11時台を聴く
24/02/23まで

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むとうこはるさん(小学1年生・東京都)からの質問に、「科学」の藤田貢崇先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
藤田先生:藤田貢崇先生(法政大学教授)
こはるさん:質問者


――お名前を教えてください。

こはるさん:
こはるです。

――どんな質問ですか?

こはるさん:
物が濡れているときの色と乾いているときの色はどっちが本当の色ですか?

――こはるさんは、何が濡れているときにそう思ったとか、ありますか?

こはるさん:
お母さんとお風呂に入っているときに、いろんなものが濡れて色が変わるのが不思議だと思ったからです。

――そうなんですね。では「科学」の藤田先生、お願いいたします。

藤田先生:
はい。むとうこはるさん、こんにちは。

こはるさん:
こんにちは。

藤田先生:
物が濡れているときの色と乾いているときの色は違う、と。どっちが本当の色なのかという質問でしたが、こはるさんが見た、濡れているときと乾いているときとで色が違うものって、例えばどういうものがありますか?

こはるさん:
レースのついた布とか毛布です。

藤田先生:
布は確かに変わりますね。布って、乾いているときと濡れているときとではどちらが白っぽいかとか、わかりますか? 濡れているとどんなふうに違うか、説明できますか?

こはるさん:
はい。

藤田先生:
どのように違いますか?

こはるさん:
濡れてるときの色はちょっと濃いと思います。

藤田先生:
そうですね、濃くなりますね。石とかはどうでしょうね。

こはるさん:
石も濃くなります。

藤田先生:
濃くなりますね。そうです、そのとおりです。どうして白くなるかっていうのは説明できますか?

こはるさん:
いいえ。

藤田先生:
難しいですよね。これはですね、乾いていると、さっきこはるさんがお話ししてくれたとおり、白っぽく見えます。どうしてかというと、例えば石のことを説明してみると、石の表面って、とても硬いですよね。

こはるさん:
はい。

藤田先生:
でも実は、とってもわずかなんですけれどもデコボコしているんです。そして石の表面がデコボコしているのと似ていて、布の表面も、よ~く見たら何か細かい繊維がいっぱい出ているのはわかります?

こはるさん:
うううん。

藤田先生:
じゃあね、近くに何かタオルとか布とか、ありますか?

こはるさん:
はい。

藤田先生:
それをじーっと、よーく見てください。よーく目を近づけて見ると、どうですか。何か細かーくなってません?

こはるさん:
はい。

藤田先生:
ねぇ。細かーくなっていますよね。繊維がたくさん絡み合って布が作られているんです。繊維はものすごく細いんです。
実は光って、私たちが物を見たときに、その物の表面からやってくる光を見て、物があるというのがわかるんです。だから光がないと、物は見えないんですね。その証拠に、こはるさんが真っ暗な部屋に入ってしまったら、そこに何かあるかわかりますか?

こはるさん:
うううん。

藤田先生:
わからないですよね。でも懐中電灯で光を照らしたら、何があるかはわかりますよね。

こはるさん:
はい。

藤田先生:
何かあるかもしれないし何もないかもしれないけれど、光があれば物は見えるんです。この光って、とても複雑というかとてもおもしろいもので、布の表面みたいにとっても細かい繊維がいっぱい出ていたり、あるいは乾いたときの石の表面みたいにとてもデコボコしている状態のものに光が当たると、光がいろいろな方向に散らばっちゃうんです。人間は光がいろいろな方向に散らばっちゃうと、それが白っぽく見えてしまう。例えば、空に雲が浮かんでいますね。

こはるさん:
はい。

藤田先生:
雲って何色?

こはるさん:
白です。

藤田先生:
白ですよね。雲がどうして白いかというと、雲って小さな小さな水の粒で出来ているんですけど、その水の粒に当たって光がいろいろな方向に跳ね返ってしまうので、私たちには白に見えるんです。例えば石の表面でも布でも、もしそこが水で濡れるとどういうことが起こるかというと、このデコボコとか細かい繊維を全部ならしちゃうんです。デコボコがまるでないようになっちゃう。布の場合も細かい繊維がまるでないように、水が滑らかにしちゃうんです。「滑らか」の意味はわかります?

こはるさん:
はい。

藤田先生:
水って、滑らかにしちゃうんですよ、この表面を。それで白っぽい色が消えてしまう。だから水に濡れた布は乾いたときよりも濃く見える。濃く見えるというのは、こはるさんは「濃く見える」と言ってくれましたけど、白っぽくはないということですよね。

こはるさん:
はい。

藤田先生:
石もそうですよね。水に濡れると白っぽくはない色に変わりますよね。というふうに、水に濡れると表面を滑らかにしてしまうので、それで白っぽい色が消えてしまうんです。ということで、濡れているときと乾いているときとの色は違うんです。

それで、どっちが本当の色かというのはですね、「本当の色」というのがなかなか難しい言い方で……例えば石。私たち、「岩石プレパラート」というんですけど、道端にある石はごろっと大きな塊でありますけれど、薄く削ることができるんです。薄く薄く削って光が通るほど薄くしてしまえば、石がどんな鉱物で出来ているかとかがわかります。そうすると、白っぽくないんです。とても滑らかに削り上げるので、白っぽい色にはならないんです。そういう意味では、白っぽい色を除いてしまったほうが、本物の色といえば本当の色なのかもしれない。ただ、「本物」の意味がね……。いろいろなことがありますけれども、白っぽくないというのを、本物の、本当の色というふうに考えることができると思うんですね、私は。

でも人間はとてもうまくこの性質を利用しているものがあって、こはるさん、ベッチンという生地は知っていますか? ビロードっていうのかな、そういう生地、わかります?

こはるさん:
……。

藤田先生:
ベルベットとか……。

――昔ですとピアノの上にかけてあるような布とか。

藤田先生:
ちょっと特殊というか厚めの生地があって、わざと白っぽくなるような部分を作ることがあるんです。そうすると質感が出るとか立体感が出るとか、ちょっと立派に見えるとか。そういうふうに、白っぽく見えるから、あるいは白っぽく見えないからというふうにうまく使い分けることがあったりするんです。そういう点では両方とも本物の色だけれども、そのものをよく表しているという点で言えば、濡れたときのほうが本物の色になるかなと私は思いますが、こはるさん、わかってくれたかな?

こはるさん:
はい。

藤田先生:
よかった……。

――「本当の色」というところに疑問を持つのがすごいなと思いました。こはるさん、大丈夫ですか?

こはるさん:
はい。

――よかったです。質問を送ってくれてありがとうございました。

こはるさん:
ありがとうございました。

藤田先生:
ありがとうございました。

――さようなら。

こはるさん:
さよなら~。

藤田先生:
さよなら~。


【放送】
2023/12/29 「子ども科学電話相談」

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