かしていくことが必要だと思います。

エンドコーナー

エンドコーナーでリスナーからの質問や感想についてもお答えいただきました。

広島県40代 男性
中国でマイコプラズマ肺炎がまん延していますが、私たちがこういったマイコプラズマ肺炎などの感染症を予防するためには、うがいや手洗いなどの基本的な感染症対策で予防していったらいいのでしょうか?

賀来:
その通りです。特にマイコプラズマ肺炎は長く続くせきが特徴ですので、マスクを着用したり、換気を十分にしたり、あるいは手洗いなども有効ですね。新型コロナやインフルエンザと同じような対策、それでよいかと思います。

東京都60代 男性
町の小さな薬局のおやじです。地元の子どもたちに溶連菌感染症が増えています。若者でコロナウイルス感染症患者やインフルエンザ患者も来局しました。やはり、感染防止のためには、マスク、手洗い、うがいの励行です。

賀来:
そうですね、やはりマスク、手洗い、うがいの励行というのは大切ですね。溶連菌感染症って決して新しい病気ではないんですね、ただこの3年間、ほとんど流行しなかったので、また流行が始まってきているということになりますので、対策は同じで結構だと思います。

東京都60代 女性
せきから感染するのでしょうか?

賀来:
多くの呼吸器感染症はせきから感染することが多いんですね。ですからせきが出るときというのは、できるだけマスクをつけていただいたほうがせきを飛ばさないので、病原体を飛ばさないのでよいかと思います。

――私から質問なんですけど、感染症対策って、国などの体制づくりは進んでいるんですか?

賀来:
国も東京都もいま、行動計画を立てているんですね。しっかりした行動計画なんですけど、次の新しい感染症パンデミックがどうなるのか、想像を超えるようなことになってきたときに、予想外にどう対応できるかが今後の課題だと思います。

――難しいですけどね。ここまでありがとうございました。

賀来:
ありがとうございました。


【放送】
2023/12/13 「NHKジャーナル」

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