9時台を聴く
24/02/25まで

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やまだゆうきくん(小学1年生・兵庫県)からの質問に、「動物」の小菅正夫先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
小菅先生:小菅正夫先生(札幌市円山動物園参与)
川上先生:川上和人先生(森林総合研究所 鳥獣生態研究室長)
ゆうきくん:質問者


――お名前を教えてください。

ゆうきくん:
ゆうきです。

――どんな質問ですか?

ゆうきくん:
キツネの脚は、なぜ春夏秋冬ずっと黒いんですか?

――ゆうきくんは、動物園とかでキツネを見たことがありますか?

ゆうきくん:
ちょっとはある。

――それでキツネに興味を持って、どうしてだろうと思ったんですね。では小菅先生に聞いてみましょう。お願いします。

小菅先生:
ゆうきくん、おはよう。

ゆうきくん:
おはようございます。

小菅先生:
そうか、キツネの脚の黒いところに目がいったんだ。

ゆうきくん:
はい。

小菅先生:
どんなところが黒かったか、教えて。

ゆうきくん:
脚の……かかとというか膝。

小菅先生:
おっ、そうそう、膝というか、前足だったでしょう?

ゆうきくん:
うん。

小菅先生:
正面から見て手前のほうが黒かったよね。

ゆうきくん:
黒かった。

小菅先生:
そうそう、黒いんだよ。ゆうきくん、春夏秋冬ということは、1年中、どうして黒いのかっていうことかな?

ゆうきくん:
うーん、と……

小菅先生:
もしかしたら色が変わるかもしれないと思った?

ゆうきくん:
思った。

小菅先生:
そうかそうか。ゆうきくんは、キツネを見たことがあるって言ったよね。

ゆうきくん:
うん。動物園で見たことある。

小菅先生:
それは春も夏も秋も冬も、動物園で見たんだよね。

ゆうきくん:
……そうかな。

小菅先生:
うん。じゃあ、色が変わるキツネって見たことある?

ゆうきくん:
見たことある気がする。

小菅先生:
「気がする」か。あのね、キツネの仲間というか、ちょっと親戚みたいなホッキョクギツネというのがいるんだけど、聞いたことある?

ゆうきくん:
ある。

小菅先生:
ホッキョクギツネは、ゆうきくんが思っているとおり、夏は焦げ茶色しているんだ。

ゆうきくん:
焦げ茶色?

小菅先生:
うん。それで冬になったら真っ白になる。これには理由があるの。ホッキョクギツネが餌を取るときに、北極周辺は冬になったら真っ白な世界じゃない?

ゆうきくん:
うん、そう。

小菅先生:
そんな中でチョロチョロしたら見つかっちゃうでしょう?

ゆうきくん:
見つかっちゃう。

小菅先生:
真っ白だったら、見つかんないじゃん?

ゆうきくん:
見つかんないと思う。

小菅先生:
だから夏と冬で色を変えちゃうことが、彼らにとってすごく有利なんだよ。特に何を食べているかというと、ホッキョクグマって知っているね、シロクマ。

ゆうきくん:
うん、知ってる。

小菅先生:
ホッキョクグマが餌を取るでしょう? 例えばアザラシだとかいろいろなものを取るよね。

ゆうきくん:
取る。

小菅先生:
それを、全部食べないで残すときがあるんだよ。それをもらいに行くの。そのときに真っ白じゃなかったら、ホッキョクグマが気づくじゃん? 「あっ、こんなのが来た」って。

ゆうきくん:
気づいちゃう。

小菅先生:
だから気づかれないように、真っ白になっちゃうの。そうしたら、ホッキョクグマの近くでチョロチョロしていても見つからないからね。ホッキョクグマが残した肉を食べようという、そういう戦略なんです。

ゆうきくん:
そういうこと……。

小菅先生:
だから色が変わるの。冬の北海道も周りは真っ白なんだけど、キタキツネは、ホッキョクギツネとは食べるものが違うの。冬の間、キツネは何を食べていると思う?

