突然ですが、もしも車に乗るなら、あなたはどんな車を選びますか? 街乗りが中心なら、コンパクトカー。アウトドアやレジャーを楽しむならワゴンやS U V。子育て世代はファミリーカー。ライフスタイルや用途によって選ぶ車は変わってきますよね。
では、国語辞典はどうでしょう? 同じ辞書をずっと使っていませんか? 国語辞典なんてどれも同じ! と思ってはいないでしょうか?
実は国語辞典には、それぞれ編者のこだわり、編集方針があって、一つ一つ違うんです。また、言葉の意味以外にもたくさんの情報が詰め込まれていて、さまざまな楽しみ方があるのです。さあ、国語辞典を開いて、広くて深―い言葉の海、言葉の波を乗りこなしましょう!
【出演者】
タツオ:サンキュータツオさん
柘植:柘植恵水アナウンサー
タツオ:
ごきげんよう、漫才師で学者のサンキュータツオです。
柘植:
アナウンサーの柘植恵水です。2024年最初の放送です。2023年のタツオさんは、山形と東京を行ったり来たりの生活をおくっていらっしゃいましたね。
タツオ:
昨年から山形にある東北芸術工科大学で教えていますが、柘植さんは山形に行ったことありますか?
柘植:
ないんですよ。サクランボがおいしいときに行きたいですね。冬の方がいいですか?
タツオ:
蔵王とか樹氷とかいいですよ。このあいだ、農家の方がこの放送を聴いてくださっていて、ありがてぇな~って思いました。
柘植:
今年もよろしくお願いします。
タツオ:
きょうも国語辞典を開いて言葉の波を楽しみましょう。15分間マニアックな国語辞典トークにおつきあいください。
恒例の街頭インタビューからスタートです。街行く人たちにこんな質問を投げかけてみました。もしもあなたが国語辞典ならこの言葉、何と説明しますか?
みなさんが何について説明しているのか、想像しながらお聴きください。
- 羽が生えたトカゲ。
- 緑でうろこがある。
- 空を飛んでいる空想の生き物。
- 白っぽいヒゲの生えたヘビ。
- ツノがあって空をふわっと飛んでいる感じ。
- ゲームとかで、カタチはヘビみたいにフニャフニャで、たまに空を飛んでいる。
タツオ:
街行く人が説明していた言葉は竜(ドラゴン)でした。
柘植:
今年の干支(えと)の辰(たつ)ですね。
タツオ:
私は辰年の男なので“タツオ”なんですよ。年男なんです。24歳か36歳かな?
柘植:
どっちかな(笑)。
タツオ:
十二支の中で唯一想像上の生き物が辰ですね。竜とか鬼とか研究している人って結構いるんですよ。イメージがあるにもかかわらず実態がない生き物じゃないですか?
柘植:
たしかにそうですね。
タツオ:
これをどう説明するのかが国語辞典としては結構キモなんですね。竜といっても、東洋の竜と西洋の竜(ドラゴン)がいますよね。
柘植:
ドラゴンというとまた風情が違いますよね。
タツオ:
国語辞典さんたちはどう説明しているのでしょうか。
岩波国語辞典 第八版には、へびに似た体に、四本の足、二本の角とひげを持つ、想像上の動物。池・沼・海の中に住み、空にのぼっては雲をおこし雨をふらせるという。中国や日本ではめでたい動物とする。
柘植:
具体的ですね。
タツオ:
②の意味では、特別すぐれている。竜のような。③の意味で、天子。または天子に関する物事についていう。優秀な統治者、皇帝みたいな存在ですね。
柘植:
相対的にいいイメージですね。
タツオ:
三省堂国語辞典 第八版では、空をとぶ、想像上の巨大な動物。全体はヘビに似てうろこでおおわれ、二本のつのと四本の足を持つ。雲をおこし、雨を降らせるという。たつ。そして、ドラゴンと類語で書いてあります。
新明解国語辞典 第八版では、想像上の動物。水中にすみ、形は大きなトカゲに似て、胴体が長く二つの角とひげと四本の足がある。自由に飛行して雲を起こし、雨を降らすという。たつ。「りょう」とも。かぞえ方⇒一匹、一頭。
柘植:
竜のかぞえ方は考えたことなかったです。
タツオ:
新明解はかぞえ方を載せてくれているんですよ。それから胴体が長いというのがポイントですね。
明鏡国語辞典 第三版には、想像上の動物。体は大蛇に似て、鱗(うろこ)におおわれ、四本の足、二本の角、耳、ひげをもつ。▷中国では、麒麟(きりん)・鳳凰(ほうおう)・亀(かめ)とともにめでたい動物とされ、天子になぞられる。と書いてあります。
国語辞典さんの意見をざっくりまとめますと、想像上の生き物で、ヘビ(トカゲ)みたいで、角とひげと足がある。明鏡国語辞典には耳もありましたね。で、巨大で胴体が長い。空を飛ぶ。めでたい。雨を降らすことができる。というのが竜のイメージですね。
柘植:
雨を降らせるって意外と知らなかったです。
タツオ:
ドラゴンという言葉、三省堂や新明解では西洋の竜と書かれています。では、東洋と西洋の竜はどう違うのでしょうか?
明鏡国語辞典 第三版には、ヨーロッパの架空の怪獣。翼と爪をもつ巨大な爬虫(はちゅう)類で、口から火を吐くとされる。竜。飛竜。と少し詳しく書いてあります。
柘植:
ドラゴンには、映画やゲームの世界観がありますね。
タツオ:
街の人も言っていましたが、羽のイメージも西洋の竜ですよね。今年は辰年ということで、きょうは竜とドラゴンでサーフィンしました。