楽譜を通して300年、400年前の会ったこともない人がよみがえるクラシックってすごい!

23/12/04まで

眠れない貴女へ

放送日:2023/11/26

#インタビュー#音楽#クラシック

サクソフォーン奏者の上野耕平さんに、サクソフォーンやクラシックに出会った少年時代にどんな子どもだったのか、サクソフォーンを勧めてくれた先生のこと、そして上野さんにとってのクラシックとの関わりあい方や魅力など、興味深いお話を伺いました。

【出演者】
上野:上野耕平さん(ゲスト)
村山:村山由佳さん(ご案内)

上野耕平さん

【上野耕平さんのプロフィール】
1992年、茨城県出身。8歳から吹奏楽部でサクソフォーンを始め、東京藝術大学器楽科に進学。2011年、東京藝術大学の1年生有志で吹奏楽団「ぱんだウインドオーケストラ」創立。コンサートマスターを務める。
2013年、「The Rev Saxophone Quartet」を結成。今年で結成10周年を迎えた。2014年、自己名義でアルバムデビュー。国内外の数々のコンクールなどで優秀な成績を収めている。NHK-FMでは、現在「×(かける)クラシック」のMCを務めている。

×(かける)クラシック

NHK-FM
毎週日曜 午後2時ほか

詳しくはこちら

運命づけられたサクソフォーンとの出逢い

村山由佳さん

村山:
まずは、サクソフォーンとの出会いについて伺いました。

上野:
小学校1年生から2年生に上がる時ですね、ちょうど家の引越しのタイミングで、要は小学校2年生の4月の始業式は転校生としてその小学校に行ったわけですけど、その始業式で吹奏楽部が演奏してたんですね。公立の小学校なんですけど 小学校に吹奏楽部があって、それを見た時に“入りたい!”とものすごく思って、それで小学校2年の9月からだったかなぁ、入部ができるってことで、それで入部したのが音楽との出会いですね。

実はね、目立ちたがり屋の少年でしたので、第1希望はトランペットだったんですね。で、第2希望がサクソフォーン。それはまあ、音が美しいからとか、そういうのは、まだ当時はわからなかったので、見た目がかっこいいとかそんなような理由でね、第2希望サクソフォーンにしたんですけど、顧問の先生が、特にトランペットがちょっと人数が多くて、サックスに行ってくれる? っていう感じではなく、「あなたはアルトサックス。」っていう、その一声でアルトサックスを吹くことになったんですが、当時、その理由もおっしゃらなかったんですね。で、数年前に、その先生にお会いした時に、そういえばあの時なぜ僕をサクソフォーンにしたんですか? っていうふうに聞いたら、「上野くんのキャラクターや生活態度を見ていたら、サックスだったでしょう。」とおっしゃって、なんか妙に納得してしまった自分がいるという感じですね。

村山:
やっぱり先生との出会いって大事なんですね。上野さんの持ち味みたいなもの。その時、まだまだ少年で、今とは違ったかもしれないのに、“上野くんはサクソフォーンでしょう”っておっしゃるっていうのは、何をご覧になったのかなぁ。すごく興味がありますけど、今、上野さんがおっしゃった中でね、サクソフォーンとの出会いについて伺っているんだけれども、言葉としては、そこに入部したのが音楽との出会いですねっておっしゃったのが印象的でした。上野さんにとっては、サクソフォーン=音楽だったんですね、音楽との出会いだったんですね。

本物に触れて開眼したクラシック音楽の魅力

村山:
先見の明がある先生のおかげで、小学生で早くも運命的な楽器との出会いをはたした上野さんですが、サクソフォーンで生きていこうと思ったそのきっかけを伺いました。

