11時台を聴く
24/03/24まで

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しまむらはるなさん(小学4年生・埼玉県)からの質問に、「心と体」の篠原菊紀先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
篠原先生:篠原菊紀先生(公立諏訪東京理科大学教授)
はるなさん:質問者


――お名前を教えてください。

はるなさん:
はるなです。

――どんな質問ですか?

はるなさん:
反抗期は、みんな経験するものなんですか?

――はるなさん、4年生ですけれど、反抗期って知っているんですね。

はるなさん:
はい。

――ちなみに、はるなさんは今、反抗期だったりするんですか?

はるなさん:
いいえ。まだ反抗期じゃないです。

――そうですか。でもみんな経験するのかなって、気になったんですね。では「心と体」の篠原先生、お願いします。

篠原先生:
はい。しまむらはるなさん、こんにちは。

はるなさん:
こんにちは。

篠原先生:
反抗期が気になる?

はるなさん:
はい。

篠原先生:
しまむらさんからすると、なんでそんなのが起きるのか不思議だし、経験する必要なんてないんじゃないかと思うということだよね。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
うん、そのとおりだと思います。ちょっと聞きたいんだけど、しまむらさんはおうちの人に、例えばお父さんとかお母さんとかおじいちゃんとかおばあちゃんとか、誰でもいいんだけど、「反抗期はあった?」って聞いたこと、ある?

はるなさん:
はい。

篠原先生:
なんて言ってた?

はるなさん:
「経験したことがある」って言ってました。

篠原先生:
全員?

はるなさん:
はい。

篠原先生:
ふうん、そうですか。じゃあついでに、そのときどんな感じだったかというのも聞いた?

はるなさん:
それはまだ聞いたことがないです。

篠原先生:
じゃあ、それをちょっとおうちの人に聞いてみると、しまむらさんに起こるかどうかはわからないけど、もし反抗期のような感じになったときに、どんなふうに対処というかやっていたかを聞いておくと、結構似た感じになる可能性があるし、そうでなくても参考にはなるだろうから、聞いておくといいですよ。

はるなさん:
わかりました。

篠原先生:
なんて言うのかな……反抗性とか挑戦性という言葉を使うんだけど、それって結構、遺伝的側面が強いから、親族の方というか皆さんのご意見を聞いておくと、結構役に立つと思います。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
最初のしまむらさんの質問に戻るんだけど、「反抗期はみんな経験するものですか」というんだけど、いろいろ調査があって、例えば保護者、お父さんやお母さんやおじいちゃんやおばあちゃんとか、そういう人に聞いたある調査だと、子どもに反抗期が「あった」と答えた人は65%、「なかった」と答えた人は35%だったそうです。だから反抗期はみんな経験するものですかということに対しては、別にみんなが経験するわけではないですね、ということになると思います。いいですか?

はるなさん:
はい。

篠原先生:
経験することもあるし経験しないこともあるだろう、ということになってくるとは思います。しまむらさんは、何歳だっけ?

はるなさん:
10歳です。

篠原先生:
そうすると、しまむらさんは今は結構心が安定しているかもしれないけれど、もうちょっとすると、心が結構大きく揺れたり、大きく揺れる気持ちと自分自身がつきあっていくということで、多少は苦労することがあるかもしれないですね。というのは、「脳」はわかりますよね。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
その脳でいうと、海に浮かぶ「島」、わかりますよね。

はるなさん:
……はい。

篠原先生:
あの漢字を使って、「島(とう)皮質」という場所が脳にはあります。しまむらさんなんかの場合、そこがこれから発達のピークを迎えます。ここからは、ちょっとうっとうしいというか、わけがわからないと思うしイメージがしにくいと思うんだけど、ネットとかで図を見たほうが理解が早いとは思うんだけど、今、イメージしてもらうために、ちょっと気持ち悪いかもしれないけれど、お話をしますね。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
頭蓋骨、脳を覆っている骨をちょっと外すと、耳の横のほうに、側頭葉という脳の横っちょみたいなところがあります。そこと上の脳との間には、ちょっと境目みたいなところがあるの。そこに、指を入れるというのはヘンな話だけど、ベロみたいなものを入れてぐっと開けると、脳の表面が内側に入り込んでいるという特殊な場所があるんです。それが島皮質という場所で、それは左右の脳、両方に存在しているんですね。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
ここが何をやっているのかというと、例えば心の痛みとか不快感とか無力感とか居場所がない感じとか、そういうことと関係しています。とにかく嫌だとか、どうしても好きになれないとか、逆にものすごく好きだとか、そういう感情の幅というか心の揺れと、関係する場所なんです。

