一番しんどい30km付近で感じた、民族も宗教も文化も関係なく“みんな同じ人間である”ということ

24/03/04まで

眠れない貴女へ

放送日:2024/02/25

#インタビュー#ライフスタイル#スポーツ

友人のひと言からダイエットのためにマラソンを始めたという海外マラソンコレクターの鈴木ゆうりさんに、どうしてマラソンだったのか、マラソンの楽しさにはまったころのこと、海外マラソンに参加することの魅力など、興味深いお話を伺いました。

【出演者】
鈴木:鈴木ゆうりさん(ゲスト)
村山:村山由佳さん(ご案内)

鈴木ゆうりさん

【鈴木ゆうりさんのプロフィール】
1994年、愛知県生まれ。中学校、高校ともに美術部、大学でもピアノサークル所属といった文化系だったにもかかわらず、2015年春、ひょんなことからランニングを開始。その年の冬に旅行で訪れたハワイで、たまたま開催されたホノルルマラソンに挑戦し、以降、世界各地のフルマラソンに参加。2017年、大学を卒業して一度は就職するも、半年で会社を辞め、自由に世界各地のフルマラソンに参加できるライフスタイルを選択。2019年頃から“海外マラソンコレクター”を名乗り、会社勤めをしながら海外のマラソンに参加し、その魅力を発信している。現時点で、オーストラリア、南極以外の4大陸の43カ国で、フルマラソン53レースを走破。2023年末には、その経験をまとめたエッセイ集も出版。

ダイエットで始めたランニングから、ホノルルマラソンへ!

村山由佳さん

村山:
運動は苦手だったという鈴木さんがマラソンを始めたキッカケはどんなことだったのでしょう?

鈴木:
大学3年生の新歓期に、久しぶりに会った、体重が189kgの友だちに、「おまえ顔の周りに肉つきすぎて、口の動き鈍くね?」って言われて、すごく衝撃を受けて、久しぶりに体重計乗ったら、まあ確かにすごく太ってて、入学した時から、プラス20kgくらい増えてて、これはいかんってなって。で、ダイエットしようってことでランニングを始めたんですけど、食べるのはすごく好きで、食べるものの量は絶対に減らしたくないなってまず思って、その次に、じゃあジムとか行くかって思ったんですけど、運動をするのにお金払うのってなんかしゃくだなぁって思って。“あ、道走るのってタダじゃん”ってなって、でランニングしようって、もう軽く考えた結果です(笑)。
で、その年の冬にワイキキの方に行ったんですけど、たまたまホノルルマラソンが行われるっていうのを現地で知って、で一緒に行っていた友だちに、走ってみればって言われて、じゃあ走るかって、出場したのがきっかけです。

村山:
なんかお話を聞くとトントン拍子のように聞こえるんですけれど、普通その間にいろいろ私たち挫折がありますよね。走ろうかって思っても続かなかったり、ホノルルマラソン出ようかって言っても、完走できなかったりってありそうなものなのに。
それがきっかけで、その大会では一応完走はしたものの、後から女性の平均タイムをはるかに超えていたということを友だちに指摘されたんだそうです。「あんたおばちゃんにも負けてるよ」って。先ほどのあの189kgのお友だちにしても、なんにしてもお友だち、みんなすごいはっきりおっしゃいますね。きっと、それに対して、鈴木ゆうりさんが応えてくる性格だってことをご存じなんじゃないのかなって思うんだけれど、悔しく思った鈴木さんは、すぐに次の大会にエントリーします。

楽しい! マラソンってパーティーみたい!

村山:
その2つ目に参加した大会でマラソンの楽しさに目覚めたそうなのですが、どんなところが鈴木さんを魅了したのでしょうか?

鈴木:
ホノルルマラソンの次に出場したロサンゼルスマラソンがすごく楽しくて。っていうのが、コースも結構すごい良いコースで、スタート地点があのドジャースタジアム。で、そこから走っていって、チャイナタウンと、リトルトーキョーという日本街を抜けて、あのハリウッドのチャイニーズシアターの前を通って、で、ビバリーヒルズ通って、で、最後サンタモニカビーチでゴールっていう観光名所を走って行くコースで、まあそもそものコースも楽しくて。
で、応援の人がもうめっちゃ多くて、しかも、すごくテンションが高くて、もちろん赤の他人なんですけど、私は、まあその国の者でもないので、でもすごい応援してくれたりして、嬉しいし、なんか元気になる感じで。で、2~3kmごとにDJがずっと音楽かけていて、なんかパーティー会場みたいな感じにもなっていたりして。マラソン自体が、もうしんどそうに走ってるマラソンしか知らなかったんで、結構カルチャーショックですよね。「なんだこれは!」みたいになって、なんかすごい楽しいなってそこで思って、で、もっと違う大会も出たいっていう風に、そこから始まったのかなって思います。

村山:
ます初期の頃の経験ってホント大事ですね。そこで楽しいって思わなかったら、今の鈴木さんはいらっしゃらないかもしれないわけだから。やっぱり最初にこういうね、パーティーみたいなマラソンって、ちょっと想像がつかないくらいですけれども、そういう経験があったからこそのスタートだったわけですよね。

