10時台を聴く
24/02/25まで

10時台を聴く
24/02/25まで

まちやはるとくん(小学3年生・栃木県)からの質問に、「鳥」の川上和人先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
川上先生:川上和人先生(森林総合研究所 鳥獣生態研究室長)
小林先生:小林快次先生(北海道大学総合博物館教授)
丸山先生:丸山宗利先生(九州大学総合研究博物館 准教授)
はるとくん:質問者


――お名前を教えてください。

はるとくん:
はるとです。

――どんな質問ですか?

はるとくん:
なんで卵は温めないとふ化しないんですか?

――これは「鳥」の川上先生、お願いします。

川上先生:
はい。どうもこんにちは、川上でーす。

はるとくん:
こんにちは。

川上先生:
「卵」っていうのは、鳥の卵ということでいいかな?

はるとくん:
はい。

川上先生:
よし、じゃあねぇ。3年生だから、「細胞分裂」という言葉、聞いたことあります?

はるとくん:
聞いたことあります。

川上先生:
最初からちょっと難しいことを言いながらだいたいの答えを言っちゃうと、まず、卵の中で何が起こっているかを考えてみると、どういうことが起こっていると思う?

はるとくん:
うーん……

川上先生:
卵の中で、黄身は何の役に立っていると思う?

はるとくん:
赤ちゃんを守る?

川上先生:
どっちかっていうとね、赤ちゃんの栄養になります。

はるとくん:
あぁ。

川上先生:
卵の中を見ると黄身が大きくて目立つけれども、あれは実は栄養なんだよね。その横に胚という、その後、鳥になるための小さな小さな部分があるんだけれども、その中でどんどん細胞の数が増えていって、黄身の栄養を使って大きくなっていきます。その中で細胞が増えていくのを細胞分裂というんだけれども、もうこれは「何で?」というか、そういうものだとしか言いようがないんだけれども、温度が低いと細胞分裂というものが起きないの。止まっちゃうんだって。

はるとくん:
へぇ~。

川上先生:
細胞分裂というのは……はるとくん、「たんぱく質」ってわかるかな?

はるとくん:
えーっと、知ってます。

川上先生:
聞いたことあるよね。お肉とかそういうものなんだけれども、そうやってたんぱく質がどんどん出来ていって体が出来ていくんだけれども、たんぱく質というのは70℃ぐらいになると固まっちゃうの。ゆで卵って、わかる?

はるとくん:
はい。

川上先生:
固まっちゃうよね。だから温度が高すぎても固まっちゃうから駄目で、低すぎると細胞分裂というのが起こらなくて、ちょうどいい温度というのがだいたい決まっているんです。

はるとくん:
はい。

川上先生:
それが鳥の場合は38℃くらいで、そうするためには温めなきゃいけないんだけれども、鳥の祖先はどうだったのかっていうのを、ちょっと考えてみたいと思います。鳥の祖先は何か、知っていますか?

はるとくん:
恐竜?

川上先生:
当たり! じゃあ、恐竜の祖先は何か、知ってます?

はるとくん:
……わかりません。

川上先生:
実はね、ワニの仲間なんです。ワニは卵を温めていたと思いますか?

はるとくん:
はい。

川上先生:
うん。じゃあね、昔、ワニの研究をやっていて、今、恐竜の研究をやっている小林先生がここにいるので、ちょっとその辺、答えを聞いてみたいと思います。小林先生、いかがですか。

小林先生:
はい。はるとくん、こんにちは。

はるとくん:
こんにちは。

小林先生:
ワニはね、植物が腐っていくときに熱が出るんだけど、ワニはその熱を使って卵をかえします。いわゆる鳥みたいに卵の上に乗っかって温めるかというと温めないんですが、中には巣の上に座って待ってたりするワニもいます。そういうふうに、温めているのではなくて敵から食べられないように卵を守っているようなワニがいたりするので、もともとは、卵を温めるというよりも卵が食べられないように、守るために近くにいたというのが、ワニもそうだし恐竜の研究からもわかっています。少しずつ鳥に近づいていきますね。