そしてそこは、しまむらさんの今の体の中の状態とか内臓の状態とかもモニターしているので、同じ嫌な感じとか不快感でも、「内臓的な不快感(内臓からこみあげてくるような不快感)」という言い方もあったりするんだけど、内側から込み上げてくるみたいな、どうしようもない感覚と関わっているんです。はるなさんの場合、今までに感じたことがないようなそういう感じ方をすることが、これから起きる可能性が出てくるんです。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
だから思春期になってくると、心が大きく揺れる。自分が嫌いになったり身近な家族に反発したり、そういう場合も出てくる。もちろんみんながそうなっていくわけではなくて、実際に島皮質の発達の具合を見ても、平均的には今言ったように、みんな同じようになるんだけど、急に大きくなる人もいればそうならない人もいて、個体差というのがいっぱいあるのね。人によって違うの。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
島皮質という、嫌な感じを感じ取る場所が発達していくだけだったら、なんだかんだいって人生は大変で、これから嫌なことばっかり起こるんだな、みたいな感じになっちゃうかもしれないけれど、同時に、そういう気持ちと折り合いをつける、調整をつける、自分の気持ちをうまく調整していく、あるいは周りとの調整をしていく、今の気持ちだけじゃなくて未来のことをもっと考えようとか、そういうことに関係する脳の場所も、しまむらさんの場合はこれから発達していくんだよね。それが大体、20代後半ぐらいまでは発達が続くと考えられています。

はるなさん:
はい。

篠原先生:
前頭葉の内側の前部帯状回とか内側(ないそく)前頭前野という言葉は覚えなくていいけど、そういう場所が発達していきます。これからは心が揺れる時期だけど、自分との折り合いをつけていく力もついていく時期なのね。だから自分というものがすごくしっかりしてくる。それが、思春期だったり反抗期だったりするということになります。大体わかりましたか?

はるなさん:
はい。

篠原先生:
調整する場所のほうが先に発達したりすると、そんなに大きな気持ちの揺れを体験しないということも起きる。あるいは心の揺れを大きく感じても、調整できれば反抗にまでつながらないということも起きてくる。さっきも話したけど、実際、脳の厚みがどうなるかのグラフを見ても、平均的には今お話ししたような感じになっていくんだけれども、一人一人の図を見ていくとだいぶ違うのね。小さくなっていく人もいたりするし、人によって違うんです。しまむらさんは、どんな感じになりそうですか?

はるなさん:
私は性格的に、なんか揺れが大きくなりそうな気がする、っていうか……。

篠原先生:
あぁ、そうなんだ。でもそういう予測をしておくのはとっても大事なのね。さっきお話しした、そういう揺れとかと折り合いをつけていく脳の場所というのは、あらかじめ予測して計画を立てておくと、さっきの島皮質という場所と例えば前部帯状回のつながりが強くなってくるということも、わりと簡単に起きたりしやすいのね。だから、「こういうふうになるかもしれないけど、そうなったらどうしよう」みたいなことを想像するのはとても大事なので、今のうちからいろいろ考えておくのは、決して悪いことにならないと思います。

はるなさん:
うん。

篠原先生:
僕が思うには、しまむらさん、そんなに揺れるようにはならないと思っているんだけど、仮にちょっと反抗したくなったり、ちょっと挑戦的になりそうになったりすることが今後起こったとしたら、1つアドバイスがあります。「どういうときにそういう気持ちが強まるのかな」とか、「その気持ちが強まってくると自分の顔の筋肉がどんなふうに動いていくのかな」とか、「肩の筋肉にどんなふうに力が入っていくのかな」とか、そういうのを観察するのをやってみるといいと思いますよ。そうすると嫌な気持ちからちょっと離れることができるので、いろいろやってみるといいと思います。

はるなさん:
はい。ありがとうございます。

篠原先生:
はーい。

――起こるかもしれないし、起こらないかもしれないということですね。対策というのも教えてもらいました。はるなさん、質問してくれてありがとうございました。

はるなさん:
ありがとうございました。

篠原先生:
はい、ありがとー。

――また質問をしてください。さようなら。

はるなさん:
さよなら〜。

篠原先生:
さよなら〜。


【放送】
2024/01/28 「子ども科学電話相談」

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