おおはしはなさん(小学2年生・新潟県)からの質問に、「動物」の成島悦雄先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
成島先生:成島悦雄先生(元・井の頭自然文化園園長/獣医師)
小松先生:小松貴先生(昆虫学者)
はなさん:質問者
――お名前を教えてください。
はなさん:
はなです。
――どんな質問ですか?
はなさん:
ウサギは前に進むとき、どうして歩かないでぴょんぴょん跳ねるのですか?
――成島先生、お願いします。
成島先生:
はい。おおはしはなさん、こんにちは。
はなさん:
こんにちは。
成島先生:
はなさんは、ウサギがぴょんぴょん跳ねているのを見たことがありますね?
はなさん:
はい。
成島先生:
歩いていなかったかな?
はなさん:
はい。
成島先生:
前足をちょこちょこっと動かして、ぴょーんと後ろ足で跳ねるような、そういう動きをずっとしていましたか?
はなさん:
はい。
成島先生:
ごくまれだとは思うんですけれども、ウサギもね、前足2本・後ろ足2本を別々にちょこちょこっと動かすときもあるんですよ。たいていの場合は、前足をぴょんぴょんとして後ろ足で一緒にジャンプするという、そういう歩き方がメインなんですけど、前足と後ろ足を1本ずつ動かすことが全然できないわけではないんです。
はなさん:
はい。
成島先生:
ウサギは、何を食べて生きていますか?
はなさん:
ニンジンとか。
成島先生:
ニンジンとかタンポポの葉っぱとか、要するにお肉は食べないよね。植物を食べて生きていくでしょう?
はなさん:
はい。
成島先生:
だからウサギは、こういう動物を「草食動物」、草を食べる動物と言うんですけれども、あるいは植物を食べる動物ですので「植物食動物」と言うんです。それでイヌとかネコとか、あるいはライオンとかトラとかっていう動物は、まぁちょっとかわいそうだけれども、ウサギを食べるんですね。お肉を食べるから、「肉食動物」というふうに言うんです。これはもう学校で習ったかな?
はなさん:
習いました。
成島先生:
習ったね。要するに、草食動物はいつも誰かに食べられる、そういう運命にあるわけです。空からはワシやタカが自分を襲ってくるかもしれないし、地面ではキツネやオオカミが自分を襲ってくるかもしれない。いつも狙われているわけだから、大きな耳で天敵のありかを見つけて、危険だなと思ったらすぐに逃げられるようにしているわけだね。
はなさん:
はい。
成島先生:
そういうときには、やっぱりジャンプすると、とっても逃げやすいというふうになっているわけです。体のつくりを見てみると、前足の骨と後ろ足の骨では全然違うの。今度、博物館にもし行くことがあったら、ウサギの骨格標本、骨の標本を見てもらいたいんですけど、前足と後ろ足の骨の太さとか長さが全然違うんだよ。後ろ足のほうが前足よりも長くて骨も太いの。そこに立派な筋肉がついているんです。前足でぴょんぴょんと動いたあとに、後ろ足2つでぴょんと跳ねるわけです。はなさん、「ケンケンパ」という遊び、やったことあるかな?
