11時台を聴く
24/06/02まで

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ほしのたえさん(小学3年生・東京都)からの質問に、「昆虫」の小松貴先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
小松先生:小松貴先生(昆虫学者)
たえさん:質問者


――お名前を教えてください。

たえさん:
たえです。

――どんな質問ですか?

たえさん:
去年の7月に雑木林で捕まえたノコギリクワガタのオスがまだ生きています。ノコギリクワガタは越冬しないのに、元気にしているのはどうしてですか? ことしの夏まで生きられますか?

――今も元気なんですか?

たえさん:
うん。

――そうなんですね。では小松先生、お願いします。

小松先生:
たえちゃん、こんにちは。

たえさん:
こんにちは。

小松先生:
まず、すごいね。ノコギリクワガタをこの4月まで生かしているということが、まずすごいと思うんです。冬、どういう場所で過ごさせたかな? あったかい部屋の中かな?

たえさん:
2階。

小松先生:
2階……そこそこあったかいのかな。まず、なんでこんな時期までっていうのがあるんですよ。ノコギリクワガタは、基本的には羽化したその年の秋とかまでには死ぬんです。普通は冬を越すことがないんです。

それがなぜ今まで生きているかと言いますと、いくつか理由は考えられて、まず1つは、昆虫は人が育てると自然界にいるよりも寿命が長くなる傾向があります。昆虫は大体種類ごとに、成虫になったあとどれくらい生きられるかが決まっていて、その期間が過ぎるとだんだん死んでいくんですけれども、自然界では、それよりも前に季節が巡って気温が変わっていくんですよね。

昆虫は種類によって、まともに動き回るために必要な温度の範囲が決まっていて、それより高くなったり低くなったりすると動けなくなって弱ってしまうんです。自然界で昆虫が弱って動けなくなると、すぐさま他の肉食の生き物に捕まって殺されて食われちゃうんです。なので自然界では十分生ききって寿命で死ぬ昆虫というのは、まずいないんです。気温が変化して動きにくくなったところを他の肉食の生き物に捕まって食われてしまうので、寿命の分を十分生きることはまずないんです。

人間が育てると天敵からは守られますし、極端に暑かったり寒かったりという温度の変化からもある程度は守られます。そして毎日、餌をもらうことができます。昆虫ゼリーを餌にしているのかな?

たえさん:
はい。

小松先生:
最近ではカブトムシやクワガタ用の昆虫ゼリーに栄養が豊富で品質のいいものも出ているので、昆虫はそういうものを食べていれば栄養的にはたぶん問題なく生きられるはずなんです。それと、わりと大事なこととして、去年ノコギリクワガタのオスはメスと一緒に飼っていたのかな?

たえさん:
飼ってない。1匹だけです。途中まで飼ってたけど、メスは死んじゃったんです。オスだけ残りました。

小松先生:
うんうん。実は昆虫は交尾をしたり卵を産むと寿命がものすごく短くなります。昆虫にとって子孫を残す交尾とか卵を産むというのは、ものすごく体力を使うんですね。なのでこれをやると、昆虫はわりとすぐに死んでしまうことが多いんです。

たぶん飼っているノコギリクワガタのオスは、メスと一緒にいるときに交尾をしなかったんだと思います。なおかつ、近所の雑木林で捕ったという話を聞きましたけど、たぶん捕まえられる前、自然の中で暮らしていたときにもメスと交尾をしたことがないんだと思います。交尾をしないで体力を消耗しなかったから、たぶん今の今まで生き延びることができたんだと思います。

たえさん:
へぇ~。

小松先生:
昆虫を長生きさせる1つの方法は、交尾させたり卵を産ませたりしないことなんです。でも昆虫は基本的に子孫を残すために生きているので、交尾も産卵もさせずにただ生き長らえさせるのが彼らにとって幸せかどうかはわからないんですけれども、とにかく長生きはします。

ことしの夏まで、それが生きられるかどうかなんですけど、正直わからないです。私は厳しいとは思うんですけれども、ただ、この冬を越して4月の今までノコギリクワガタが生きていること自体が奇跡に近いぐらい珍しいことだと思うので、ぜひとも十分手厚くもてなして(笑)、長生きさせてみてください。どれくらい長く生きるのか、記録をつけてみるといいかもしれません。

たえさん:
はい。

小松先生:
私、ノコギリクワガタではないんですけどカマキリを昔飼ったことがありまして、ハラビロカマキリのメスだったんです。カマキリも一般的にはノコギリクワガタみたいに生まれた年の秋とか冬が来るぐらいには成虫が死んじゃうんです。でも私は家で飼って、次の年の3月の頭ぐらいまで生かしました。

たえさん:
へぇ~、すごい!

小松先生:
餌として、ぬるく温めた牛乳をあげていたんです。そしたらそれぐらい長く生きました。何かちょっとした工夫をすると、意外と昆虫は本来よりも長く生きたりするものっぽいです。だからうまく育てたら、もしかしたらそのノコギリクワガタも夏まで生きるかもしれません。ぜひ頑張って生かしてみてください。

たえさん:
はい。

――この先もいろいろ頑張ってみてくださいね。そしてもしちゃんと育ったら、また教えてください。

たえさん:
はーい。

――ありがとうございました。さようなら。

たえさん:
ありがとうございました。さよなら~。

小松先生:
さよなら~。


【放送】
2024/04/07 「子ども科学電話相談」

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