いちはらだいごくん(小学2年生・大阪府)からの質問に、「岩石・鉱物」の西本昌司先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
西本先生:西本昌司先生(愛知大学教授)
だいごくん:質問者
――お名前を教えてください。
だいごくん:
だいごです。
――だいごくん、どんな質問ですか?
だいごくん:
学校の校門の近くに岩石が13個置いてあり、説明もあります。その中に蛇紋岩があり、火成岩と書いていますが、図鑑には変成岩と書いてありました。どちらが正しいですか? それから13個の岩石は、溶岩、玄武岩、流紋岩、蛇紋岩、石英安山岩、せん緑岩、れき岩、砂岩、石灰岩、凝灰岩、花こう片麻岩、糖晶質石灰岩、砂岩ホーンフェルスです。
――……はいっ。ちょっと圧倒されてしまいました。だいごくん、学校にビオトープがあって、岩石が13個あるんですね。そしてその13個に、今言ってくれたような表示があるの?
だいごくん:
うん。
――その中に蛇紋岩があって、火成岩と表示されているけれど変成岩じゃないのかなというのが、まずあるのかな?
だいごくん:
はい。
――では西本先生、お願いいたします。
西本先生:
はい。いちはらだいごくん、こんにちは。
だいごくん:
こんにちは。
西本先生:
いちはらくん、すごいね。石の名前、ねぇ。
――先生、今、13個言えますか(笑)。
西本先生:
言えません(笑)。ついていけませんでした。びっくりしました。すごいですね。だいごくん、石が大好きなんだね。
だいごくん:
うん。
西本先生:
その中で蛇紋岩が特に気になっちゃったの?
だいごくん:
はい。
西本先生:
ああ、そう。蛇紋岩がどういう岩石か、知っていますか?
だいごくん:
図鑑に書いてあったのでちょっとは知っているけど、あんまり書いてなかったから。
西本先生:
あぁ、そうか。じゃあ、先生が書いた図鑑を読んでね(笑)。
――蛇紋岩についてもちゃんと(笑)。
西本先生:
蛇紋岩のことも書いてあるからね。でも、だいごくん、よく知ってるねぇ。蛇紋岩は、図鑑で調べたら変成岩と書いてあったのに、学校では火成岩になっていたんだよね。それで不思議だなと思ったわけか。
だいごくん:
うん。
西本先生:
すごくね、気持ち、わかるよ。私が子どものころは、確かに蛇紋岩は図鑑にも火成岩のところに書いてありました。
だいごくん:
……はいっ?
西本先生:
うん、おんなじ。
だいごくん:
えーっ。
西本先生:
だからね、蛇紋岩は時々火成岩になるんですよ(笑)。どういうことかを説明すると、蛇紋岩がどうやってできたかをちょっと知っておいたほうがいいんですね。蛇紋岩というのは、もともと違う岩石が変化して出来ているんだけど、それは知ってる?
だいごくん:
知ってます。
西本先生:
おっ。何ていう岩石が変わったの? 蛇紋岩はもともと別の岩石だったんだけど、それは知っていますか?
だいごくん:
かんらん岩。
西本先生:
そのとおりです! よく知ってるねぇ。かんらん岩が実は水と反応して出来た岩石が蛇紋岩です。
だいごくん:
へえ~。
西本先生:
要するにかんらん岩がお水につかって変化しちゃった岩石なんです。かんらん岩という岩石はどこにあるか、知ってる?
だいごくん:
……あっ、上部マントルとか。
西本先生:
すごい、そのとおりです! マントルの上のほうにある岩石が、実はかんらん岩です。それが今、見ることができるということは、地表に上がってきたんじゃん?
