【国語辞典サーフィン】やばいより もっとやばい感じ

23/11/11まで

国語辞典サーフィン

放送日:2023/11/04

#学び#勉強#お笑い

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突然ですが、あなたはふだんどんなカバンを使っていますか? 買い物に行くならエコバッグ? 自転車に乗る日はリュックサック? 国内旅行はボストンバッグ? 海外だったらスーツケース? ライフスタイルや用途によって選ぶバッグは変わってきますよね。
では、国語辞典はどうでしょう? 同じ辞書をずっと使っていませんか? 国語辞典なんてどれも同じ! と思ってはいないでしょうか? 実は国語辞典には、それぞれ編者のこだわり、編集方針があって、一つ一つ違うんです。また、言葉の意味以外にもたくさんの情報が詰め込まれていて、さまざまな楽しみ方があるのです。
さあ、国語辞典を開いて、広くて深~い言葉の海、言葉の波を乗りこなしましょう!

【出演者】
タツオ:サンキュータツオさん
柘植:柘植恵水アナウンサー


タツオ:
ごきげんよう。サンキュータツオです。

柘植:
アナウンサーの柘植恵水です。

タツオ:
本日も国語辞典を開いて言葉の波を楽しみましょう。15分間おつきあいください。さあ、恒例の街頭インタビューからスタートです。街行く人たちにこんな質問を投げかけてみました。
もしもあなたが国語辞典ならこの言葉、何と説明しますか? みなさんがどの言葉について説明しているのか、今回、ちょっと難しいかもしれませんが、想像しながらお聴きください。

  • すごい。おもしろい。ひどい。
  • すごいの言い換え。すごいよりも上の意味で使う。
  • やばい。めっちゃすごい。びっくりしたとき。
  • すごいうれしかったとき、やばいに近い感じで使う。
  • やばいよりもかっこよくノリが出て、勢いが出る感じ。
  • ふつうとは違うやばさがある。突拍子もないコトをしちゃう感じ。
  • やばいよりもっとやばい感じ。

タツオ:
みなさん声が若かったですね。今回は渋谷でインタビューしたそうです。

柘植:
ということは、若い人がよく使う言葉ですか?

タツオ:
意外と昔からある言葉なんですけど、この質問は、番組にいただいたおハガキがきっかけだったんです。

最近よく聞く言葉の一つに「えぐい」があります。もちろん、昔からあり、元々はのどに刺さるような不快な味や感覚という意味。生の山菜を食べたような味が「えぐい」の典型的な例えかもしれません、しかし、最近は「ひどい」、「厳し過ぎる」という意味で使われることが多い。例えば「大谷のスイーパーがえぐい」「このロケ、えぐすぎる」など。本来は「ひどい」とか「厳しい」という使い方はしなかったはずですが、いつ頃からこの意味で使われ始めたのでしょうか。(岩手県・若年寄ゑびすさん)

タツオ:
ハガキの内容と街の声を照らし合わせて、皆さんの「えぐい」というとらえ方、何か違いましたか? 確かに「やばいより上」という、街の声はけっこうポジティブですね。

柘植:
そうですね。めっちゃすごい! っておっしゃってましたね。

タツオ:
でも、この方によると「ひどい」「厳しい」と書いてあるので、どっちなんでしょう? でも、インタビューの最初の人は「すごい」「おもしろい」「ひどい」って言っていたんですよ。程度は「甚だしい」ということだと思うんですよ。

柘植:
「えぐっ!」と言ったりしますもんね。

タツオ:
柘植さんは使います?

柘植:
山菜を食べたときの「えぐみ」は使いますが、「えぐい」は使わないですね(笑)。

タツオ:
国語辞書さんたちは、「えぐい」をどう説明しているのか見てみましょう。新選国語辞典 第十版では、①のどがさされるような味だ。えがらっぽい。これはどの辞書にも載っていますが、②の意味で、態度が冷たくきつい。あくどい。度をこしている。と書いてあります。ちょっとマイナスイメージですね。

柘植:
そうですね。

タツオ:
新明解国語辞典 第八版では、〔人の言動が残酷な場合にも用いられる。例、「えぐいやつ」〕と書かれています。

柘植:
ちょっとマイナスな感じですね。

タツオ:
岩波国語辞典 第八版の②の意味では、(不快なほど)どぎつい。「やり方がえぐい」。と書いてあります。三省堂国語辞典の②の意味では、あくどく思いやりがない。ひどい。③は、どぎつく、気味が悪くなるようすだ。「えぐいシーン」。④は、すごい。すばらしい。「えぐいバッティング」。そして、③④は、1980年代からの用法。と書いてあるんです。僕は、バブル期の人が、最初に「えぐッ」とか「えぐい」とか言っていたと記憶してるんです。最近だと「えぐい」とか使いますけど、「やばい」が本当に口癖になっちゃって、なんでも「やばい」になっちゃうから、ちょっと意味がなくなってきているんですよ。「やばい、やばい」って何でも言っているから、本当に程度がすごい「やばい」より、上を作らざるをえなくなって、「えぐい」ってなったんじゃないかと思うんです。

柘植:
「やばい」のさらに上をいく言葉が「えぐい」なんですね。

タツオ:
マイナスイメージだったのがプラスの意味にもなるのって、「やばい」も同じ歴史だったじゃないですか。

柘植:
以前、取り上げましたね。

タツオ:
今では「程度が甚だしい」ということを指す言葉になっているので、さらに同じような進化を遂げて、「やばい」よりも上というのが「えぐい」になってきているのかと思います。

柘植:
ちょっとどこかで使ってみたいです。

タツオ:
柘植さん使ってみてください。

柘植:
タツオさん、きょうの国語辞典サーフィンも、えぐい解説で、やばかったです!

