誰だって生きているだけで大変! だからこそ少しでも生きやすい社会をめざして

24/04/01まで

眠れない貴女へ

放送日:2024/03/24

#インタビュー#シゴト#SNS#お悩み

般若心経の現代語訳Rapで知られる若き僧侶の古溪光大(ふるたにこうだい)さんに、お寺の跡継ぎに生まれて反発していた10代のことや会社員時代のこと、そして一般企業に勤めて気づいた自分の使命と僧侶になることを決意した経緯など、興味深いお話を伺いました。

【出演者】
古溪:古溪光大さん(ゲスト)
村山:村山由佳さん(ご案内)

古溪光大さん

【古溪光大さんのプロフィール】
1994年、お寺の跡継ぎとして誕生するも、仏教の道には進まず、中央大学経済学部に進学し、卒業後は大手企業に入社。コロナ禍となり、動画サイトに普段の生活を投稿し始めるもバズらず、悶々としていた時に、自分の特徴である「お寺の家に生まれたこと」、趣味の「フリースタイル・ラップ」を活かして、「般若心経 現代語訳 Rapしてみた」という動画を作って投稿したところ、たちまち話題に。自身の使命に気付き、サラリーマン生活に3年半で終止符を打つ。2021年に仏道修行に入り、1年3か月後に帰山。「仏教をもっと身近に感じてもらいたい」との思いから、SNSで仏教や人生について語る動画を投稿したところ人気を呼び、現在は、SNSを駆使しながら、僧侶、ラッパー、起業家として、既存の枠にとらわれることなく活動している。

他人と比較したり評価されることを軸にして生き続けることに疑問を感じて

村山由佳さん

村山:
既存の僧侶のイメージにとらわれることなく、独自のスタイルで仏道を進み注目を集める古渓さんが、会社勤めを辞めて、仏門に入ったきっかけをうかがいました。

古渓:
元々は実家がお寺で、自分の父親・師匠も僧侶で、そこの跡継ぎとして生まれたので、生まれはお寺なんですけれども、お坊さんになるとこうお説法とか法話とかで、ありがたい話をするっていうイメージがあると思うんですけど、社会に出てないのに、世の中の苦しみとか、辛さとかわからないだろうなんていう青臭いことを20歳位の時に思いまして、すぐストレートでお坊さんの道に進むのではなくて、一度大学を卒業したタイミングで就職活動をして民間企業に勤めて、大体3年半くらい企業勤めをして、営業職をして、その時にいろいろ思うところがあり、葛藤して、スパッと退職をして、僧侶になったというか、実家の家業を継ぐというところを志した次第です。

当時の私は、他人との比較、要は誰々よりも自分が優れているとか、誰々が自分のことを認めてくれる、いわゆる“承認欲求”とか比較っていうものが自分の行動の原動力になっていて、自分が本当にこれをやりたいと思ってやってることでは正直なくて、これをやっていれば世間様から文句を言われないというか、「すごいね、ちゃんとしてるね」みたいなところばかり気にして生きていたんですね。
で、会社に入ると、いわゆる評価されるわけですね。例えば、半年に1回、A評価からE評価、成績とか勤務態度とか見られて、いわゆるグッドな評価をもらうっていうことが自分の行動の原泉、それを原動力に、3年間ぐらい働いてたんですけれども、ふと、まあ、仮に60歳まで働くとして、40年位あるとして、1年に2回評価されるとするならば、あと80セット、この誰かに自分を評価されることを軸に生きるのって、どうなんだろうって思って、何のために自分が生きてるんだろうみたいな問いを自分に投げかけるようになって、本を読みあさりまして、その中で仏教を学んでいる方が多くて、ああ、この考え方いいなって素直に思って、要は自分の師匠・親父がいう仏教の話は反発で全然刺さってこないんですけど、仏教の言葉はストーンと落ちてきて、“灯台下暗し”で「そういえば自分実家、寺だったわ」と思って、そこが葛藤からの一歩を踏み出す部分のシーンですね。