上野:
いろんなきっかけがあるわけですけども、最終的に決めたのは、小学校6年生のころだったかなと思います。のちに師匠になる須川展也先生のリサイタルを地元で聞いたのが小学校4年生。で、そこで初めて本物に触れて、こんな音が出るのかと、まあ驚きの連続でしたね。そのあたりからやっぱり上の世界を知ると、やっぱりうまくなる意欲が湧くわけですよね。で、練習の仕方もやっぱ当然変わっていきましたし。
それで、ちょうどその吹奏楽部でオーケストラの曲をやる機会があって、じゃあオーケストラを聴かなきゃなってことで聴き始めたら、まあクラシックにハマってしまいまして…。もう小学校5年生、6年生のあたりは、図書館に行ってCDを借りては聴いてっていうのをくり返しましたね。まあ、そんなこともあって、もうすっかり小学校6年生のころには、クラシックのサクソフォーン奏者になるというのを決めていましたね。それまでっていうのは、電車の運転手になりたいとか、F1ドライバーになりたいとか、プロ野球選手になりたいとか思っていた時期も、小学校の子供の時代はあったんですけど、いざ決めてからは、それ以外の選択肢を、もうその後は考えなかったですね。

村山:
須川展也さんは、この番組のゲストにもいらしてくださったことありましたけど、本当に美しい音色を奏でられますもんね。私もサクソフォーンをかじったことがあるんです、独学で。だけど、もうなんだろう、違う楽器かっていうくらい、こんな音が出るのかって思いますもの。小学生でそれに触れて、でもそこでもう将来を決めてしまうっていうのが、すごい意志の人だな~、上野さん。

楽譜を通して歴史とつながるクラシック音楽のだいご味

村山:
どんなに他の友達がはやりの音楽を聴いていても、目もくれずにクラシック音楽に夢中になった少年時代から、ブレずにこれまでサクソフォーンをやり続けているのはどうしてなんでしょうか?

上野:
クラシック音楽というこの文化の魅力でしょうね。やればやるほど知らないことが出てきて、で、知れば知るほどおもしろくなっていくって、この繰り返し。これは一生続くんだろうなぁという。やりきったって思えることって果たしてあるのかなぁ? なんていうふうに最近思いますね。
だから周りのみんなが話していることは、ほとんどわからなかったですね、子ども時代は。で、なんなら逆に、僕が普段親しんでいる、おもしろいと思うクラシックを、そいつらに聴かせてやろうくらいのテンションで生きてましたから、全然クラシック聴いたこともないような友達が家に遊びに来たときには、プレゼンしてですね、ここがこうおもしろいでしょとか、ここがこうすごいでしょう、なんてね。なんかそんなような子ども時代だったんですけど。

このクラシックのおもしろさっていうのは、まあ、今になって思えば、譜面というものが、唯一の頼りなわけですけど、楽譜ですね。楽譜を通して、300年前とか400年前の会ったこともない人が、よみがえるんですね。これ本当にすごい文化だと思うんです。本当にいろんなことがうまくいって、成功したと言えるような音楽に出会うと、まさにその作曲家が自分の隣にいるかのような、そんな錯覚を覚える。本当に不思議な魅力を持った文化だと思いますね。
だから、まあ、今の生活とはもう全然違う生活を営んでいた方たちなわけじゃないですか。住んでいる土地も違えば、もう時代が違うっていうのは、やはり大きいですし、食べてるものも違うだろうし。そのあたりは、やはり推測、妄想、想像しながら、その人の人生をよみがえらせていくっていったらいいのかな? 生きざまをこう感じながらね。その時にやはり譜面というものは頼りになるわけですけど、だから楽譜っていうのは、これはおもしろいですね。そういうふうに見ていくと。

番組からのメッセージ

  •  ♪ 「×クラシック」でも名MCぶりを発揮している上野さんは、もともとラジオが大好きで自分ひとりに語ってくれているような密な感覚がとても面白いと感じているそう。そして、ラジオの仕事も鉄道も楽しいけれども、比較的新しい楽器であるサクソフォーンの歴史を作っていきたいと熱く語っていらっしゃいました。
  •  ♪ この番組は、らじる★らじるの聴き逃しでお楽しみいただけます!
    放送後1週間お聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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23/12/04まで

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23/12/04まで

  •  ♪ 番組では皆さんのおたよりをお待ちしています。
    12月のテ-マは「地元自慢」です。
    年末年始はふるさとへの帰省に限らず旅をすることが増えますね。今住んでいる場所はもちろん、いろんな好きな地域の「地元自慢」、周囲の人から聞いた話でもOKですので、「地元自慢」のエピソ-ドをリクエスト曲とともにお寄せください。

眠れない貴女へ

NHK-FM 毎週日曜 午後11時30分

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【放送】
2023/11/26 「眠れない貴女へ」

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