【国語辞典サーフィン】何かが気にかかってどうしようもない状態

24/04/20まで

国語辞典サーフィン

放送日:2024/04/13

#学び#勉強#お笑い

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突然ですが、あなたはいつもどんな服を着ていますか?
会社に行く日はビシッとスーツ。運動するならスポーツウエア。デートに行くならワンピース? ライフスタイルや年齢、職業によっても選ぶ服は変わってきますよね。
では、国語辞典はどうでしょう? 同じ辞書をずっと使っていませんか? 国語辞典なんてどれも同じ! と思ってはいないでしょうか? 実は国語辞典には、それぞれ編者のこだわり、編集方針があって、一つ一つ違うんです。また、言葉の意味以外にもたくさんの情報が詰め込まれていて、さまざまな楽しみ方があるのです。
さあ、国語辞典を開いて、広くて深い言葉の海、言葉の波を乗りこなしましょう!

【出演者】
タツオ:サンキュータツオさん
柘植:柘植恵水アナウンサー


タツオ:
ごきげんよう、国語辞典芸人のサンキュータツオです。

柘植:
アナウンサーの柘植恵水です。

タツオ:
本日も国語辞典を開いて言葉の波を楽しみます。15分間のマニアックな国語辞典トークにおつきあいください。
恒例の街頭インタビューからです。街行く人たちにこんな質問を投げかけてみました。もしもあなたが国語辞典ならこの言葉、何と説明しますか? みなさんが何について説明しているのか想像しながらお聴きください。

  • 何かが気にかかってどうしようもない状態。
  • 不安なことが気になってどうしようもないこと。
  • 心がざわざわしたり、不安に思ったりすること。
  • 不安な気持ちを持つ。ドキドキする。うまくいかないんじゃないのかと悩む。
  • 未来のことを不安に思うこと。
  • 心が不安だったり、物事が不安定だったり、あとに起こるのがわからない不安な感じ。

タツオ:
いろいろな世代の方が答えてくれましたが、正解は「心配」です。柘植さんは最近なにか心配なことありますか?

柘植:
自分の記憶力、物覚え、忘れ物・・・(笑)。

タツオ:
それよくわかります! 自分のこと信用してないもんね(笑)。
では、「記憶力が心配」「記憶力が不安」はどう使い分けます?

柘植:
心配は、不安まで深刻じゃない“プチ気がかり”かな?

タツオ:
インタビューの答えの中で「不安」という言葉がありましたが、国語辞典となると「心配」の近くに「不安」があるのは誰しもわかっているので、なるべく「不安」という言葉を使わずに説明することがポイントなんです。ようするに「心配」と「不安」は何が違うのか? それを知りたくて国語辞典を引くわけじゃないですか? だからそこに「不安」という言葉で説明してしまうと、言いかえだけで違いがよくわからないことになります。国語辞典れい明期は、「心配」を引けば「不安」、「不安」を引けば「心配」と言いかえが多かったのですが、最近の国語辞典は言葉の微妙な違いをがんばって説明しようとしています。

明鏡国語辞典 第三版では、①現在の状態、これから先のことなどが気がかりで、心を悩ませること。「親に心配をかける(=親の心を煩わせる)」「僕のことなら心配はいらない」「津波の心配はない(=恐れはない)」「この有り様では将来が心配だ(=思いやられる)」「心配性(しょう)の人」「心配の種」と豊富な用例で、「不安」という言葉を使わずに「心配」を説明しようとしています。また、②の意味では古風な使われ方で、心にかけて世話をすること。配慮。「就職の心配をしてもらう」という用例が入っています。この心配は「面接行った? エントリーシートは出した?」というのではなく、「〇〇会社の面接に行ってこい! もう話はつけてあるから」という、心にかけて世話をすることが、昔は使われていたようです。心配は「心配り」を音読してできた言葉みたいですね。

岩波国語辞典 第八版では、①思いわずらうこと。気がかり。「雨が心配だ」「心配事(ごと)」「心配性(しょう)」と書いてあります。柘植さんが言った“プチ気がかり”は言い得て妙で、不安より軽い感じですね。②の意味では、うまく運ぶように気を使って手配すること。「特急券の購入を心配する」。

柘植:
特急券を買えたかという心配とは?

タツオ:
我々が思う「交通系ICカードで本当に買えているのか?」とか「あれ、お財布に入れたっけ?」ではないんです。昔は特急券を手配した状態を「心配する」と言っていたんです。この岩波国語辞典には関連語句がたくさん紹介されています。例えば、不安・憂慮・焦燥・憂患・杞憂(きゆう)・憂い・危惧・懸念(けねん)・恐れ・気掛かり・心掛かり・胸騒ぎ・心労・心痛・痛心・寒心・気苦労・取り越し苦労・気骨(きぼね)・気遣い・心遣い・屈託・心細い・心もとない・案じる。

柘植:
関連語がたくさんありますね。

タツオ:
近くにある言葉がたくさんあるから、昔から人は「心配・不安」が絶えないんです。そのつど、何に対して恐れを抱いているのか? 気がかりなのか? それによって言葉を使い分けてきているんですね。例えば、ベネッセ 表現読解国語辞典で「心配」を引くと、チャート図が載っています。みなさんも新年度が始まって、不安なことや心配ごともあるかもしれませんが、言葉の違いを意識して使ってみてください。

おたより紹介

以前、この番組で「とろみ感」のお話がありましたが、最近、ビジネスの場で「スケジュール感」「費用感」とおっしゃる方が増えていて、私はどうもこの「〇〇感」の使い方が気になるのですが、私だけでしょうか?(愛知県・ひろりんさん)

タツオ:
「感」は“造語成分”といって、いろいろな言葉にくっついて新しい言葉を作ることができるんです。明鏡国語辞典で「感」を引きますと、近年用法を広げて、様態を表す副詞にも付く。「もちもち感・ゆったり感・すっきり感」という用例が紹介されています。自分にはサイズが大きい場合は「ゆったり」だけど、腕とかちょっと動きやすいときは「ゆったり感」なんです。

柘植:
「ゆったり感」は、50代以上の洋服には欠かせないポイントですよ(笑)。

タツオ:
それは「ゆったり」を着ようよ(笑)。

柘植:
がんばって「ゆったり感」でいきたいんです!(笑)。

タツオ:
でも、ビジネスで「スケジュール感」「費用感」「予算感」の場合は、「大まかに・ざっくりと」いうイメージなんですね。この「感」という造語成分は、言葉の微妙な違いを表現しているすごく便利な言葉なんです。

柘植:
これは日本語ならではですか?

タツオ:
同じようなやつで「的」「性」があります。最近だと「〇〇味(み)」ですね。「最近わたし、柘植(つげ)味が出てきた」だと?

柘植:
忘れっぽくて記憶力があぶないイメージですね(笑)。

タツオ:
まあ、おもしろがっていただいたほうが楽しいと思いますね。


タツオ:
国語辞典サーフィンいかがでしたでしょうか? 4月に入ってまだ「お悩み相談」やってないですね。

柘植:
新生活が始まって心配だったり、不安だったりする方多いと思います。

タツオ:
ただ、ちゃんとは答えないので、そこはお遊び企画として覚悟してくださいね。それではまた、国語辞典を開いて、言葉の波を一緒に楽しんでいきましょう。

柘植:
お相手は柘植恵水と。

タツオ:
サンキュータツオでした。ごきげんよう。

国語辞典サーフィン

ラジオ第1
毎週土曜 午後0時45分

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【放送】
2024/04/13 「国語辞典サーフィン」

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