さのいくみくん(小学6年生・徳島県)からの質問に、「恐竜」の田中康平先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
田中先生:田中康平先生(筑波大学生命環境系助教)
いくみくん:質問者
――お名前を教えてください。
いくみくん:
いくみです。
――どんな質問ですか?
いくみくん:
雪がとけて降り固まると氷になるけど、氷は地層になりますか? 残るとしたら、冷凍マンモスみたいに氷漬けの恐竜が出てくるのではないでしょうか。
――雪が降って氷になったら氷は地層みたいになるのか。「冷凍マンモス」みたいに氷漬けの恐竜も出てくるんじゃないか、と。夢が広がりますね。田中先生、お願いします。
田中先生:
はい。いくみくん、こんにちは。
いくみくん:
こんにちは。
田中先生:
いくみくんは小学6年生だね。ということは、もうすぐ卒業?
いくみくん:
はい、そうです。
田中先生:
そうなんだね。あと少し、小学校を楽しんでね。6年生ということは、理科の授業で地層も勉強しているのかな?
いくみくん:
はい、そうです。
田中先生:
地層ってどういうものだったか、覚えてる?
いくみくん:
粒が大きいものが一番下にきて、粒が小さいものが一番上にくる。
田中先生:
「粒」というのは、砂とか泥とかそういうことかな?
いくみくん:
はい、そうですね。
田中先生:
土砂みたいなものが、堆積物というんだけど、たまって、横から見るとしましまに見えているものだよね。そういうのが地層っていうんだよね。
いくみくん:
はい。
田中先生:
地層の中から、恐竜化石が見つかっているわけだよね。
いくみくん:
はい。
田中先生:
それで氷が地層に残るかということなんだけれども、氷がとけなければ、地層の中に残るよね。地層の中に氷があったとしても、それがとけなければいいんだよね。
いくみくん:
はい。
田中先生:
いくみくん、仮に氷漬けの恐竜があるとして、どんなイメージかな? きれいなつるつるの透明のガラスみたいな氷の中に、恐竜が入っているというイメージかな?
いくみくん:
まぁ、そうですね。
田中先生:
そんな感じか……冷凍マンモスとか氷漬けのマンモスとか、聞いたことある?
いくみくん:
はい。
田中先生:
あれはどういうふうに見つかるか、知ってる?
いくみくん:
死んだやつが雪とかに冷凍保存されて、その積もった雪が氷になって、その中にマンモスが氷漬けになる、ってやつ?
田中先生:
なるほど。ネットで「冷凍マンモス」とかで調べてもらうといいんだけど、意外と土の中から出てくるんだよ。
いくみくん:
そうなの?
田中先生:
うん、そうなのよ(笑)。「氷漬け」とかいいながら、土の中から出てきてるじゃん、って思うんだけど、マンモスが死んで土の中に埋まって、それが土ごと凍ったような状態かな。
いくみくん:
なるほど。
田中先生:
凍っている土のことを「永久凍土」といったりするんだけど、聞いたことあるかな?
いくみくん:
おおぉ……全くありませんでした。
田中先生:
結構寒い地域、シベリアとかロシアのほうだと、永久凍土があります。そういうところだと永久凍土の中から、まだ凍った状態、半分とけて出てくるのかな。マンモスが見つかったりするわけだね。だから恐竜も、きれいなつるつるの氷というよりかは、永久凍土が恐竜時代から残っていれば、恐竜も見つかる可能性があるということだよね。
いくみくん:
はい、そうです。
田中先生:
じゃあ、いくみくん、恐竜時代から現在まで、凍っている場所はあると思う?
いくみくん:
もしかしたらあるんじゃないかと思う。
田中先生:
どこらへんにあると思う?
いくみくん:
うーん、北極と南極とか。
田中先生:
やっぱり寒い地域にあるんじゃないかなって思うよね。
いくみくん:
はい。
田中先生:
これね、難しい……。僕の知識では、なかなかないんじゃないかなと思います。
いくみくん:
マジか……。
田中先生:
マジか(笑)。南極ってものすごく分厚い氷があるじゃん?
