10時台を聴く
24/04/28まで

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おがわただしくん(小学3年生・神奈川県)からの質問に、「植物」の塚谷裕一先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
塚谷先生:塚谷裕一先生(東京大学大学院 理学系研究科教授)
ただしくん:質問者


――お名前を教えてください。

ただしくん:
ただしです。

――どんな質問ですか?

ただしくん:
ウツボカズラは液体とかを使って昆虫とかを食べているけど、その液体に僕の手を突っ込んだら、僕の手は溶かされますか?

――本当だ、気になりますねぇ。ただしくんはウツボカズラをどこかで見たんですか?

ただしくん:
ショクダイオオコンニャクを見に小石川植物園に行ったら近くにあったから、それで見ました。

――今、ショクダイオオコンニャクと聞いて、塚谷先生が立ち上がりそうになりました(※塚谷先生は2021年3月まで小石川植物園園長)。塚谷先生、お願いします。

塚谷先生:
はい。おがわくん、こんにちは。

ただしくん:
こんにちは。

塚谷先生:
ショクダイオオコンニャク、見に来てくれたんですね。

ただしくん:
はい、そうです。

塚谷先生:
においも嗅げました? においはもう、していなかったですか?

ただしくん:
においは嗅いでないです。

塚谷先生:
そうですか。去年、開花して、ものすごくたくさんの人が小石川植物園に来てくれました。

――話題になりましたね。

塚谷先生:
小石川植物園は、本当は東京大学大学院理学系研究科附属植物園というすごく長い名前なんですけど、そこでショクダイオオコンニャクが咲いたんです。そこでウツボカズラも見てくれたんですね。

ただしくん:
はい。

塚谷先生:
ありがとうございます。ウツボカズラは、そうですね、虫を食べますよね。中で虫が溶けちゃっているのは、見たことがありますか?

ただしくん:
アリが1匹、入っていっちゃって……

塚谷先生:
そうですね(笑)。古くなったウツボカズラの袋の中を見ると、結構、虫がいっぱい沈んでいて、表面の殻のところがかろうじて残って中身が溶けていたりします。その液に、おがわくんの指を入れたらどうなるか、ですよね。おがわくんは、忍耐強いですか? 我慢強い?

ただしくん:
えーっ、わかんない。

塚谷先生:
よっぽど我慢強くなかったら、溶けないと思います。というのは、いきなりシュシュシュッと溶けちゃうものではないからです。相当時間をかけて溶かすので、その前におがわくんが、しびれを切らしたり飽きたりして、指を袋から出しちゃうと思います。だからそのくらいの短い時間だったら、溶けないで済みます、というのが答えです。

ただしくん:
なるほど。

塚谷先生:
『ザ・フライ』という昔の映画は、観たことがありますか?

ただしくん:
ないです。

塚谷先生:
ハエと人間が融合しちゃってハエの消化液を出せるようになった怪物が、敵役に消化液をかけると、その敵役の手が溶けちゃうみたいな場面があるんです。ウツボカズラはそんなに強力な消化能力を持っていなくて、まず虫が落ちると、しばらくして溺れちゃうんです。溺れちゃって静かになって、液の中にずっとつかっているうちに、じわじわと溶けていくという程度の消化能力です。

ただしくん:
へぇ~。

塚谷先生:
だからたぶん、ウツボカズラの液をお風呂いっぱいにためておいて、そこにおがわくんが1週間ぐらいずっとつかりっぱなしになっていれば、溶けちゃうかもしれないです。その前に指がふやけちゃいますよね(笑)。

ただしくん:
わっ、怖っ!

――怖いよね(笑)。

塚谷先生:
ちなみにウツボカズラの袋は、最初はふたが開いていないのは、見てくれました?

ただしくん:
ちょっとふたが開いていないのがあった。

塚谷先生:
ありましたよね。始めのうちは一体成型で、袋には何も穴が開いていないんです。成熟するとふたが開いて、そこから虫が入れるようになっているんです。ふたが開く直前は、中に透明な液がたまっています。あれはね、飲めます。

ただしくん:
飲めるんだ!?

塚谷先生:
飲めます。種類によって味が違います。口が開いてからだと衛生状態がよくないのでおすすめしませんけれども、夏になると花屋さんでウツボカズラを売っていたりするので、もし自分で育てて安全だとわかっていたら、ふたが開く直前にちょっとだけ指でたわめるとふたが開くので飲んでみると、ものによってはさわやかな味だし、ものによっては苦みがあるし、いろいろあるんです。

――先生、飲んだこと、あるんですか?

塚谷先生:
はい。

――体に問題はない?

塚谷先生:
ないです。消化能力がそんなに強いものではないので、清涼飲料水程度です(笑)。そういう感じなので、そんなに恐れるものではないです。
ちなみに、世界最大のウツボカズラにネペンテス・ラジャというのがあります。袋が両手で抱えるくらいあるんですけど、昔それが見つかって、「大きいウツボカズラがいた! きっとこれは小鳥とかネズミを食べて暮らしているに違いない」というような伝説が生まれて、世界中に流布したことがあるんです。でも今言ったようにそんなに強い消化能力はないので、それは本当に作り話で、そんなことはないんです。今でもいわゆる“プラントハンター”と言っている人の中には、「このウツボカズラは鳥やネズミを食べている」みたいなことを真に受けて言っている人もいますけれど、あれはうそです。

――ただしくん、どうでしょう?

ただしくん:
わかりました。

――ただしくんの発想、おもしろいですよね。人間の手を入れたらどうなるんだろうというのは、楽しいなと思いました。 安全だとわかれば、ちょっと飲んでみるのもいいねという先生のお話でした。ただしくん、質問してくれてありがとうございました。

ただしくん:
ありがとうございました。

――さようなら。

ただしくん:
さよなら~。

塚谷先生:
さよなら~。


【放送】
2024/03/03 「子ども科学電話相談」

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