すずきたまきさん(小学1年生・静岡県)からの質問に、「鳥」の上田恵介先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
上田先生:上田恵介先生(立教大学名誉教授/日本野鳥の会会長)
多田先生:多田多恵子先生(植物生態学者/立教大学・国際基督教大学 兼任講師)
国司先生:国司真先生(跡見学園女子大学兼任講師/板橋区立教育科学館プラネタリウム「わくわくキッズ宇宙星空教室」担当)
たまきさん:質問者
――お名前を教えてください。
たまきさん:
たまきです。
――どんな質問ですか?
たまきさん:
オウムはライオンの鳴き声をまねできますか?
――たまきちゃんは、オウムが何か鳴きまねしているのを聞いたことがあるのですか?
たまきさん:
ない。
――鳴きまねをするのは知っているのかな?
たまきさん:
はい。
――それでライオンの鳴き声もできるのかなぁと思ったんですね。では上田先生、お願いします。
上田先生:
はい。すずきたまきさん、こんにちは。
たまきさん:
こんにちは。
上田先生:
オウムはライオンの鳴き声をまねできるかという質問ですね。先生もね、オウムが本当にライオンの鳴き声のまねをできるかどうか、よく知らないのよ。「知らない」と言ったら答えにならないけどね。
オウムって実は、小さなインコが多いんですけど世界には300種類ぐらいいるの。小さいオウムもいれば大きなオウムもいます。小さなインコだとか小さいオウムの仲間は、わりと声がかわいいというか、「声が高い」って、わかる? 高い声と低い声。
たまきさん:
うん、わかる。
上田先生:
お母さんの声は、お父さんの声と比べてちょっと高いよね。お父さんの声はちょっと低いよね、人間でもね。
たまきさん:
はい。
上田先生:
オウムとかインコなんかも、たぶん小さなオウムとかインコは、同じ鳴きまねをするにしてもお父さんの声よりお母さんの声のほうが鳴きまねをしやすいと思います。オウムやインコは低い声の鳴きまねはちょっと苦手かなと、先生は思います。
たまきさん:
あぁ。
上田先生:
ライオンはどんな声か、知ってるよね?
たまきさん:
うん、知ってる。
上田先生:
先生、外で聞いたことはないんだけど、動物園でたまにグワァとかいって、大きな低い声ですよね。オウムとかインコは、人間の声に限らず他の鳥の声とか他の動物の声、それからいろいろな人工の音、時計とかピンポンとかいうドアのチャイムとか何でもまねができます。いろいろな音を自分で学んでその音をまねすることで、インコどうし、オウムどうしのコミュニケーションというか、お互いにお話をしています。だから、ライオンの声まねができるかどうかだけど、ライオンがもうちょっと高く鳴いてくれたらねぇ、まねできると思います。ライオンはネコの仲間だというのは知ってる?
たまきさん:
知らない……。
上田先生:
知らんかった? ライオンは、ネコ科動物というんですけれどもネコの仲間で、ネコが大きくなったのがライオンだと思ってもらえばいいんです。ネコはニャアニャアいってるけどライオンはグワァとかで、ネコは高い声でライオンは低い声です。ネコの声なら、恐らくまねできると思う。ライオンくらいになるとねぇ……。
たまきさん:
うん。
上田先生:
鳥はどんな声が出せるかといったら、小さい鳥はあまり低い声が出せません。大きな鳥ならば、大きな低い声を発することができます。大きなインコとかオウムとかも、いるのね。日本ではあまり飼われていないけど、オーストラリアなんかにはキバタンといって白い大きなオウムがいるの。キバタンの声は、外で聞いても、ギャアギャアという低くてすごい大声です。
たまきさん:
へぇ~。
上田先生:
キバタンなんかにライオンの声を聞かせたら、もしかしたらライオンの声をまねするかもしれないなと思っています。それから南米のコンゴウインコとか大きなインコ類にも可能性がありますけれど、やっぱりインコは、かわいくて高い声のほうがまねをしやすいなと先生は思っています。
たまきさん:
はい。
――先生、キバタンもそうですけど、大きい鳥のほうが低い声を出せる?
上田先生:
そうですね。ハクチョウとかガンとかは大きいでしょう? ずんぐりした鳥ね。ああいう鳥の声はすごく低い。アヒルなんかもグワグワいってますよね。カラスはカァカァで中くらいですけど。
多田先生:
「バイオリンは高い音でコントラバスは低い音」とか、そういうこととも関係ありますか?
