11時台を聴く
24/05/26まで

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「子ども科学電話相談がNHK札幌にやってきた」と題して、NHK札幌放送局のスタジオからお届けします。観覧に来たおくむらけいたくん(小学4年生・北海道)からの「ぶっつけ本番」の質問に、「動物」の小菅正夫先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
小菅先生:小菅正夫先生(札幌市円山動物園参与)
けいたくん:質問者


――お名前を教えてください。

けいたくん:
けいたです。

――どんな質問ですか?

けいたくん:
今、ヒグマが街に出てきて殺されてるって、よくニュースになっているんですけど、殺さないでヒグマと共存する方法はありますか?

――小菅先生、お願いします。

小菅先生:
それは今、北海道、札幌市もそうだけど直面している問題だね。北海道は、人が来る前は“ヒグマの世界”だったよね。それで人が住み始めて、開拓時代にはやっぱり事故が結構あったんだよ。そのときに人間は、(自分たちを)守るために、出てきたヒグマを撃つということをやったの。そうするとヒグマは、人間のところに入ってきたら危険だということを、十分知るクマたちの子孫がそこに生まれてくるようになった。 クマはね、めっちゃ臆病なんだ。勇敢なクマって、いないんだもん。何かあったら、みんな安全のために身を隠そうとか逃げようとかするの。

ところが、そういう関係がうまく作られていたからね。その背景には、もともと人間の住んでいる社会には、耕さなければならないとか林業とか、いろいろあったでしょう?  昔はちゃんと林業があって、山の麓に畑もあった。そして人が生活している地域があって、人の暮らしのかなり外側、山側にヒグマがいたの。ヒグマは臆病だから、なかなか出てこなかった。ヒグマは姿を見られるのが大嫌いなのですぐに隠れる。 黒くて赤茶色の目立たない格好してさ、例えばけいたくんとの間にブッシュがあったら、わからないよ。

だけど、においがするんだよ。じっとしていると息遣いも聞こえてくる。姿は見えない。でも向こうはじっとこっちを見ている……これはおじさんの経験ね。その状態で向こうから突っ込んでくるというのは、おじさんは経験がない。おじさんはいるのがわかるから、ゆっくり「さよなら」って下りてくるんだけどね。そうやっていれば、たぶん事故は防げていると思うんだけどね。

でも今、問題になっているのは、人間が住宅地を、「自然のほうがいいや」って言って、都会から山のほうに斜面のところでも住宅を建てるようになってきた。さらに庭に、ブルーベリーを植えちゃおうとかプルーンを植えちゃおうとか、リンゴもいいなって、なってきた。そりゃあ、そういう状態を作ったら、実はクマさんは甘いものが大好きだからね。味覚で甘みというのは、クマだけじゃなくてほとんどの哺乳類が好きなんだけど、においとかで引き寄せられて1回食べたら、「これ、俺の!」って思う。クマはそういう性格なの。1回食べたらこれは俺のだと思って、いつでも食べられるようなところにずっといるようになるわけ。その状態になってしまうのが、実は一番危険なの。

けいたくん:
へぇ……。

小菅先生:
だからクマが下りてきて、これ以上行ったら危ないなという場所をきちんと作って、その辺りには、みんなで協力してクマが好きになるものを植えない。コンポストも置かない。クマはおなかがすいて来るんだから、そういうのを置いてたら、たまたま散歩に来てにおいに引かれて食べちゃったら「これは俺のもの」と思う。思ったらもう、自分を守るからね。クマの自分の食べ物を守るという性格は、われわれの比じゃないの。もう絶対に人に渡さない。

過去の多くの事件も、こうやって起きているの。それを今の状態で、「出てきたら」って言っているけど、昔はそういう緊張感を作る、いわゆる安全ベルト地帯みたいなものがあって、お互いにここには緊張感を持って入りましょうね、何かあったら引きましょうねという、そういうスペース、空間があった。むやみやたらと山に入っていってまで殺すというのは、絶対にすべきじゃないからね。安全ベルト地帯というのをきちんと作って、お互いにそこには緊張感を持って入って、そしてそこには居続けない。人もクマも居続けないというようにしてやれば、事故はかなり減るんじゃないかなと、おじさんは思うんだよね。

だって、この北海道にさ、1万頭のヒグマがいるんだよ。世界中から見て、北海道は奇跡の場所なんだよ。これだけ人が住んでいて、しかも現代的で文化的な暮らしをしている場所に1万頭のヒグマが共生しているなんて、地球上で他にないから。だからこそ、ここはしっかりと維持して、世界に誇れる“人・クマ王国”になってほしいなと、おじさんは思っているんだけどね。そのためには、みんなの努力と意識が必要だと思います。

――けいたくん、どうですか?

けいたくん:
すごくためになりました。ありがとうございます。

小菅先生:
こちらこそ。ありがとうございます。

――ありがとうございました。けいたくんからの質問でした。


【放送】
2024/03/31 「子ども科学電話相談」

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