だいごくん:
うん。
西本先生:
上がってくる途中に、地下深いところでの話だけど水と化学反応を起こして、(火成岩の)かんらん岩が少しずつ蛇紋岩という岩石に変化したんです。
だいごくん:
へぇ~。
西本先生:
ちょっとここでね、考えてもらうとわかるんだけど、かんらん岩が突然、蛇紋岩に変わるわけではなくて、少しずつ変わっていくの。例えて言うと、生卵を水に入れてグツグツ煮ると、何になる?
だいごくん:
……えっ、何?
西本先生:
生卵をゆでると何に変わる?
だいごくん:
えーっ? あぁ、ゆで卵?
西本先生:
そう、ゆで卵ですー。でもさ、その中間もあるじゃん?
だいごくん:
あぁ、ある。
西本先生:
あるでしょう? 半熟卵って言うじゃない?
だいごくん:
はい。
西本先生:
「半熟卵は、生卵か、ゆで卵か」みたいなものなんですよ。
だいごくん:
なるほどねぇ。
西本先生:
わかる? 何が言いたいか(笑)。
だいごくん:
うん、わかる。
西本先生:
要するに、かんらん岩が蛇紋岩に少しずつ変わっていくんだけれど、そのときに中間的なものもあるし、ゆで過ぎてカチカチになることもあるわけよ。それを全部、蛇紋岩と言っちゃっているの。かんらん岩がちょっと変化したものは、蛇紋岩と呼んでるんだよ。
だいごくん:
へぇ……。
西本先生:
ゆで卵までいくと変成岩なんだけど、半熟のあたりはどうしたらいいかなって、困るわけ。
だいごくん:
確かに。
西本先生:
困るでしょう? でも、ほとんどはもう変質しちゃっているから変成岩にするんだけど、ちょっと中間的なものもあるよねということで、昔は半熟卵みたいなのばっかり見ていたのか、ちょっとわからないんだけど、蛇紋岩はもともと上部マントルのかんらん岩がちょっと変化しただけだから、火成岩に入れていたんです。
だいごくん:
へぇ……。
西本先生:
だけど今はそうじゃないなということがわかってきて、変成岩のくくりに分類しましょうということになったんです。わかった?
だいごくん:
はい、わかりました!
西本先生:
岩石はね、昆虫なんかと違って「種」というのがあるわけではなくて、中間というのがあるんです。それをどこで切るかというのは、結構やっぱり議論があるというか、時代によってちょっと変わるということなんです。だから昔は火成岩というほうに入れていたんだけれども、今は、元のかんらん岩とは全然違うじゃないかということで変成岩に入れることが多くなりました。だけど実際には、中間的なものもありますよということで、覚えておいてもらうといいと思います。
だいごくん:
わかりました。
西本先生:
わかった? よかったです! さっきの13個の中に、石英安山岩ってあったよね?
だいごくん:
うん。
西本先生:
今ね、石英安山岩って使わないんです。私、聞いていて思ったのは、その岩石の名前は、ちょっと昔、古くに作られたものなんじゃないかなと思います。昔の分類で名前が書いてあるんですね。科学はどんどん進歩しているので、本当はそれを新しい名前に変える必要があると思います。ぜひ学校の先生にお願いしてみてください。
だいごくん:
はい。
――だいごくんから学校に、間違いじゃないけれど今はこういうふうに言うみたいですよって、提案してみるのもいいかもしれませんね。
西本先生:
間違いではないんですけど、今はあんまり使わないみたいですよ、ってね。
――だいごくん、どうでしょう。13個をすらすら言えたりして、将来が楽しみですね。石が大好きなんですか?
だいごくん:
はい。
――そうですか。先生がおっしゃったみたいに、学校のほうにもお話ししてみてもいいかもしれませんね。
だいごくん:
はい。
――大丈夫でしょうか? いいかな?
西本先生:
いいかな?
だいごくん:
はい。
――またぜひ何かあったら質問してくださいね。
だいごくん:
ありがとうございました。
――ありがとうございました。さようなら。
だいごくん:
さよなら~。
西本先生:
さよなら~。
【放送】
2024/01/21 「子ども科学電話相談」