10時台を聴く
24/06/09まで

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なかむらまりさん(小学4年生・千葉県)からの質問に、「科学」の藤田貢崇先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
藤田先生:藤田貢崇先生(法政大学教授)
まりさん:質問者


――お名前を教えてください。

まりさん:
まりです。

――どんな質問ですか?

まりさん:
本を整理しているとき、本の背表紙が丸くなっているのと、まっすぐなのがありました。どうしてですか?

――なんで2種類あるんだろうと思ったんですね。藤田先生に教えていただきましょう。お願いいたします。

藤田先生:
はい。なかむらまりさん、こんにちは。

まりさん:
こんにちは。

藤田先生:
本の整理をしていたら、この2種類があることに気がついたんですね。本棚を整理したんだと思いますけど、丸いのとまっすぐな背があると気づいてくれたときの本は、たぶん表紙がしっかり厚い紙でできている本じゃないかなと思うんですけど、違いましたか?

まりさん:
そうですね。

藤田先生:
「ハードカバー」とかいうんですけど、たぶんそういうので、丸いものとまっすぐなものとがあるという違いに気づいたと思うんです。例えば文庫本とか、あとはいわゆる単行本……

――文庫本と単行本の違いはわかるかな?

まりさん:
わかんないです。

藤田先生:
表紙の中にボール紙が入っていて、とても硬いのを「上製本」というんです。いわゆるちょっと高級な感じがするんですね。でも、文庫本はわかります?

まりさん:
はい。

藤田先生:
教科書みたいなのは背中が丸くなっていないですよね、背表紙が。

まりさん:
丸くなってないです。

藤田先生:
なってないですよね。教科書とか、文庫本というようなわりと値段がお求めやすいというか……

――お安くて、重さもそんなになくてサイズも小さめのものですよね、文庫本は。

藤田先生:
そういうのは、まっすぐになっているんですね。今回のまりさんの「丸いのとそうでないものの違いは何か」というのは、これには気づく人と気づかない人がいるんですよ。実は背表紙が丸くなっていると、その背表紙の反対側、本棚に立てて背表紙を見たときに本棚の向こう側にくるところ、そこも、まっすぐになっていたり緩やかに丸くなっていたり、違いがあるんです。

まりさん:
はい。

藤田先生:
これは何が違うか、どういう理由なのかというと、まっすぐなほう、上製本、ハードカバーで表紙が硬いほうは、そんなに厚い紙をとじられないんです。一般的には大体2cmくらいですかね。厚くなってくると背中がくるっと丸みを帯びてくるようになるんですね。そういうふうにわざわざ作るんです。丸くなっているほうの本の作り方を、「丸背(まるぜ)」というんです。

まりさん:
はい。

藤田先生:
逆に平たいほうは、「角背(かくぜ)」とか「平背(ひらぜ)」とかいいます。丸背というのは、ページを開いたときに開きやすくなっているんです。どんなに厚くても、本ってかなり丈夫だから、開いて……

――まりさん、ひょっとして今、手元に本があったりしますか?

まりさん:
あります。

――背中が丸い本、ある?

まりさん:
ありますよ。

――じゃあ、一緒にやってみよう。

藤田先生:
その丸い本を思いっきり開いて、しっかり机の上に置いてもちゃんと開くんですね。

――読みたいページを開いて、きゅっとやっても……

藤田先生:
開くでしょう?

――開きやすい?

藤田先生:
開きやすいですね。一方で、平たいほうの角背というのは、もちろん開くんですけども丸背ほど開きやすくはないんです。丸背にするか角背にするかは、さっき言った紙の厚さやページ数がどれくらいあるか、いっぱいあればあるほど角背には作りにくくなっていくんです。角背というのはどうしても開きにくくなってしまうし、あんまり無理やりやっちゃうと背中が割れちゃったりするから、できるだけ厚みのある本の場合は背中を丸くするというふうにしています。

もちろんこれは一般的なことで、分厚い本だけどどうしても角背にしたいと言われたら、そういうふうに作りましょうとなりますけれども、一般的には分厚い本になればなるほど、丸背のほうが多くなる。丸背にしておくと、開いて本のページをめくるときにめくりやすくなっているはずです。背中と反対側を「小口(こぐち)」というんですけど、そこが緩やかにへこんでいるので……

――ページを開くほうですね。

藤田先生:
はい。本を開くところを小口と呼ぶんですけど、そこが緩やかに丸まっていますよね。

――まりさんの本もそうかな? ちょっとカーブがついてへこんでいる感じになっているんですね。

藤田先生:
開きやすく、ページがめくりやすくなっているんです。こういうふうに本には角背と丸背という違いがあるということに、小学校4年生で気づくというのは、結構すごいと思うんですよ。こんなふうに違うんだというのを、じゃあ今度は藤田が言ったことは本当かどうかを確かめるのに、分厚いもので開きにくくなっているような本があるかないか、ちょっと探してみたらいいと思います。あんまりないと思います。

まりさん:
はい。

――分厚いけれども背がまっすぐになっているのは意外とない?

藤田先生:
そう思いますね。丸背にするのは職人さんが一生懸命作ってくれるそうですよ。すごく手間がかかるんです。結構本はいろいろなパーツからできていて、まりさん、今、手元に本がありますよね。

まりさん:
はい。

藤田先生:
背中の上と下に布が入っているのは、わかります?

まりさん:
はい。

――しおりじゃなくて、なんかつなぎ目みたいなところですか?

藤田先生:
はい。小さい布が入っているんですね。本の背中、背表紙と中の紙の間に入れてあるものですけど、「花布(はなぎれ)」と呼ぶんです。これもいろいろなデザインがあって、その本に合わせて選ぶ著者もいます。本はいっぱい並んでいますけど、1冊ずつよく見たら、違うんだということに気づくと思うんですよね。

こうやって小さなことに気づくとかいろいろ見比べてみるというのは、科学の基本ですよね。なんで違うんだろうという疑問を感じて調べたり尋ねてみたり、それは科学を勉強したり疑問を解決しようとするのにとても大事なことだと思います。よく気づきましたね。

まりさん:
はい。ありがとうございます。

――本の整理は誰もがしたことがありそうですけれど、そこで違いに気づいて疑問に思うのがすごいですね。

藤田先生:
私、この花布をなんで覚えているかというと、高校のときの国語の教科書に、花布を扱った教材があったんです。それがなぜかずっと記憶に残っていて、もしかしたらこういうことも聞かれるんじゃないかなと思っていたら、やっときょう、その知識を使える日が来ました!

――まりさん、どうでしょう、わかりましたか?

まりさん:
わかりました。

――ちなみに、まりさん、丸背と角背はどっちが読みやすいとか、どっちのほうがおうちには多いかなとか、あります?

まりさん:
どっちだろう。角背のほうかな。

――角背のほうが多いですか。

藤田先生:
角背のほうがずらっと並べたときに「お~」っていう感じになるかもしれません。

――ラジオをお聴きの皆さんも、おうちの本棚をちょっと眺めてみてはいかがでしょう。まりちゃん、すてきな質問をしてくれてありがとうございました。

まりさん:
ありがとうございました。

藤田先生:
どういたしまして。

――また是非質問してくださいね。さようなら。

まりさん:
さよなら~。

藤田先生:
さよなら~。


【放送】
2024/04/14 「子ども科学電話相談」

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