タツオ:
えぐいとやばいの両刀使いですね(笑)。

柘植:
結果ほめてますよね?

タツオ:
そうですね。もはや悪い意味でもない感じがありますよね。

メッセージ紹介①

以前の放送で、相手の“配偶者をどう呼ぶか問題”がありましたね。私はプライベートでは「夫さん」「妻さん」を実践しています。仕事は葬儀の司会です。親族代表挨拶をするのが故人の配偶者の場合、紹介するときには「故人様のお連れ合いの○○様より、お礼のご挨拶を」と言ったり、その方が喪主であれば、故人との関係性を省いて「喪主の○○様」と言っています。「故人様のご主人」「故人様の奥様」という紹介には抵抗があるためです。とはいえ、お連れ合いって何? と聞かれたこともありました。お連れ合いっていうのは定番ではないですか?(岡山県・マコちゃん)

柘植:
その他にもたくさん「お連れ合い」はどうだろう? とメールをいただきました。

タツオ:
たしかに「連れ合い」は、ちょっと古風な言い方だと思いますね。自分のパートナーから「連れです」って言われるのはどうですか?

柘植:
ちょっと慣れてないですね。

タツオ:
ちょっと所有感がすごいですね。「相方」というと関西の文化、漫才の「相方」みたいな感じもありますね。

柘植:
世代とか育った地域、なじみがあるかないかでも違うかもしれませんね。

タツオ:
この方はいろいろ悩んだ結果、「夫さん」「妻さん」を実践している。選択肢としては、なじまなくても、これを実践し続ける人を増やすしかないんですよ。「家内」と言うと「家の中にいる人」になっちゃうし、「配偶者さん」もなじまないし・・・。けっこう皆さん悩んでいるんですね。多くの反響ありがとうございました。

柘植:
こうして一緒に考えていくこともいいかもしれませんね。

メッセージ紹介②

国語辞典のケースの置き場に困っています。引くときも、引いたあと本棚に戻すときにも、ソフトカバーの本体だけを取り扱った方が何かと便利ということもあって、結果的にケースと本体をばらしていることになるのですが、ケースが思いのほかかさばり、しっくりくる置き場所ってどんなんだろう? と思ってしまいます。ケースだけ捨てるにしても、買った当初のケース込みの国語辞典のかっこよさを思い出したり、風格があって高級そうな厚紙を破ることに罪悪感を抱いたりして、捨てられません。ぜひ、お二人に国語辞典の箱について、おうかがいしたいと思います。(福島県・しじみのおかげさん)

タツオ:
柘植さんはどうですか?

柘植:
私は捨てないですね。そのつど収納しています。

タツオ:
辞典のケースって、誰が書いたかという責任の所在がはっきりしているのと、帯が付いている場合は、編集者がこの辞典をどういう人に向けてつくったのかというのが一発でわかるようになってるんですよ。

柘植:
帯もそうですね。

タツオ:
帯に“何万語収録!”って語数の多さをアピールしているものとか、““語釈が豊富!”だとか、““用例がこれだけある!”とか、何を売りにしているのかが明確にわかるんです。たしかに箱から出して1年中使っている人もいますが、立てようとするとバランスを崩すときがあるので、立てるのが難しい本なんです。また、1年通して使ってみると分かりますが、5月、6月は、紙がふにゃ~って外側に向いてきちゃうことがあるんです。

柘植:
湿気ですね。

タツオ:
そのあと乾燥して使わないでおくと、カチカチに表紙だけが“巻き爪”みたいな感じになっちゃうことがあるんですよ。それを防ぐにはケースで保存するのがわりといいんです。でも、とにかく辞書を使い古し、最新版が出たら買い続けている人は、ケースを取っちゃっていいと思います。この方もヘビーユーザーぽいので、箱がなくてもいいのかと思います。

柘植:
でも夏は気をつけるということですね?

タツオ:
あとは“ヘソクリ”を隠す箱にして、本棚に収納しておけばいいと思います。めったに“配偶者さん”は手に取らないと思いますよ(笑)。


タツオ:
国語辞典サーフィンそろそろお別れでございます。

柘植:
盛りだくさんでしたね。

タツオ:
寒くなってきているので、かぜには気をつけてください。それではまた国語辞典を開いて言葉の波をいっしょに楽しんでいきましょう。

柘植:
お相手は、アナウンサーの柘植恵水と、

タツオ:
サンキュータツオでした。ごきげんよう。

国語辞典サーフィン

ラジオ第1
毎週土曜 午後0時45分

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【放送】
2023/11/04 「国語辞典サーフィン」

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