しのはらきょうたくん(小学6年生・山口県)からの質問に、「天文・宇宙」の国司真先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
国司先生:国司真先生(跡見学園女子大学兼任講師/板橋区立教育科学館プラネタリウム「わくわくキッズ宇宙星空教室」担当)
きょうたくん:質問者
――お名前を教えてください。
きょうたくん:
きょうたです。
――どんな質問ですか?
きょうたくん:
なぜ「はやぶさ2」は、地球とリュウグウを往復するときに燃料が尽きないのですか?
――きょうたくんは、宇宙とかロケットとか、好きなんですか?
きょうたくん:
はい、好きですけど、あんまり詳しくはないんですけど、でも宇宙とかロケットがもともとから好きで、地球とリュウグウを往復するときになんで燃料が尽きないんだろうって心配になったので、この質問を送らせていただきました。
――はい、しっかりしてますねぇ。では国司先生、お願いします。
国司先生:
はい。きょうたくん、こんにちは。
きょうたくん:
こんにちは。
国司先生:
ロケット、好きなんだ。
きょうたくん:
はい。
国司先生:
ペットボトルロケットって、打ち上げたこと、ある?
きょうたくん:
いや、ないです。
国司先生:
おもしろいよぉ! おじさんね、日本宇宙少年団の会に参加していたときにペットボトルロケットを打ち上げてね、あれの燃料は水かなと思うけど違うんだよね。それを圧搾する空気を入れて、それがぴゅうっと反発する力で上がっていくの。
きょうたくん:
へぇー。
国司先生:
そうなの。あれ、やるとおもしろいよ。指導者の方がいたほうがいいんだけど、ぜひ1度やってみて。それで、はやぶさ2。リュウグウに行ったね。
きょうたくん:
はい。
国司先生:
宇宙少年団の活動のときに、私もいろいろ勉強させてもらいました。はやぶさには「イオンエンジン」というのが入っているんだけど、JAXAの國中(くになか)先生という方が開発の中心になっていて、すばらしいエンジンが入っているんです。
きょうたくん:
へぇー。
国司先生:
まず、はやぶさが地球から打ち上がるときは、「H2A」ロケットだよね。
きょうたくん:
はい。
国司先生:
あれは液体燃料で、すごいエネルギーを使わないと地球の引力を振り払って地球の周りを回るようにならない。それは人工衛星というよね。ところが、はやぶさはリュウグウまで行ったということは、地球の周りを回るようになって、今度は太陽の周りを回るように、加速しなくちゃいけないんだよ。
きょうたくん:
あぁ。
国司先生:
その加速は、最初はロケットでプシューッとリュウグウのほうに行くんだけど、最初はリュウグウのほうにまっすぐは飛べないの。やっぱり地球の引力を振り切ることができなくて、今度はだ円の軌道になって、また地球に戻っちゃう。そのときに地球の引力を使って……「スイングバイ」って、聞いたこと、ない?
きょうたくん:
うーん、ちょっとないです。
国司先生:
ないか……。なんかこう、振り回されそうになったときに、ぐるぐる回転をして例えば中に押し込んでいくときに、一番中心のところはくるっと速くなるんです。これは角運動なんだけれども、もういっぺん言うと、例えばフィギュアスケートで、手を広げてくるくる回るとゆっくりなんだけど、手を閉じるとくるくるっと速く回るんです。
――スピンのときですね。
きょうたくん:
あぁ。
国司先生:
そう。それにちょっと似たようにして、地球にもういっぺん接近したときに地球の引力を使って、そのまま地球にぶつかって落ちるんじゃなくて落ちないで、そのスピードでそのままぴゅうっと、方向が変わっちゃうんだけどね。方向を変えることができて、それがリュウグウのほうに行けるような方向にも変わるし、スピードも増すの。そういうエネルギーも使って、方法も使って、まず曲げます。曲げることにもエネルギーがあるんだけど、地球のエネルギーを使って、方向を曲げるということができる。
きょうたくん:
えーっ……。
国司先生:
そして、もっとスピードを上げたいよね。だけどエンジンとかはそんなにずっとエネルギーを持つことができないので、それではやぶさ2には、イオンエンジンがついています。はやぶさの初号機にもついていました。それはどういうものを使うかというと……氷は水が凍ったもの、固体だよね。水は液体、それを沸かすと気体になるね。
きょうたくん:
はい。
国司先生:
その気体にさらにエネルギーを与えると、「プラズマ」というものになるんです。プラズマって、このごろわりと聞くよね。どういうものかというと、いろいろなものの最終的な粒々、原子とか、まあちょっと集まった分子というのがあるんだけど、それにまたエネルギーを与えると、その中の電子が飛び出ちゃう状態が出来上がるんです。ちょっと不安定なんだけどね。
きょうたくん:
はい。
国司先生:
はやぶさについているイオンエンジンというのはそのプラズマを作って、それを作るためにはエネルギーがいるんだけど、それは太陽電池があるからね。それでそのプラズマになったものを加速して一方向に噴き出すと、エネルギーは小さいんだけれども、ゆっくりゆっくり加速していくことができるんです。
きょうたくん:
へぇー。
国司先生:
これはね、すばらしい技術なの。そして、「この車は1リットルで10キロ走ります」とか、燃費というのがあるでしょう? その燃費が、従来のロケットのエンジンの燃費より10倍いいんだって。そういうすばらしいエンジンを、JAXAの研究者の皆さん、技術者の皆さんが力を合わせて開発して、それがはやぶさに載っているんです。
きょうたくん:
そうなんですか。
国司先生:
それ以外にも、別室で制御したりしてプシュップシュッと噴き出すような、それからリュウグウに接近するときにはだんだんおりていって、かつ離れるときにはやっぱりプシュッとまた違うエンジンも出すんだけれども、いろいろなエネルギーをうまく使うことによって、はやぶさはあの遠いリュウグウに行って帰ってこられた。
きょうたくん:
うん、なるほど。
国司先生:
そして、はやぶさ2は、オーストラリアの砂漠にカプセルだけを落として、本機は地球をすうっとすり抜けて、今は違う小惑星に向かっているんだよね。その姿勢の制御の方法も、やっぱりすばらしいです。JAXAの(神奈川県)相模原のキャンパスには展示とかがあって見られるんだけど、相模原に行く機会があったら、本物が見られるからぜひJAXAの展示室を訪ねてみるとおもしろいよ。
きょうたくん:
へぇー。
――きょうたくんは山口県でちょっと遠いかもしれませんけれど、機会があったらね、ぜひ。
国司先生:
そうですね。打ち上げ基地のところにも展示室があると思うので、そういったところでぜひ実物を見てほしいなと思います。
きょうたくん:
はい。
――新しい技術がいろいろ進んでいるんですね。きょうたくん、どうでしょうか?
きょうたくん:
わかりました。
――よかったです。これからも興味津々でいろいろ調べて、また質問があったら送ってくださいね。
きょうたくん:
はい。
――ありがとうございました。
きょうたくん:
ありがとうございました。
――さようなら。
きょうたくん:
さよなら~。
国司先生:
さよなら~。
【放送】
2024/01/14 「子ども科学電話相談」