1000余年前の女性による日記文学は、今でいえばゴシップ雑誌!?

24/01/22まで

眠れない貴女へ

放送日:2024/01/14

#インタビュー#カルチャー#文学

日本の古典を読み解き、翻訳だけではなくわかりやすく解説しているイタリア出身のイザベラ・ディオニシオさんに、日本の文化や日本の文学に興味を持ったきっかけ、日本文学の中でも古典のどんなところに魅力を感じたのか、その特徴など、興味深いお話を伺いました。

【出演者】
イザベラ:イザベラ・ディオニシオさん(ゲスト)
村山:村山由佳さん(ご案内)

イザベラ・ディオニシオさん

【イザベラ・ディオニシオさんのプロフィール】
1980年、イタリア生まれ。イタリアの大学で日本文学を学び、もっと知識を深めたいと2005年に来日。日本の大学院で日本文学を専攻し、中でも古典作品を独自に研究。著書やインターネットの連載、NHKラジオ「マイあさ!」の「イザベラの古典さんぽ」のコーナーなどで、古典のおもしろさをユニークな切り口で伝えている。

「神話好き」が高じて「古典好き」に

村山由佳さん

村山:
ご著書、私も持ってます! おもしろいの、本当に! 藤原道綱母に「みっちゃん」っていうあだ名を付けて、当時は藤原道綱母っていうだけで個人の名前は残ってないものだから、それに「みっちゃん」っていうあだ名を付けて解説していらしたり、あと、紫式部の「紫式部日記」を「給湯室ガールズトークの元祖」とキャッチコピーをつけたりと、ほんとに親しみやすくかみ砕いてくださるんですよね。
もう私は物書きといえども古典が本当に苦手で。皆さんの中にも古典はハードルが高いなって思う方いらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、それがグーンと低くなるのは、イザベラさんの魔法ですよね。まずは、イザベラさんが日本の古典文学に興味を持ったきっかけを伺いました。

イザベラ:
子どもの時から、読み書きができるようになってから、物語に対してすごく興味があって。だからイタリアにいるとやっぱり昔のローマ時代の神話とか古代ギリシャの神話とか、そういったものも結構興味があって、昔の物語は特に好きだったんですね、小さい時から。
そのあとは、ずっといろんな文学の勉強をしたりとか、現代のものも読んだりする中で、イタリアの大学に通ってた時に、専攻は日本文化だったんですけれども、その中で文学を勉強するいろんな講義があって、古典がひとつの必須科目になっていたので、大学の時に読んだりとか、ちょっと時代背景を勉強したりする機会があったんですね。そこが最初のきっかけなんですね。最初はただ勉強しないといけないというような状況で古典文学を読み始めたんですけれども、そのあとは試験が終わってからも興味があったので、いろいろ読んだりとか、もっと深く勉強したり、歴史の背景とか文化的なところとかそういったものをちょっと深掘りしていくような感じですね。

村山:
日本で、日本の大学に通って古典を勉強しても、深掘りをしようって思う人がそんなに多いわけじゃきっとないのに比べて、なんてうれしいんでしょうって、そんなところだけ喜んじゃいますけどね。イタリアの大学で日本の文学が、こういう風に学ばれているっていうこと自体がうれしい気持ちがしましたね。

「わかる!」と思える共感ポイントが古典のおもしろさ

村山:
イザベラさんが、イタリアの大学で日本文化を専攻したきっかけは、イタリア以外の言語を学んでみたいと思ったなかで、何気なく「日本語がおもしろそうだな」と思ったからなんだそうです。「深い理由はなくて、たまたま日本語だった」っていう風にもおっしゃってましたけど、そのたまたまの出会いから、日本の古典作品に夢中になっていったイザベラさん。どんなところがおもしろいと感じたんでしょうか。

イザベラ:
現代文学に関しては本当にちょっと違う視点だったりとか、あとは、知らない世界が描かれていたので、そこはすごくおもしろいと思ったり。その反面、すごく共感できる部分があったりしていたので、その両面があったんですね。ちょっとエキゾチックに感じられる部分と、そのエキゾチックな背景の中ですごく刺さるところがあったりっていうのは結構あったと思うんですけれども。
古典文学に関しては似たような感じで、なおさら違うじゃないですか、かなり1000年前、しかも日本なので、自分が生まれ育った環境とまるっきり書いてあるものが違うんですが、生活の習慣だったりとか、文化的なところは全部違うんですけれども、その全部違う中で一文だけとか、ひとつのエピソードだけでもいいんですが、すごく刺さる部分があったり、その感情移入ができるようなところを発見できたので、そこはやっぱりもっと読みたいと思わせてくれるきっかけにはなったと思います。

あとは、私は結構古典の中ですべてに関してすごく詳しいわけではないんですけれども、特に日記文学が結構好きなんですね。で、そういった日記を読むと、かなりプライベートなことが書かれたりしていて、恋愛についてもよく書かれてるんですよね。そこは私も若かったので、私もそういういろいろと目覚める時期だったから、そういった嫉妬とか、あとはそういうほかの女性に対する劣等感だったりとか、そういったようないろんな複雑な感情、ポジティブな面だけではなくて、まあちょっとあんまり人に話したくないような部分もそういった日記の中で結構出たりとかしてるんですね。それを読んだ時に、ちょうどまあ悩みとか、いろんなことが私の中にもあったんでしょうけれども、すごく「あっ、わかる!」と思ったり、そういった部分がかなりおもしろいと思ったんですね。

番組からのメッセージ

  •  ♪ 古い書物で女性が書いたものは世界的にも珍しく、女性ならではの視点や何気ない生活の描き方がとても興味深く、知らない世界を垣間見る喜びと共感できる部分の共存が魅力というイザベラさん。まずは古典の現代語訳を読んで興味をかきたてられると原文を確認したくなるそうで、古文を読み解いていくのは探偵のような作業で楽しい、とおっしゃっていました。
  •  ♪ この番組は、らじる★らじるの聴き逃しでお楽しみいただけます!
    放送後1週間お聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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24/01/22まで

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24/01/22まで

  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    1月のテーマは「地元自慢」です。年末年始にふるさとへの帰省など旅をされた方も多いのではないでしょうか。今住んでいる場所はもちろん、いろんな好きな地域の「地元自慢」、周囲の人から聞いた話でもOKですので、「地元自慢」のエピソードをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

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【放送】
2024/01/14 「眠れない貴女へ」

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