ゆうきくん:
雪……土の中にすんでいるネズミとか。

小菅先生:
正解! だけどそれは土の中にいて、上には雪があるから、ネズミからキツネは見えないよね。

ゆうきくん:
見えない。

小菅先生:
だから別に白くなくたっていいんだよ。夏と同じ色で、キツネ色に前足がちょっと黒いというあの色でも全然影響ないんだ、食べるためにはね。

ゆうきくん:
そうか。

小菅先生:
じゃあ、どうやって食べてると思う? どうやって雪の下の土の中のネズミを見つけると思う?

ゆうきくん:
ダイブして見つける。

小菅先生:
おっ、知ってるの? 雪の中にどぼっとダイブするやつ。

ゆうきくん:
うん。

小菅先生:
すごい! そうなんだよ。これ、昔からおじさんも知ってたんだ。雪の中に体半分ぐらい埋まってさ、出てきたときにはちゃんと口にネズミをくわえているんだよ。そうやって取るんだ。だけど、どうしてそこにネズミがいるのがわかったんだろう?

ゆうきくん:
耳で聞いてるのかなぁ。

小菅先生:
おじさんも同じように考えたの。見てるとね、ずーっと雪を見て首をかしげているんだ。きっと地面の音を聞いてるんだろうなと思ったんだよ。誰でもそう思うと思うんだけど、ところがすごいことでさ、「地磁気」って、知ってる? 地球が磁石だって、知ってる? 大きな磁石だって。

ゆうきくん:
知ってる。

小菅先生:
おぉ! それで何かプラスからマイナスへ電気的なものがあるというのは、俺たちには見たって絶対わからない。でも、キツネにはそれが見えるんだって。

ゆうきくん:
えーっ!?

小菅先生:
ネズミがそこにちょろちょろいると、キツネにはその“線”がゆがんで見えるんだって。どうやって見えているのか、おじさんは知らないんだよ。だけどそういう研究があって、発表されていたの。もう、超能力としか言いようがないよね。

ゆうきくん:
えっ……。

小菅先生:
そうやってネズミを取っているから、別に体の色をホッキョクギツネのように変えて自分を隠す必要がないの。

ゆうきくん:
そういうこと……。

小菅先生:
うん。だから夏も秋も冬も春も、色なんか変えなくたっていい。じゃあなんで前足のところだけ黒いかというと、たぶんこれは正面からパッと会った瞬間の仲間のサインだよ。だって、ゆうきちゃんも見て気づいたでしょう? 「あっ、脚の前が黒いじゃん」って。

ゆうきくん:
うん。

小菅先生:
キツネもそう思うんだよ。「あっ、自分と同じだ。自分の仲間だ」ってわかる、非常にいいサインなんだと思う。

ゆうきくん:
ふうん。

小菅先生:
キツネの仲間は世界中にいろんなのがいるんだけど、前足のところのあの部分が黒いのは、日本にいるいわゆるアカギツネだけなんだ。

ゆうきくん:
へぇ~!

小菅先生:
モンゴルだとかいろいろなところにキツネはいるんだ。図鑑で調べたらわかるけど、黒くないんだよ。毛色もちょっとキツネ色と違うからね。生き物たちは「自分はこういう生き物ですよ」ということを、姿とか色、模様とか形で見せて、お互いにそれを見たときには、「仲間だな」ということがわかるようになっていると思うんだ。

ゆうきくん:
へぇ~。

小菅先生:
だから今言った理由で、冬、餌を取るときでも自分を隠す必要なんかないから、いつでも1年中同じ色だということなんだよ。

ゆうきくん:
そうだったんだ。

小菅先生:
でも、ネズミの取り方、びっくりだよね。

ゆうきくん:
うん、びっくり!

小菅先生:
おじさん、あの論文読んだとき、「こんなことがあるのか!」と思った。そういう発想をするのがすごい。なぜその人が見つけたかというと、キツネは餌を取るのに、雪の中にずぼっと埋まるでしょう? あのとき、必ず北東方向に飛ぶんだって。もしくは逆の南西方面に飛ぶんだって。

ゆうきくん:
えーっ……。

小菅先生:
それをなぜかなと疑問に思って研究したら、どうも彼らは地磁気を見ていることがわかったそうなんだ。すごいよね。

――先生、それはあらゆるキツネができることなのか、あるいは北海道のキツネができる?

