動画サイトでも大人気のクラシック・ピアニスト 角野隼斗さんの紆余(うよ)曲折人生

眠れない貴女へ

放送日:2023/02/05

#音楽#クラシック

クラシックのピアニストでありながら様々な音楽を発信している“かてぃん”こと角野隼斗さんに、ピアノを始めたきっかけ、東大に進学しながらも音楽への道に進んだ経緯、自身にとってのアイドルであるショパンのことなどについてお話を伺いました。

【出演者】
角野:角野隼斗さん(ゲスト)
和田:和田明日香さん(ご案内)

角野隼斗さん

【角野隼斗(すみのはやと)さんのプロフィール】
1995年、千葉県出身。幼少期からピアノの才能を開花させ、中学・高校時代から、動画サイトに「Cateen」名義で、ゲーム音楽やアニメの音楽を投稿。2014年、東京大学に進学。2018年、東京大学大学院在学中に「ピティナ・ピアノ・コンペティション」で特級グランプリを受賞。2020年、東京大学大学院 情報理工学系研究科を「東京大学総長大賞」を受賞し卒業。卒業後は、ピアニストとして国内外で演奏活動を行い、2020年12月にファースト・アルバムをリリース。2021年、ショパン国際ピアノコンクールに挑戦し、セミファイナルに進出。現在は、クラシックで培った技術とアレンジ、即興技術を融合した独自のスタイルで活動中。

音楽と研究と、そしてプロの音楽家への道のり

――東京大学・大学院では、人工知能(AI)を使った音楽情報処理の研究をされていた角野さんが、研究でも就職でもなく、音楽の道を選んだのはどういう理由なのでしょうか。

角野: やっぱり音楽は小さい頃からずっとやっていたものだから、それに関連する研究ができたら楽しいだろうなっていうのはずっと思ってたし、そんな中で、その分野について勉強していると、ま、やっぱり勉強していないとやりたいことは思い浮かばないわけですけれど、勉強していると、なにかその自分の音楽の中の経験と、何か結び付くこともあって、そこから興味が湧いてきたりするものなので、自然とその方向に導かれていった感じですね。気づいたら音楽で生きていたという方が、正しいかもしれません。

2018年にコンクールがあって、それで優勝させてもらったんですが、それが最初のきっかけで、そこからだんだんと音楽活動が増えてきて、僕は2020年に卒業するんですけど、その頃には、自分の生活のほとんどは、音楽に費やすようになっていて、で、なんかこう自分が何も考えてなくても、その気づいたら音楽ばっかりやってるということは、僕は、音楽がやりたいんだろうなっていうのもあったし。どのジャンルでも自分のユニークネスを確立するっていうのがすごく大事だと思うんですけど、研究ももちろん楽しかったんですけど、それよりも音楽の方がもっと面白いことができるかもしれないとか思って、就職をやめましたね、2020の時に。

でも、‟自然に”とか言っていますが、ずっと迷ってはいて、迷って、僕の場合は、決断をしないわけですね。で、しないから、そのまま2つのことをやっていたら、2つの道をどちらかを閉ざすことなく、しばらくこう過ごすというのがあるんですけど、そうすると自然とこっちかなというのがだんだんとわかって、その長い時間をかけて決断するとも言いかえられるかもしれないですけど、芸大を目指さないで、東大を目指すと決めたときも、なんかそんな感じだったような気がします。

和田明日香さん

和田:
やりたいことAとやりたいことBとあった時に、どちらか一つに決断して絞っていくわけではなく、どちらも同時に進めるというか、自分の中に存在させておいて、という時間が長くなってくると、自然と関連してくるというか。でも、その関連させることも、すごく難しいんじゃないかなと思うんですよね。全く別のものであればあるほど、「いったい自分はどっちがやりたいんだろう?」と迷ったりするんじゃないかなと思ったけど、そんな迷いも、お話からはあまり感じられませんでした。就職することよりも、音楽で稼げるというメドが立った上で、ご両親には就職せずに音楽でやっていきますと伝えられたそうです。

ショパンも考えていた音楽の新しい表現とは?

和田: さて、角野さんは、ショパン・コンクールを始め、クラシック音楽の分野での活躍が目覚ましいですが、一方で、ジャズやロック、幼少期から親しんできたゲーム音楽など、ジャンルの枠にとどまらず、縦横無尽に演奏活動をされています。いろんな音楽を聴いて育ってきた角野さんにとっては、そういった表現スタイルも、自然な流れだと言います。
角野: まあ僕に限らず、最近の世界に対してたぶん言えることは、あらゆる情報に簡単にアクセスできるようになったというところで、いろんな音楽を聴けるようになった。例えば、何百年前の時代なんかは、遠くの音楽にアクセスするというのは簡単なことじゃなかったから、国ごとにかなりカラーに違いが出たと思うんですが、あらゆる音楽に簡単にアクセスできるようになると、インプットの量が増えるので、純粋にその混ぜ合わせる人っていうのは増えてきますよね。で、僕もインターネットはずっと子どものころから使って育ってきた時代だから、ま、昔はストリーミングとかはなかったですけど、どこでも、自分の聴きたい音楽は自由に聴けるので、そこから興味を広げながら、いろんなことを知ることができるっていう。

もう一つは、クラシックはもう結構前からそうですが、どのジャンルも成立してから、かなり長い年月がたっているというところで、確立しきっているものから、何か今の時代に、新しい表現をしたいと思うとすると、それはやっぱりたぶん、いろんな他のものを混ぜ合わせることしかなくて、それは昔からそうだったわけですけど、クラシックだってジャズだって、それがだんだんそのジャンルとして確立していくと思うんですけど、その混ぜ合わせる音楽表現というものは、その中から、いずれスタンダードになるものもあるだろうし、過去でも、そうやって混ぜ合わされて作られたものが、今では一つのジャンルとして捉えられているといということなんじゃないでしょうかね。ショパンも、当時はもうほとんどピアノ曲しか書かないっていうのはかなり異質だったと思うし、ショパンにとっては、ポーランドというものが自分のアイデンティティでもあったから、それを取り入れることは、すごく自然なことだと思いますが、音楽に限らず、アートの世界もそうですけど、そういうふうにして、だんだんと変わっていくものですよね。

番組からのメッセージ

  •  ♪ アイドルはショパン、とおっしゃる角野さん。最近はウイスキーを傾けながら手に入れたばかりのステレオでオーケストラを聴くのがマイブームだそうです。ますますの活躍が期待される若手ピアニストです。
  •  ♪ 4月から毎週ゲストトークのエッセンスを「読むらじる」でご紹介しますので、どうぞお楽しみに!
  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    4~5月のテーマは「カルチャーショック」。皆さんの身の回りで見つけたカルチャーショックにまつわるエピソードをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

おたよりはこちらから


【放送】
2023/02/05 眠れない貴女へ 「サロン・ド・ビジュー」 角野隼斗さん、和田明日香さん

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