川上先生:
小林先生、ありがとうございます。というわけで、最初は自分で温めないで外で温まるのを待っていたということです。もう1人、ここに「昆虫」の先生もいるので、昆虫も卵からかえるから昆虫はどうなのか、聞いてみたいと思います。

はるとくん:
はい。

丸山先生:
丸山です。こんにちは。

はるとくん:
こんにちは。

丸山先生:
昆虫にも、一番卵がふ化しやすい温度というのが必ずあるんですね。1つ例を挙げると、アリは地面の中にすんでいて、地面の中は冬が終わって春になってもなかなか暖まらないんです。アリはその時期から卵を産み始めるんだけれども、全部のアリがそうではなくてクロヤマアリとか身近にいるアリの中では、春先に卵を産んだら、働きアリが地面の近くで日が当たってあったまったところに卵を持っていって温度を上げて、それで早めに卵をふ化させたり幼虫を育てたりするものもいます。昆虫にも最適な温度というものがあるので、暖かいところに持っていくものもいるということですね。

川上先生:
丸山先生、ありがとうございます。というわけで、みんな温めていたんだけれども、温める方法が鳥みたいに自分で抱いて温めるというのではない方法で、つまり、空気の温度とかを使って温めていたんですね、昔は。

はるとくん:
はい。

川上先生:
でもそれでは、ちょっと時間がかかっていたんです。例えばワニの場合、温度は30~33℃くらいなんですって。鳥は38℃だからそれよりも低い温度だったんですね。

はるとくん:
へぇ~。

川上先生:
これは今現在のワニの場合で、昔のワニがどうだったか、わからないんだけれども、時間にすると2~3か月ぐらいかかっちゃうんだって。スズメはどのぐらいで卵がかえるか、知ってます?

はるとくん:
1週間?

川上先生:
惜しい! 2週間ぐらいなんですよ。例えばダチョウは、大きいけれども40日ぐらいでかえるんだって。だから実は、温めることで時間が短くて済むというのがあります。

はるとくん:
へぇ~。

川上先生:
というわけで、さっき小林先生が言っていたように、たぶん最初は守るために抱いていたと思うんです。それがだんだん、温めると早く子どもが生まれるというふうに進んできたんだと思います。そしてだんだん温度が高くなって、温度が高くなるほどたぶんちょうどよくなって、卵がふ化するのがどんどん早くなったんだと思います。

はるとくん:
はい。

川上先生:
卵のときって、自分を守るのが大変だよね。捕食者が現れたりしたら食べられちゃいます。だから、卵の期間は短ければ短いほどいいんだよね。

はるとくん:
はい。

川上先生:
卵をほったらかしにするんじゃなくて抱いて温めることで卵がかえる時間が短くなって、それで安全にかえすことができるようになった。でも今度は、温めないと、かえらなくなっちゃった。それぐらい、高い温度のほうがよくなっちゃったということだと思います。

はるとくん:
なるほどー。

川上先生:
だからなぜ温めなきゃいけないかというと、細胞分裂をするのにちょうどいい温度にするためだし、それがなぜ起こったかというと、たぶん最初は温めるためじゃなくて守るためだったんだけれども、それが進んでだんだん進化して、高い温度で短い時間で卵がかえるように進化してきたんだというふうに考えればいいと思います。だいたいわかりました?

はるとくん:
はい。

川上先生:
よかったです。

――ワニと鳥でも、温度の違いでそれだけ卵がかえる時間が違うんですね。はるとくん、どうでしょう、わかりましたか?

はるとくん:
はい、わかりました。

――質問をしてくれてありがとうございました。

はるとくん:
ありがとうございました。

――さようなら。

はるとくん:
さよなら~。

川上先生:
さよなら~。


【放送】
2023/12/31 「子ども科学電話相談」

10時台を聴く
24/02/25まで

10時台を聴く
24/02/25まで