「正しい呼吸」で健康を!

NHKジャーナル

放送日:2023/10/12

#医療・健康#カラダのハナシ

今、運動不足やストレスで呼吸が浅くなっている人が増えています。専門家に肺の重要性や機能を高める体操を教えてもらいます。(聞き手:緒方英俊デスク、打越裕樹キャスター、結野亜希キャスター)

【出演者】
小林:小林弘幸さん(こばやし・ひろゆき) 順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター

息苦しい、胸が苦しいのは 秋バテか

――小林先生、これ気になるんですが、肺の機能が落ちている人が増えているのですか?

小林:
そうですね。特にこの秋はですね、私の外来では、なんとなく息苦しい、胸が苦しい、呼吸がしづらいという人が多いんですね。
やっぱり、この夏の猛暑ですね。この中で外出が減り運動不足になった人が多いということ、それから新型コロナが5類に位置づけられたことから、今まで控えていた活動を再開し疲れた人に多くみられます。夏バテというよりですね、秋バテですね。そういう方が多いんです。
特に若い人、ビジネスマンや大学生など、こういう方たちがマスクを外し、コロナの間できなかったことを再開し頑張りすぎた人や、ストレスがたまった人に多いですね。

原因のひとつは「浅い呼吸」

――それが体の不調になってくるという事ですけど、どうして、そうした不調が起こってくるわけですか?

小林:
原因のひとつは、運動不足やストレスからくる「浅い呼吸」なんですね。
自律神経のバランスが運動不足ですとかストレスで乱れまして、呼吸が浅くなります。そうすると肺機能を十分に使えていないことが体調不良を引き起こすんですね。
よくため息をついている人が多いんですが、これ実は“リカバリーショット”で、ため息をつくのは悪いことじゃないんですね。

――呼吸が浅いままだと、どんな影響がでてくるんですか?

小林:
基本的にですね、肺は、身体に酸素を供給するための器官ですので、肺で取り込まれた酸素が、血液によって全身の細胞に届けられます。呼吸が浅くなり肺の機能が低下すれば、それだけ血液の質も落ちますし、血液の循環も悪くなってしまうんですね。そうなると、ひとつひとつの細胞に酸素が届かない、そうすることによって疲れたり、ぼーっとしたりしちゃうんですね。
その中でいざスポーツをしようとしても、思うように体が動かないなどの不具合が生じてきます。
酸素を供給する肺の機能は、若い人はいいんですが、40代くらいから急激に劣化するんですね。そうなると、アスリートだけではなくて、我々も日常から肺の機能を高めることが重要だと思いますね。

肺の機能を高めるには

――急激に劣化する40代の私、すごく気になっているんですけど、肺の機能を高める方法について詳しく教えてください。

小林:
はい。これ、我々のいう肺を活性化する「肺活トレーニング」というのがあるんですが、実は呼吸には13の筋肉を使っているんですね。この筋肉を鍛えることで、肺の伸縮機能が高まり、肺から取り込める酸素量が増えるんです。

――具体的には、どうしたら、そういう風になれるんですか?

小林:
まずは、肺の容量を増やすために肋間筋(ろっかんきん)、これは肋骨と肋骨の間にある筋肉なんですが、この筋肉がすごく重要なんです。この肋間筋は横隔膜と連動して、腹式呼吸をつかさどる重要な筋肉なんですね。
呼吸の浅い人は、肋間筋が固まってしまっていて肋骨の動きが悪くなるので、なかなか胸が広がらない。ということは肺が広がらないことになるんですね。
ですから、この筋肉の柔軟性を高めることを行わないとだめで、これをやることによって胸郭が広がって深い呼吸ができるようになります。

肺の機能を高める運動をご紹介

――運動みたいなことってありますか?

小林:
簡単です!