小菅先生:
いやいや、キツネはみんなできる。キツネだけではなくて、そういうふうに使っている生き物が結構いるって。

――キツネ以外でも?

小菅先生:
うん。われわれ人間には感覚的に全くないものを動物が持ってるって、すごいですよね。そういうことがわかることもすごいと思って。

――川上先生、鳥もそういうのを感じそうですね。

川上先生:
そうですね。鳥も地磁気が見えるというのは、最近の研究でいろいろわかってきています。昔は、渡りをするときにどうやって方向を見定めるのか、星とかいろいろなものを使っているのはわかっていたんですけれども、それだけじゃなくて地磁気を見て、彼らはやっぱり地磁気が目で見えるらしいんです。

――目で見える?

川上先生:
はい。その方向をちゃんと見定めて、例えば太陽とか星の方向だと、天気が悪いときにわからなくなっちゃうわけですよね。でも地磁気だと、天気が悪いときでもちゃんと方角がわかるというので使っていると言われています。

小菅先生:
角度を決めるのに地磁気がいいそうですね。

川上先生:
そうですね。人間はついつい人間が見ているものの中で判断しちゃいますけれども、もしかしたら他の哺乳類とか鳥にとっては普通で、僕らがそういう感覚を失っているから、不思議な感じになっているのかもしれないですよね。

小菅先生:
動物はすごいですよね。生きるためにこういう能力をちゃんと勝ち取ったのか、もともとあったのを俺たちが捨てちゃったのか、わからないですけれど。

――他の生き物からしたら、「人間は地磁気がわからないの? 見えないの?」と思っているかもしれませんね。

小菅先生:
ゆうきくんがすごいのはね、パッと見て、キツネの前足のところが黒いのに目がいったということです。

――季節ごとにどうして変わらないんだろうと思ったというのもね。

小菅先生:
そうそう、それもすごい。しっかりと動物を見ていると思うよ。ゆうきくん、動物好きなの?

ゆうきくん:
好き。

小菅先生:
あぁ、やっぱり。おじさんと一緒だね。

――ゆうきくん、今回の質問についてはわかりましたか?

ゆうきくん:
はい、わかりました。

――よかったです。じゃあ、動物が好きというゆうきくんに、聞いてみようかな。ゆうきくん、2023年は何か楽しいこととか頑張ったこと、ありますか?

ゆうきくん:
リカオンを見れたことがよかったです。

――ん? 何を見た?

ゆうきくん:
リカオン。

小菅先生:
おぉ。どこで見た?

ゆうきくん:
動物園。

小菅先生:
リカオンって、あんまりいないんだよね。

ゆうきくん:
ズーラシアで。

小菅先生:
あぁ、そうか。日本の動物園ではあまり飼っていないんです。

――先生、リカオンというのは?

小菅先生:
南アフリカにいるイヌの仲間なんですけど、集団で狩りをする、あまり大きくないイヌです。珍しいですよ。僕、実はオカバンゴに行ったときにリカオンが見たいと言ったんだけど、見られなかった。そうか、ゆうきくん、ズーラシアで見たんだ。

――よこはま動物園ズーラシアに行って見たんですね。

ゆうきくん:
肉、食べてた。

小菅先生:
いいとこ見れたねぇ。

――リカオンが見たかったの?

ゆうきくん:
見たかった。

小菅先生:
それで調べてズーラシアに行ったの?

ゆうきくん:
うん。

小菅先生:
偉いな~。

――そしたら肉を食べるところが……

ゆうきくん:
見れた。

――ねぇ。また来年、見たい動物とかいるのかな?

ゆうきくん:
あんまりない。

小菅先生:
たくさんいるよ、いろんな動物。

――でも、ゆうきくん、動物が好きっていうのがすごく伝わってきました。すてきな質問をしてくれてありがとうございました。

ゆうきくん:
ありがとうございました。

――またぜひ質問を送ってください。

ゆうきくん:
はい。

――さようなら。

ゆうきくん:
さよなら~。

小菅先生:
さよなら~。


【放送】
2023/12/31 「子ども科学電話相談」

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