まきたこうすけくん(小学1年生・愛知県)からの質問に、「心と体」の大日向雅美先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
大日向先生:大日向雅美先生(恵泉女学園大学学長)
こうすけくん:質問者
――お名前を教えてください。
こうすけくん:
こうすけです。
――どんな質問ですか?
こうすけくん:
妹のはなちゃんはぬいぐるみが大好きです。寝るときもお出かけするときも持っていきます。なんでそんなに好きなのか、不思議です。はなちゃんに聞いても答えてくれませんでした。教えてください。
――妹のはなちゃんは何歳ですか?
こうすけくん:
2歳です。
――どんなぬいぐるみを持っているのかな?
こうすけくん:
羊のぬいぐるみと、うさぎのぬいぐるみ、2匹です。
――はなちゃんのためのぬいぐるみなのかな?
こうすけくん:
うさぎのぬいぐるみの1匹は、僕が子どものときに遊んでたやつです。
――こうすけくんが小さいときに遊んでいたのがうさぎのぬいぐるみで、それをはなちゃんも大事にしているのね。
こうすけくん:
うん。
――では大日向先生、お願いします。
大日向先生:
はい。こうすけさん、こんにちは。
こうすけくん:
こんにちは~。
大日向先生:
妹のはなちゃん、2歳。かわいいわね、きっと。
こうすけくん:
うん。
大日向先生:
よく観察していますね、お兄ちゃんとしてね。
こうすけくん:
はい。
大日向先生:
はなちゃんがぬいぐるみをいつも持って手放さないというのは、はなちゃんだけじゃなくて、小さい子によく見られる行動なのよ。
こうすけくん:
ふぅん。
大日向先生:
心理学で「ブランケット症候群」と言って、難しい言葉だから忘れていいんだけど、ブランケットというのは毛布という意味ね。毛布をいつも持っているから、「安心の毛布」と言うこともあるの。それから、こうすけさん、漫画の「スヌーピー」は読んだことある?
こうすけくん:
ありません。
大日向先生:
「スヌーピー」も機会があったら見ていただきたいんだけど、ライナスという子が出てくるの。そのライナスはいつも青色の毛布を持っているから、はなちゃんみたいな行動を、「安心の毛布」とか「ライナスの毛布」と言うこともあるのね。これはどうしてか。はなちゃんはまだ説明できないし、自分でもわからないと思うんだけど、何かこう、気持ちを落ち着かせるために持っているものなのね。小さい子の中には、ボロボロになっても離さない子もいるの、とっても大事だから。
こうすけくん:
へぇ~。
大日向先生:
私が「気持ちを落ち着かせるために持っているのよ」と言うとね、「心配なことがあるから?」とか「愛情が足りないからじゃない?」なんて言う人もいるけれど、ここ、とっても大事なところ。それは、「全然違います」って、覚えておいて。別に愛情が足りないとか、そういうことじゃないの。逆なの。
こうすけくん:
うん。
大日向先生:
はなちゃんがいつもぬいぐるみを持っていたいというのは、はなちゃんが大きくなっていくうえで、とても自然で大切なこと。その時期に、今、かかっていると考えてあげてほしいの。
こうすけくん:
ふぅん。
大日向先生:
何かから離れるというのは不安で、毛布とかぬいぐるみは、やわらかいわね。それで心を落ち着けているのは確かなんです。だけどそれは、離れたくないもの、大事なものが、はなちゃんにできたということなの。わかるかしら。例えば、はなちゃんが離れたくないものといったら、どんなものが考えられるかな?
こうすけくん:
うーん、おかあちゃん?
大日向先生:
そうね。ママとかパパとか、こうすけくん、お兄ちゃんかもしれないね。みんなにたくさん愛されていると、いつもそばにいたい。だけど2歳だと、もう赤ちゃんのときみたいにずっとそばにいるわけにもいかないでしょう?
こうすけくん:
うん。
大日向先生:
1人で動きたいとも思うわけ。だけど不安なの。その不安な気持ちを落ち着かせるために、ぬいぐるみなどのやわらかいものを触っているの。だけど、繰り返して言うけど、それは悪いことではなくて、はなちゃんにとって大事なものができたということだから、喜んであげていいことなのね。
こうすけくん:
うん。
大日向先生:
海外では、保育園に1歳とか2歳で入るでしょう? そのときに先生が、「お気に入りのぬいぐるみがあったら持ってきてください」とおっしゃる保育園もあるんですって。ママやパパから離れて保育園に入るのは、小さい子どもや赤ちゃんにとっては、最初、不安なことがあるでしょう? だから気持ちを落ち着かせるのに、ママやパパに代わるものがぬいぐるみだというふうに、代わりのものを見つけることができたというふうに、考えられているんですって。
こうすけくん:
ふぅん。
大日向先生:
はなちゃんも、大体1歳前後から見られたのかな?
こうすけくん:
うん。
大日向先生:
そうね。4~5歳ぐらいになると少しずつなくなることも多いの。でも、心のよりどころが必要なくなったのでは決してなくて、触っていなくてもいい、心の中でイメージできて頼るものができたということも、あるかもしれないのよ。さっき、こうすけさんは、こうすけさんが大事にしていたぬいぐるみ、うさちゃんかな。うさぎのぬいぐるみを、はなちゃんにあげたのよね。
こうすけくん:
うん。
大日向先生:
それはすごいことなのよ。こうすけちゃんは、うさちゃんのぬいぐるみで、気持ちを落ちつかせたり大事なものの代わりにしていたけど、それがなくても落ち着いていけるようになったのかなと思って聞いてたんだけど、そうかな?
こうすけくん:
うーん、そうかなぁ。
大日向先生:
まだわからない? こうすけさんは、心配なことがあったり落ち着かなきゃと思うときに、何か心の中に浮かべるもの、ありますか?
こうすけくん:
うーん……。
大日向先生:
秘密? 全国の皆さんが聞いているから言わなくていいんだけど(笑)、そういうふうに考えていくと、これは小さいはなちゃんだけではなくて、私たち大人になっても、形を変えてずっとみんな持っているの。最初はぬいぐるみだったり毛布だったりするけれど、だんだんとそれが別のものに変わっていって、心を落ち着かせながらいろいろな新しいことにチャレンジしたりできるのよ。こうすけさんも、うさちゃんをはなちゃんにあげたんだもんね。
こうすけくん:
うん。
大日向先生:
立派なお兄ちゃんになったんだなと、思いました。
――はなちゃんは、それで安心するのかなということですね。そしてこうすけくんは、だんだんお兄ちゃんになってきているということですね。大丈夫ですか、わかったかな?
こうすけくん:
はい。
――これからも優しく見守ってあげてくださいね。
こうすけくん:
はい。
――質問してくれてありがとうございました。
こうすけくん:
ありがとうございました。
大日向先生:
ありがとうございました。
――さようなら。
こうすけくん:
さよなら~。
大日向先生:
さよなら~。
【放送】
2024/02/18 「子ども科学電話相談」