いくみくん:
はい。
田中先生:
あれは結構、意外と最近できたもの、と言ったらあれなんだけど、南極ってすごく寒くなったのが、大体3,400万年ぐらい前といわれているの。
いくみくん:
ほうほう、そんなに昔。
田中先生:
まぁ、最近ではないけど(笑)、これは恐竜時代よりもずっとあとの時代ね。恐竜が絶滅したのが6,600万年前ぐらいだから、3,400万年前というと、それより3,000万年も最近の話だから、そのあたりで南極の氷が分厚く発達したといわれています。
いくみくん:
なるほど。
田中先生:
だから実は恐竜が絶滅してから現在になるまで、地球は結構あったかい時期があるのよ。氷って、そんなにめちゃくちゃ昔というわけではないのね。
いくみくん:
はい。
田中先生:
あともう1つ言うと、恐竜時代は何時代というかは勉強したかな。学校で習った?
いくみくん:
三畳紀、ジュラ紀、白亜紀。
田中先生:
すばらしい、そうだよね。三畳紀・ジュラ紀・白亜紀、まとめて中生代っていったりするよね。
いくみくん:
はい。
田中先生:
この時代は実はすごく暖かくて、特に恐竜が一番多かった白亜紀という時代は、過去1億年の中で一番暑い時代だったといわれているのね。
いくみくん:
はい。
田中先生:
実はそのとき、北極とか南極とかの極域には氷がなかったといわれています。
いくみくん:
あぁ、なるほど。
田中先生:
ということは、氷漬けの恐竜を見つけるのはかなり難しいです。
いくみくん:
あー確かに。
田中先生:
氷漬けの恐竜というのはなかなか難しいんだけれども、いくみくんは、どうして氷漬けの恐竜が知りたいなと思ったの?
いくみくん:
雪はとけるから、氷だったら残るかな、と。
田中先生:
なるほどね。だから、もうちょっと新しい時代だったらありうるということですね。あと、氷漬けの恐竜がもし見つかるんだったら、きれいにそのまま恐竜の形が残っているんじゃないかという期待が湧くじゃん?
いくみくん:
はい。
田中先生:
氷漬けは見つかっていないんだけど、例えばミイラになった恐竜とか、乾燥して皮膚とかがちょっと残っている状態で見つかる恐竜化石があるのね。あと、琥珀(こはく)ってわかるかな?
いくみくん:
はい。樹液みたいなやつ?
田中先生:
そうそう。樹液が固まると琥珀という化石になるんだけど、その中にちっちゃな虫とか小さな生き物が入ってたりすることがあるのね。
いくみくん:
なるほど、なるほど。
田中先生:
恐竜の尻尾が見つかったというのがあって、恐竜の尻尾というと何メートルもあるものが琥珀の中に入っているようなイメージになっちゃうんだけど、すごく小さい恐竜の尻尾が入っていたというのがわかっています。そういう琥珀とかミイラ化石というのが見つかると、すごく珍しいんだけど、氷漬けの恐竜はなくても何となく恐竜の骨以外の形とか皮膚の感じとかがわかってきます。
いくみくん:
なるほど。わかりました。
田中先生:
わかったかな?
いくみくん:
はい。
――お二人、対等な会話をしている感じがしましたね。いくみくん、ちゃんと勉強しているのが伝わってきました。先生のお話、わかりましたか?
いくみくん:
必ず氷漬けの恐竜を見つけてやる、と思いました。
田中先生:
おぉー、すごい! 頑張って、いくみくん!
いくみくん:
はい。
――その気持ち、すごくすてきだと思います。
いくみくん:
あの……もう1つ質問していいですか?
――どんな質問でしょう。
いくみくん:
僕は古生物学者になりたいんですが、徳島県に住んでいるので大きな博物館や恐竜展にいつでも行けるわけではないです。春から中学生になるのに、何かテーマを決めてじっくり研究してみたいと思っています。地方にいても何か取り組めるようなテーマはありますか?
田中先生:
ちょっと短く言うけれども、徳島県では恐竜化石が見つかっています。知ってる?
いくみくん:
はい、勝浦(町)で。
田中先生:
うん。徳島の恐竜、ちょっと定かじゃないんだけど、きっとたぶん徳島でも展示されていると思うの。地元でどういう恐竜が見つかっているのかとか、どういう地層から出てくるかというのを、調べてみるといいんじゃないかな。どうかな。
いくみくん:
いいですね。
――まずは身近な地元から調べてみてということでした。いくみくん、前向きでとてもすてきだなと思いました。質問をしてくれてありがとうございました。
いくみくん:
ありがとうございました。
――卒業までよい小学校生活を! さようなら。
いくみくん:
さよなら~。
田中先生:
さよなら~。
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2024/02/11 「子ども科学電話相談」