9時台を聴く
24/02/23まで

9時台を聴く
24/02/23まで

なかむらおとさん(小学3年生・長野県)からの質問に、「植物」の田中修先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
田中先生:田中修先生(甲南大学特別客員教授)
おとさん:質問者


――お名前を教えてください。

おとさん:
おとです。

――どんな質問ですか?

おとさん:
植物はタネで子孫を残すと知りました。でも芝生はタネを見たことがありません。芝生はどうやって子孫を残すのですか?

――おとさんは、おうちとか近くに芝生が生えているところがあるのですか?

おとさん:
家の庭に生えています。

――そうなんですね。では「植物」の田中修先生に教えていただきましょう。お願いします。

田中先生:
はい。おとさん、おはようございます。

おとさん:
おはようございます。

田中先生:
家に生えてる芝生のこと、ちょっと教えてくれる?

おとさん:
はい。

田中先生:
それは勝手に生えてるんですか、誰かが栽培されてるんですか?

おとさん:
うーん、なんか家の庭に、もとからたぶん……自分で植えたんだと思います。

田中先生:
世話はしてはるの? 刈ったり。それともほったらかし?

おとさん:
長く伸びてくるのでちょっと切ったりしています。

田中先生:
あぁ、そうですか。タネは見たことないっていうことやけど、花は見たことあるの?

おとさん:
ありません。

田中先生:
花もないのね。それでその芝生は広がってきてんの?

おとさん:
ちょっと広がってきています。

田中先生:
子孫をどうやって残すのかという質問には、何で広がってきてんのか、何で増えてんのかということを含んでるんやね。

おとさん:
はい。

田中先生:
わかりました。今、おとさんが言ったように、花を咲かせる植物はタネで増えるのね。花というのは、タネを作るためやから。

おとさん:
はい。

田中先生:
芝生も、花を咲かせる植物なの。

おとさん:
へぇ~。

田中先生:
だからタネを作るんです。でも、おとさんがあんまり見ないというのは、理由があるのね。でもその理由はちょっと後にして、もっと疑問に思っている、芝生は花を見ないのにどうやって増えるのか、っていうほうを先に答えるね。

おとさん:
はい。

田中先生:
家の庭にある芝生の生えてる地面のとこね、今度ちょっと1回ぴゅっと芝生をのけて、見てみてくれへんか。ほしたらね、地面を横へ横へとはうように伸びてる茎があるんや。「はう」って、わかるかな?

おとさん:
はい。わかります。

田中先生:
横へ横へと、はうように伸びている茎があるんです。「はう」って、ちょっと難しい言葉で「ほふく(匍匐)」という言葉を使うのだけど、はうような茎だから「ほふく茎(けい)」っていうんです。でもそんな難しい日本語は言いにくいから、普通は英語で「ランナー」っていいます。だから「ランナー」って、大きな声で言うて覚えてくれるか。

おとさん:
ランナー!

田中先生:
そうそう。それが今、庭に芝生があるんやったら、ちょっと芝生を押しのけてそれ見てつまみ上げてくれたら、これが伸びていって広がっていくんだと、わかると思う。普通はそれで増えているんです。それにさっき言うたように、ほんとうは花も咲かすしタネも作るんや。なのに何で花も見ないしタネも見ないのかという疑問はね、1つは、花を咲かすって言うけども、普通の花みたいにきれいな花びらがないんや。

おとさん:
へぇ~。

田中先生:
近くに、お米って育ってますか?

おとさん:
はい。

田中先生:
お米って、出来たお米はようわかるけども、花って見ないでしょう?

おとさん:
はい。

田中先生:
あれと同じイネ科という仲間で、きれいな花びらがない植物なんや。

おとさん:
へぇ~。

田中先生:
だから、普通に見ていたんでは、わからないんです。もちろん、芝生は小さいっていうこともあるけどね。きれいな花じゃないから目立たない。もう1つは、普通は芝生って、花を咲かさないようにするんです。さっき、おとさん、「切ってはる」って言ったでしょ?

おとさん:
はい。

田中先生:
あんまり伸びてきたら見かけが悪いからね。しかも花が咲くというのは、「ほ(穂)」といってびゅうっと伸びてきて、茶色か黒みを帯びていて見かけが汚いんや。芝生を育てている人は一面のきれいな緑を見たいから育ててはるんでね、そんなところにひょろひょろと伸びてきて茶色や黒が出てきたら嫌でしょう? だから、「芝刈り」っていう言葉、知ってるか?