村山:
おっしゃる通りだと思います。選んだ仕事がたまたま自分に合っていて、それを頑張ることがやりがいになるのだったら、評価っていうのは良い意味で自分の目標にもなっていくんだろうと思うんですけれどね。この仕事をちゃんと人に届けようっていうことよりも、自分自身がその営業成績とかそういうことで評価されることの方が目標になっちゃって、それがまた自分にとってつらい仕事だったりしたら、確かに80セットはしんどいなぁとつくづく思いました。
でも古渓さん、親父が言う仏教の話は反発で全然刺さってこないんだけれどもっておっしゃるけれど、そういうことって私たちにもありますね。親の言う事は刺さらないとか、娘がいくら母親に言っても娘の言葉を聞いてくれないとか、いろんな行き違いがありますけれども、結局そうしてご自分で見つけた、それがたまたま灯台下暗しで、ご自分の実家に関連するそういうお仕事だったっていうのは、すごく胸に落ちるものがありました。

僧侶自身もさまざまな経験をして、いろんな方法で生きることの尊さを発信

村山:
仏門に入った古渓さんは、現在はSNS上で、仏教の教えやお経の解説、また人々の恋愛や人間関係、人生についての悩み相談を行ったり、仏教の教えをわかりやすいRapに乗せてパフォーマンスをしたり、時には、バーテンダーをしながら人々の悩み相談にのったりという、いわゆる従来のイメージの「お坊さん」とは違う、「現代のお坊さん」としてユニークな活動を展開していらっしゃいます。
古渓さんが、そのようなスタイルで活動をしている理由を伺いました。

古渓:
お釈迦様の悟りの中で一番大事にされている教えが「諸行無常」。基本的に世の中の物事っていうのは、常に移ろい変わる、人の心も出会いも別れも変化が必然で、そこにずっと留まり続けるものはないっていうのが「諸行無常」っていう一番大事な考え方、教えだったりするんですけれども、今の時代で言うと、スマートフォンがあって、SNSがあって、個人が発信とか受信とかがシームレスになっている中で、僕はお寺って、ちょっと“敷居が高い”というか、なんかちょっと緊張するみたいなイメージがあると思うんですけど、そこは変化していっていいと思うので、もっと仏教をこう身近に感じ取っていただきたいっていう中で、やっぱりSNSを使った発信っていうのは、今一番力を入れている部分にはなっていますね。
やっぱりお坊さんの話って難しくて長くて、おもしろくないってイメージがあると思うので、それを逆に、短く、楽しく、わかりやすく伝えられたら、よりなじみのない人にも「あ、そういう考え方を持って今日も仕事に行けばいいんだ」とか、「友人関係を結んでいけばいいんだ」みたいなことを意識してくれたらいいかなとは思っていますね。

よくお坊さんって「住職」っていうじゃないですか。住む職って書くんですけど、僕、その住職は、ちょっともじって、数字の十に職業の職で「十職」かなと思っていて、要はお坊さんって、どんなテーマでも話せなきゃいけないと思っているんですよ。恋愛のことも、友人関係のことも、ビジネスのことも。ということであれば、やっぱり僧侶自身がいろんな経験をしていないと、いろんな人の人生に、なかなか思いをはせるって難しいと思うので、なるべくいろんなことを経験して、自分がまだ触れてない感情にタッチしたい、触れたいっていうのはありますね。それがあるんで、いろんな方法で発信をしているっていうのは、そういう理由です。

村山:
昔は、辻説法なんていって、お坊さんが、道の往来の真ん中でお説法してくださるっていうのがありましたけど、それが今で言うところのSNSを使った発信に当たるのかもしれないですね。
お寺に来るのもオンラインで話を聞くのも、それからバーで話を聞くのも本質的なところでは同じで、ご自身の中では一貫性のある活動なんだっていうふうにお話しされていました。

番組からのメッセージ

  •  ♪ お寺の役割は基本的に「法事」「葬式」「日ごろの悩み相談」の3つがあり、儀式にとらわれがちだけれども、「日ごろの悩み相談」が最も重要な役割だと古溪さんは考えているそうです。学校、医療、宗教など人が生きていく上で深く関わる組織が「生老病死」をシームレスにつないでいって、だれもが心の安定を求められる円滑な社会になるような活動をこれからも続けていきたいとおっしゃっていました。
  •  ♪ この番組は、らじる★らじるの聴き逃しでお楽しみいただけます!
    放送後1週間お聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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24/04/01まで

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  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    3月のテ-マは「心にしみたひと言」です。お礼も言えないままだけれども、いつまでも心に残っている何気ないひと言など、「心にしみたひと言」にまつわるエピソ-ドをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

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【放送】
2024/03/24 「眠れない貴女へ」

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