▼肋骨と肋骨の間の肋間筋をほぐす運動。
胸の周りにいわゆる肋骨があるんですが、それをゴシゴシ、手をグーの形につくって、縦に横に、どんどんこすってあげればいいんですね。
そうすることによって、1分くらいするとだんだん温かくなってきます。

――なりますね。

小林:
そうなるとですね、肋間筋の血液循環がよくなって柔軟性が高まるんですね。そうすることによって、肋骨がスムーズに動くようになって、深い呼吸ができますね。

呼吸の基本

――肋骨がスムーズに動くようになって呼吸がしやすくなったと感じられたら、次はどうすればいいですか?

小林:
ここからがすごく重要、呼吸の基本ですね。

▼呼吸の基本
鼻から息を吸い、口から息を吐く。
3秒かけて鼻から息を吸い、6秒かけて息を吐く。口の形は、すぼめ「ウ」の形にしてください。

一緒にやってみましょう。

3秒間鼻から・・1,2,3、 そして口をすぼめ、ふーっと息を吐きます。
この時、できるだけ肺の中の空気を吐き切ること。

――普段、ここまで時間かけてないですね。

小林:
そうなんです、呼吸するのはタダなので、みなさん呼吸を軽くみちゃっているんですね。

――(笑)すみません…。

小林:
ですから、こういう呼吸を、スポーツをする前や、夜寝る前に3分間くらいずつ行っていただくと、疲れにくくなりますし、睡眠もよくなりますし、パフォーマンスが上がるということで、オリンピック選手や、プロ野球選手にも、常にやるように指導していますね。特に、胸を広げたりするときに肩甲骨をほぐすといいと思いますよ。

リスナーのメッセージ・質問から

――放送中にたくさんのメッセージや質問をありがとうございました。一部エンドコーナーで紹介させていただきました。

東京都 50代の女性
肺の機能を高めることで、コロナなどの肺の感染症には強くなりますか?

小林:
これは強くなりますね。いい呼吸になりますと肺が鍛えられて、何がいいかというとですね、酸素が十分、ひとつひとつの細胞に行くんですね。ですから免疫細胞が活性化します。それによって検疫機能が高まるんですね。

広島県 40代の男性
僕は毎朝、肺の機能を高めるために深呼吸をしてから仕事に行くようにしていますが、深呼吸することで肺の機能は高まりますか?

小林:
これは高まりますね。これは素晴らしいことで、やはり、呼吸というのは意識しないとできないんですね。きょうもお話しした“1対2の呼吸”、3秒吸って6秒吐くとかですね、これも日ごろは意識できませんので、やはり寝る前の3分間とか、会社行く前の1分間とか。そのように決めてやられるといいと思います。

――さっき、鼻から吸うという話しがありましたよね。よく口呼吸を続けちゃうということがあるかと思うのですが、あれはどうなんでしょうか?

小林:
口呼吸ですと、どうしても口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすくなるんですね。それと、これから寒くなって冬になると、冷たい空気が直接肺に入ってしまいます。できるだけ、もちろん蓄のう症とか副鼻腔炎の方はやりにくいんですけども、鼻から呼吸していただくことを意識していただくといいと思いますね。

SNSから
最近あくびが多いのも、呼吸が浅いからですか?

小林:
これは、そうですね。浅い呼吸が続くとストレスがかかっているのと一緒ですから、どうしても自律神経が乱れます。その反動であくびが出てしまうんですね。ですから、あくびが出る方はちょっと意識していただいて、1対2の呼吸を意識していただくと、あくびも減ってくると思いますね。

SNSから
ストレスで呼吸が浅くなるのを運動でなおすなんて無理や。ストレスなくしてからやんないと、動くのもしんどいから自然に呼吸浅くなるし。

――これ、どうすればいいんでしょうね。

小林:
そうですね。これ患者さんたちがみんなおっしゃることなんですが、逆にですね、ストレスが多い時ほど動けば、循環血液量が増えますし、血液の流れもよくなります。そうすることによって、ストレスに対する抵抗力というのも上がってくるんで、ストレスを感じたら、とにかく動く。私はよく、階段の上り下りをやってくださいと言うんですが、そういうことをやっていただくといいと思いますよ。


【放送】
2023/10/12 「NHKジャーナル」

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