おとさん:
はい。

田中先生:
芝刈りって、わざわざ機械まであるんや。あんまり伸びんように、ゴルフ場なんかの芝は芝刈りでずーっと背丈を低く揃えてんやね。伸びてきたら「ほ(穂)」が出て花が咲いて見かけが悪くなるから、だから簡単には、花は見られないんです。おとさんの家の庭も、もしほっといたらきっと5月の始めぐらいに「ほ(穂)」がスーッと伸びてきて茶色とか黒みを帯びた花が咲くから、来年の5月、いっぺん見といて。

おとさん:
はい。

田中先生:
でも家の人が切ってはったら、あかんよ。いいか。

おとさん:
はい。

田中先生:
もう1つ、花咲かすのを嫌がんのはね、花が咲いたらそれが伸びてきて、しかもタネ作ろうとしたら栄養がそっちへ行くんや。ほしたらさっき言ってた、覚えてるかな、横へ横へと伸びていく茎。ランナーや。

おとさん:
はい、ランナー。

田中先生:
うん。それの栄養がみんなそっちに取られてしまって、ランナーが伸びていかないんや。芝生を育てている人はランナーで伸びてきれいな芝生をいっぱい生やそうと思ってはるから、そんなところで役に立たへんようなみかけの悪い花を咲かしたくないの。だから芝生の品種も、できるだけ花が咲きにくい品種を開発してきてるの。

おとさん:
えーっ……。

田中先生:
だから今の理由で、まず花が咲いても、小さくてきれいな花びらも何にもないから気がつかない。よっぽどよく見てないと。

おとさん:
うんうん。

田中先生:
ほっといたらそれで生きるんやけども、大抵、芝っていうのは芝刈りしてるから、花が咲かんようにしてるんやね。しかも咲いたら嫌やから、品種改良してなるべく咲かんようなものを作ってきてるの。だから花をあんまり見ることがないし、もちろんタネっていうのも、あんまり芝生では見ないのね。そのへんで、大体疑問は解いてくれた?

おとさん:
はい。

田中先生:
それでランナーって珍しいけどね、身近なものではイチゴを栽培してはるとこ、見たことあるか?

おとさん:
ちょっとだけあります。

田中先生:
あぁ、そうか。イチゴは、栽培してはったら横へランナーが出てくるんや。イチゴを栽培するときは、大体タネからはしないんや。ランナーをプツプツと切って、そこからまた芽が出て根が出るからそれで育てるの。そしたら何かええことあんのかっていうと、タネから発芽させたら、タネはちっちゃいから時間かかるというのもあるけども、タネで育てたら親と同じ性質じゃなくなんねやね。タネってどうしてできるか、知ってるかな? 花粉がつくやろ?

おとさん:
はい。

田中先生:
花粉というのは、タネを作る親とは別のところから飛んできてる可能性があんねやね。だからそれの性質が混じってしまうから、せっかくおいしい、例えば「あまおう」とかいうようなおいしいイチゴを作ろうと思ってんのに、あまおうのタネを取ってきて育てたら他の性質が混じってしまってるから、あまおうじゃないみたいなものが出来てしまうのね。でもランナーやったら、親から出来てきた、伸びてきた茎やから、同じものができるんや。親と全く同じ性質なんや。

おとさん:
えーっ?

田中先生:
うん。だからランナーというのは、そうしてイチゴなんかでは利用されているの。それで今、1回芝生の実験をしてみようと思ったら、地面のところを見ると茎みたいなものがあるって言ったやろ? それをハサミでプツンと切って、それをどこかに持っていって植えたら、ちゃんと条件よかったらそこからまた芽が出てくるし。

おとさん:
へぇ~そうなんだ。

田中先生:
そうなんや。気をつけなあかんのはね、芝生を雑草化させてしまうと、もうなかなか除草してもダメなんや。自分で一生懸命ランナーを使って伸びていくから。それほどすごい成長力を持っているのも観察できるから、1回やってみてくれるか?

おとさん:
はい、やってみます。

田中先生:
うん、そうしてください。ちょっとほっといてもらうところを作ってもらって、来年の5月の始めぐらいに、「ほ(穂)」が出てきて花が咲くのを観察してくれたらいいと思う。ただ、実験した地下茎をそのへんにほっといたらあかんよ。雑草化したらみんな嫌がるから。

おとさん:
はい。

――おとさん、おうちの人とも相談して、やってみてくださいね。質問をしてくれてありがとうございました。

おとさん:
ありがとうございました。

――さようなら。

おとさん:
さよなら~。

田中先生:
さよなら~。


【放送】
2023/12/29 「子ども科学電話相談」

9時台を聴く
24/02/23まで

9時台を聴く
24/02/23まで