鈴木さんが獲得したメダル

アフリカの戦地の跡を走ってみて

村山:
その後、参加したマラソン大会で情報を得たり、インターネットで調べたりして世界各地のマラソン大会に出場するようになった鈴木さん。2019年にはメダルも多くたまってきたところで、“海外マラソンコレクター”と名乗って活動を発信するようになります。コロナ禍でブランクがあったにも関わらず、現在までに参加したレースは43か国53レース。たくさんのレースを完走されてきていますが、近年は、有名な大会ではなく、南米大陸の最南端パタゴニア(南極圏にちかい)や、キューバ、ブラジル、ケニア、イラク、シリアなど、あまり情報がない地域のレースにも参加し、貴重な体験を重ねていらっしゃいます。
その中でも、特に印象深かった東アフリカ、ルワンダでのエピソードを伺いました。

鈴木:
‟ルアマガナ・チャレンジレース“って名前だったんですけど、ルワンダとルアマガナって名前似ているし、首都だろうとかって思って行ったら、ルワンダの空港の名前がキガリ空港なんですよ。じゃ、ルアマガナはどこ? って調べたら、キガリからめっちゃ遠いところにあって、やっちまったなぁと思ったんですけど、とりあえずインターネットは欲しいっていうことで、空港のSIMカードショップでSIMカードを買って、たまたま隣の兄さんとちょっと話していたら、キガリのバスターミナルまで送るよって最初言われて。
最初、タクシーの運転手さんかな? って思って、あ、じゃあお願いしますって言ったら、まさかのタクシーの運転手さんじゃなくて、普通にただの良い人で、結局ルアマガナまで送ってくれたんですけど、まあ、そのドライブの道中で、ルワンダの内戦の話になって。私が生まれた年に勃発していて、その運転してくれたお兄さんが6歳の時にそれが起こって、いろんな人が亡くなって、コンクリートとかの道にもなっているけど、骨はたぶん掘ったら出てくるって言われて。結構衝撃だったんですよね。

で、ルアマガナに着いたんですけど、そうやって骨が埋まっているっていう風に言われている道をマラソンで走って、どういう感情でまず走ればいいのかっていう。ルアマガナっていう町自体も水道が通ってなくて、で当時、私が行ったところには、JICAの人たちが協力隊として水道作りに来ていて、こんなところに日本人? みたいな感じでビビられたんですけど、まあ、そういうふうに当たり前のものがないっていう場所で、レースに入れて。
最初コンクリートの道を走るんですけど、だんだんこうむき出しの赤土になっていて、岩がごつごつしている道なんですね。で、やっぱりその岩をガリッって踏んだ時に、骨だったらどうしようとかって思うんですよね。
住んでいる人たちが見に来るんですけど、アジア人を見たことあるって人もそんなにいないような街だったんで、パンダ見る感じで見られるんですよね、最初の目線が。で、その視線も初めてだったんですけど、30kmぐらい過ぎたところくらいから、折り返しのレースで一回走ったところを、もう一回走るって感じなんですけど、さっきパンダみたいに見ていた人たちが応援してくれるんですよ。子どもたちは一緒に走ってくれたりするんですけど、その体験は衝撃的っていうか、やっぱり忘れられない体験で、こうやって頑張って走っている人を応援しようっていうその気持ちって、変わらないんだなあっていうふうにも思ったり。

やっぱりそういう内戦とかで傷ついた国で走って、言われたのが、「今、ルワンダっていう国は国として落ち込んでしまったけど、今、必死に復興しようとしていて、みんなそれに向かって一生懸命生きていて、そういう時にわざわざ遠い国から走りに来たっていう人がいるっていうのは、すごく自分たちにとっての勇気になる」みたいな、「ありがとう」って言われて。もうそれを聞いた時に、そういう考えってあるんだなって思ったし、自分が勇気を与えることができるなんて考えたこともなかったんで、楽しく走ってるっていうだけだったので、本当に考えさせられるレースでしたね。

番組からのメッセージ

  •  ♪ 行ってみたいところや他の人があまり行っていない場所を見つけてはマラソン大会に参加している鈴木さん。とてもフットワークが軽いのは、「行動に移す前に考えようとすると、できないことから考え始めてしまって何もできなくなる」から、あまり深く考えずに“当たって砕けろ”の精神で挑むのだそうです。そんな鈴木さんだからこそ体験できたさまざまな地域でのできごとをこれからも発信していきたいとおっしゃっていました。
  •  ♪ この番組は、らじる★らじるの聴き逃しでお楽しみいただけます!
    放送後1週間お聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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24/03/04まで

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24/03/04まで

  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    2月のテ-マは「心にしみたひと言」です。お礼も言えないままだけれども、いつまでも心に残っている何気ないひと言など、「心にしみたひと言」にまつわるエピソ-ドをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

おたよりはこちらから


【放送】
2024/02/25 「眠れない貴女へ」

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