むらかみひかるくん(小学5年生・大阪府)からの質問に、「昆虫」の清水聡司先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
清水先生:清水聡司先生(大阪府営箕面公園昆虫館 副館長)
ひかるくん:質問者
――お名前を教えてください。
ひかるくん:
ひかるです。
――どんな質問ですか?
ひかるくん:
家の中の中庭の壁に、1週間ぐらい雨が降っても1~2cmしか動かなかったので不思議に思いました。
――何がいるのかな?
ひかるくん:
バッタです。
――バッタが家の中庭にいて、雨が降ってもずっとそこにいるの?
ひかるくん:
だいたい1~2cmぐらいしか動きませんでした。
――それしか動いていないのはどういう状態なんだろうって、気になるのかな?
ひかるくん:
はい。
――では「昆虫」の清水先生、お願いします。
清水先生:
はい。ひかるくん、こんにちは。
ひかるくん:
こんにちは。
清水先生:
何バッタかって、わかる?
ひかるくん:
わかりません。
清水先生:
形は説明できる? どんな感じとか。
――大きさとか?
清水先生:
そうやね、大きさはどう?
ひかるくん:
遠目からだったからわかりません。
清水先生:
あんまり近くで見てないんや。
ひかるくん:
はい。
清水先生:
今度近くで見てね。えっとね、恐らく、の話で進めますけれども、それは、ここ1週間ぐらいの話?
ひかるくん:
12月の最初ぐらいで起きたこと。
清水先生:
今はついてるかどうか、確認できていない?
ひかるくん:
今はついていません。
清水先生:
うんうん。えっとね、12月に入ってからのお話ということであれば、恐らくそれぐらい長く同じところにいるというのは、弱っているんだと思います。弱っていたんだと。
ひかるくん:
うん。
清水先生:
バッタって、活動できる成虫の時期はほぼ終わりでしょう?
ひかるくん:
はい。
清水先生:
中には成虫で冬越しをするバッタもいるんやけれども、その場合には、恐らくそんなところにじっとくっついていないと思うのね。
ひかるくん:
はい。
清水先生:
だいたい秋の終わりから冬の始まりぐらいにかけて見かけることが多いのは、やっぱりもう寒くなってきて葉っぱも食べられない。寿命が近づいてきたというのもあるかもしれないけれども、寒さのほうで動けなくなってじっとしている、そういう状態のバッタのほうが恐らく普通というか、よく見かけると思います。だからね、恐らく活動ができなくなって壁にくっついて、そのままじっとしていたんだと思います。
ひかるくん:
はい。
清水先生:
もしかしたらまだ多少は動けるので、暖かくなった日に別の場所に移動したのかもしれないですけれども、それぐらいの時期というか冬にかけては、そういう状態のバッタは野外でもよく見かけるので、また見かけたら、ちょっと近寄ってよく観察をしてみてください。元気なときのつかまり方とは微妙に違うかもしれない。生きていたら、例えばお部屋の中の暖かいところに持ってくると普通に活動し始めたりもするので、そういうのも試してみてもらったらいいと思います。
ひかるくん:
はい。
清水先生:
バッタって、もともと草、とがったススキとかイネ科の葉っぱなんかにぎゅっとつかまるのが得意じゃないですか。脚をよく見るとトゲトゲもいっぱいあるし、脚先にはしっかりした爪、それから爪の間に「爪間盤(そうかんばん)」という、爪の間の板ね。吸盤みたいな感じの役割をする器官も持っているので、物にしがみつくのが得意やんか。
ひかるくん:
はい。
清水先生:
だから弱っているというか、ちょっとしんどいなぁってじっとしている状態でも、そういうところにぎゅっとしがみつくのは十分できるので、恐らくそういう状態のバッタを、ひかるくんは見かけたんじゃないかなと思います。
ひかるくん:
はい。
清水先生:
せっかくなのでそれ以外にもお話しすると、例えばバッタがもっと活動をしている時期に草っ原に行くと、草の高いところにじっとしがみついているバッタを見かけることがあります。よく見ると、体から白い粉というか菌糸みたいなものがチロチロ見えることがあるんやけれども、そういう状態のときは、「ボーベリア菌」という菌ね。まぁ、バッタの病気やね。そういうのに侵されて高いところに登らされて、そこから菌が胞子を飛ばす、そういう状況に持って行かれているのも、活動している時期に見かけることがあります。ただ単にじっとしているバッタがいると思ってもいろいろなパターンがあるので、ぜひ近くに行ってそういうのも観察してみてください。そしたらもっとおもしろいことが見えると思います。
ひかるくん:
はい。
――「ボーベリア菌」というのは、菌がバッタをそうさせている、みたいなことなんですか?
清水先生:
そういうことになるんでしょうね。高いところに登らされる、登りたくなる、というほうだと思うんですけれども。
――ちなみに一般的にバッタの活動期というのは、春?
清水先生:
卵で冬越しをして、4月の終わりぐらいからかな、幼虫がふ化し始めて、種類によってちょっと微妙に違いますけれども、秋にかけて成虫になって活動をして終わりというパターンが多いです。ただ中には成虫で冬越しをして、そのまま卵を産んで秋にかけて成虫になってまた冬越しをするのもいます。
身近なところだと、クビキリギスとかツチイナゴとか、そういう種類だと冬越しをするんです。近づいてみて図鑑でそういうのを調べるだけでも、これはどういう状態なんかなぁ、まだこれから冬越しをする場所を探してるのかなぁとか、ひかるくん、わかるかもしれないので、種類の特定というのも、ちょっと大事かもしれない。そういうのも含めてよく観察してみてください。
ひかるくん:
はい。
――ひかるくんのおうちの周りでは、いろいろな虫とか見かけることはあるんですか?
ひかるくん:
あんまり見かけない。
――だから近くで見て、ちょっとびっくりしたのかな?
ひかるくん:
うん。
――そっかそっか。よく見ると「こんなところにも!」って、足元にも結構いるかもしれませんね。
清水先生:
僕なんかは逆に草刈りをしているときに、ポンとバッタが飛び出してきたりして、さっき言ってた、クビキリギスとかツチイナゴとかなんだけど、本当は僕は寝ているところが見たいんです。休眠しているところを観察したくて(笑)。
――だそうです、先生はね。
清水先生:
だから、ひかるくん、そういうのを先に見つけられたらいいなと思います。
――ひかるくん、これからもいろいろ観察してみてくださいね。質問をしてくれてありがとうございました。さようなら。
ひかるくん:
さよなら~。
清水先生:
さよなら~。
【放送】
2023/12/30 「子ども科学電話相談」