上田先生:
あぁ、楽器の弦の振動ね。人間の声は、のどのところに声帯というのがあってそこで声を出しますけれど、鳥は鳴管(めいかん)というのを持っていて、それを震わせて声を出しているから、関係がないこともないとは思う。
多田先生:
ちっちゃい小鳥は、ピッコロとかフルートみたいに高い音が出るとか?
上田先生:
鳴管の太さですね。小さい鳥は鳴管が細いから、高い音になってしまうのかな。
――「鳴管」というのは、「鳴く管」と書けばいいんでしょうか。
上田先生:
はい、そう書きます。大きな鳥は鳴管も太いから、ダチョウとかヒクイドリとか、すごく低い声を出しています。だからオウム・インコでも、セキセイインコとかオカメインコとか小さいインコたちはあまり低い声は出せないから、ライオンの声はちょっと無理かな。キバタンとかコンゴウインコとか大きなオウム・インコ類は、全く同じとは言えないけれども、訓練すればかなり低い声も出せるかなと思います。
――たまきさん、オウムだけでも300種類ぐらいいるそうですよ。
上田先生:
そう。きれいなインコもいっぱいいます。アフリカとかオーストラリアとか南アメリカとかに行くといっぱいいるの。すごいよ。
たまきさん:
へぇ~。
――私たちのこの日常では、ライオンのまねをするオウムがあそこに「いる」とは言えないけれども、場所を変えればひょっとしたら、いる、かもしれない?
上田先生:
いるかもしれないですけれども……
たまきさん:
ふふっ。
上田先生:
野外でライオンの声をまねして「俺はライオンだぞ。グワァ」とかいってるオウムが出るかなぁって思ったら、たぶん出ないんじゃないかなと、先生は思います。
――そうですか(笑)。多田先生も鳥を飼ってらっしゃったりして。
多田先生:
はい。うちのセキセイインコもよくしゃべって、やっぱり人間の声でしたね。しゃべる言葉をまねしていました。あるときおもしろかったのが、セキセイインコを連れてドライブに行って、止まったところのベランダにかごを出しておいたら、ピーちゃんがいろんなことをおしゃべりするんです。「ビーちゃん、いい子ね」とか。そうしたらカケスがすぐ近くにきて、それを1時間ぐらいかな、じーっと聞いてたと思ったらば、全く同じようにしゃべり出したことがあってびっくりしました。
――カケスが?
多田先生:
はい。カケスがピーちゃんのまねをして、「ピーちゃん、元気ね」って。
国司先生:
わあ、いいなぁ……。
多田先生:
ふふっ、そうですね。
――カケスというのは、ちょっとカラスのような?
上田先生:
はい。カケスはカラス科の鳥、カラスの仲間です。カラスは頭もいいし、カラスだって訓練すればいろいろな声をまねします。おもしろいよ。
――たまきちゃんの質問からカケスの話まで出てきたし、「声まね」という点では、まだまだわからない、知りたいことも多そうですね。
上田先生:
カラスにライオンの声を聞かせたら、鳴けるようになるかもしれない。
多田先生:
あぁ、それならできそう!
上田先生:
グワグワって。ハシボソガラスはわりとガァガァいってますから。
国司先生:
ちょっと渋い声ですよね。
上田先生:
そう。渋いよ、ハシボソガラスの声。
多田先生:
私、カラスが柱時計の鳴る音を、最初、グルグルグルっていうぜんまいを巻く音も含めてまねして、ボ~ンボ~ンって鳴いてたのを聞いたことがあるので。
――カラスが?
多田先生:
はい。
――えーっ!
上田先生:
ボ~ンボ~ンって、低いよね。カラスは可能性、あるね。
――たまきちゃん、まさかのオウムじゃなくてカラスがライオンのものまねができちゃうかもって(笑)、先生たちのお話です。
たまきさん:
すごいっ……。
上田先生:
ねぇ、すごいでしょう?
――おもしろいよねぇ。「うちの鳥とか近所のカラスが、こんなまねをします」って、大募集したいぐらいですね。たまきちゃん、みんなが「どうたろう?」って考える質問をしてくれましたね。大丈夫ですか、わかりましたか?
たまきさん:
わっかりました。
――わっかりましたか(笑)。
上田先生:
ありがとう。
――オウムだとどうかなというところもあるけれど、ひょっとしたらカラスならできるかも……ということでした。
上田先生:
いい質問でした。いいきっかけになりました。
――質問をしてくれてありがとうございました。
たまきさん:
ありがとうございました。
――さようなら。
上田先生:
さよなら~。
たまきさん:
さよなら~。
【放送】
2024/01/14 「子ども科学電話相談」