はなさん:
あります。
成島先生:
あぁ、よかった! じゃあ話がしやすいね。ウサギは前足で、右か左かどっちかが先なんですけど、ケンケンと進んで、そのあと後ろ足、両足でパーンとジャンプして跳び上がるんです。雪が降ったあとなんかにウサギの足跡を見るとよくわかるんですけれども、ぴょんぴょんとやったあとに2つ、両足がついているという跡が残っているの。まるでケンケンパをしているみたいな、そういう歩き方をしている。まさしくジャンプをして逃げているわけだよね。
はなさん:
はい。
成島先生:
ウサギにもいろいろな仲間がいて、例えばジャックウサギというウサギだと、6メートルぐらい跳ぶんですって。ジャンプできるんだって。
はなさん:
えーっ。
成島先生:
日本にも、はなさんのいる新潟県だと、たぶんノウサギというのがすんでいると思うんだけど、トウホクノウサギというのは冬に白くなるウサギだよね。これだと大体3メートルぐらい跳ぶんですって。
はなさん:
へぇ~。
成島先生:
ジャックウサギにはかなわないけど、3メートル跳ぶのは大変なことだよ。それぐらいすごいジャンプ力を持っていて、天敵に追いかけられたときにはパーンと跳んで逃げるということなんです。逃げるために特別な体のつくりをしているということで、だから歩かないで跳ねていく、跳ねたほうが敵から自分の命を守りやすいという、そういう利点があるからと考えられています。よろしいでしょうか。
はなさん:
はい。
――おもしろいですね。速く走って逃げる動物もいれば、ぴょんぴょん跳んで逃げる動物もいるという。
成島先生:
そうですね。要するに、敵から逃げることができればいいわけですので、4本足で速く逃げる選択をした動物もいるけれど、ウサギのように後ろ足を発達させてジャンプをして逃げることに特化した動物もいるわけです。カンガルーなんかもそうですよね。逃げ方には多様性がある。いろいろなやり方があるんです。
――その動物にとって、よりうまく逃げられるように……
成島先生:
そういうふうにたぶん進化して、例えばウサギの仲間の場合は、走って逃げるご先祖さまもいたかもしれませんけれども、両足をそろえてジャンプしたほうが逃げやすいという子孫がたくさん残った結果、今のかたちになっているんだろうなと思います。
――小松先生、昆虫にも、ぴょんと跳んだりするものがいますね。
小松先生:
そうですね、バッタとかノミとか。基本的にノミとかに関しては、他の動物の体に取りついて血を吸う生き物ですので、ジャンプして他の生き物にとりあえず体当たりして、そのときに爪を使って相手の体の皮膚とか毛に引っ掛けられればいいというジャンプなので、着地のことは全然考えていないんですね。だから着地するときは、胴体とか頭からとか、ぶざまな着地をするんです。
成島先生:
へぇ~。
――でもそのジャンプ力で、動物にくっついて生きていくということですね。
小松先生:
そうですね、はい。
――はなちゃん、どうですか? ウサギはかわいいなと思うけど、後ろ足がすごく強くて、ちゃんと跳べるようになっているんですって。
はなさん:
わかりました。
成島先生:
はなさんが住んでいるのは新潟県でしょう? 雪がたくさん降って大変でしょうけれども、たぶん郊外に行くとウサギの足跡を見ることができると思いますよ。ケンケンパになっているのを自分の目で確かめることができると思います。雪が降っていないとなかなか足跡が残りにくいのでわかりにくいと思いますけれども、ちょうど今の時期、いいと思うので、もしできたらお父さんやお母さんに連れていってもらって、外でそういう足跡を観察するのもいいかなと思います。
――はなちゃんの家の周りは、雪が多いですか?
はなさん:
少ないです。
成島先生:
あぁ、少ない……。
――ちょっと離れたところに行ったら、ひょっとしたら見られるかもしれませんね。それから、先ほど成島先生が、博物館で骨も見ることができるとおっしゃっていましたね。もし機会があったら骨も見てみると、動物の体はこういうふうにできているんだなとわかりますね。
成島先生:
そうなんです。外側からだと毛で覆われて見えませんけれども、皮をめくってみると、僕たち人間もそうですけれども骨が体をしっかり支えているわけです。この動物はこういう骨の形だからこんな動きをするんだなということが、よくわかると思います。ぜひ博物館にも行って、知識をさらに深めていただければありがたいです。
――はなちゃん、どうですか、大丈夫ですか?
はなさん:
今度見てみます。
成島先生:
あぁ! お願いします。
――質問してくれてありがとうございました。
はなさん:
ありがとうございました。
――さようなら。
はなさん:
さよなら~。
成島先生:
さよなら~。
【放送】
2024/02/18 「子ども科学電話相談」