みやざきせんじゅくん(小学2年生・宮城県)からの質問に、「心と体」の篠原菊紀先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
篠原先生:篠原菊紀先生(公立諏訪東京理科大学教授)
せんじゅくん:質問者
――お名前を教えてください。
せんじゅくん:
せんじゅです。
――どんな質問ですか?
せんじゅくん:
唾液は食べ物を溶かすのに、口の中はなんで溶けないんですか?
――おぉ。せんじゅくんは、何か食べているときとかにそう思ったんですか?
せんじゅくん:
はい。ガムを食べているときです。
――そうなんですね。では「心と体」の篠原先生、お願いします。
篠原先生:
はい。みやざきくん、こんにちは。
せんじゅくん:
こんにちはー。
篠原先生:
元気だねぇ。なるほどね。ガムを食べてて、ガムが小さくなっていったわけね。それでこれはガムが溶けているんだと思ったわけね。
せんじゅくん:
ん?
――せんじゅくん、「ん?」っていうのは、どういうことかな?
せんじゅくん:
違います。ガムが溶けているんじゃなくて、ガムを食べているときに口の中にいっぱい唾液が出たから、です。
篠原先生:
あぁ、ガムを食べてたらガムがどんどん小さくなってくるからそう思ったってことじゃなくて……
せんじゅくん:
違います。
篠原先生:
食べてるときに唾液が出てきたけど、その唾液がどうして口の中を溶かさないのかなと思ったということですね。
せんじゅくん:
はい、そういうことです。
篠原先生:
あぁ、なるほどなるほど! よくわかりました。じゃあ、答えていくね。
せんじゅくん:
うん。
篠原先生:
口の中というのは、粘膜とか筋肉とか、そういうのでできているというのは、わかりますか?
せんじゅくん:
ちょっとわかりません。
篠原先生:
うん。たんぱく質という言葉は聞いたことがありますか?
せんじゅくん:
聞いたことあります。
篠原先生:
はい。たんぱく質というのは大事な栄養素の1つで、例えばお肉とかお魚とか、せんじゅくんの体を作るもとになるようなものが、たんぱく質といわれるものになります。みやざきくんは、唾液というのが何か食べ物を溶かしたりするのは知っているということなんだよね。
せんじゅくん:
はい。
篠原先生:
そうだよね。じゃあ唾液は、何を溶かすことができるのかは知っていますか?
せんじゅくん:
はい。
篠原先生:
何を溶かすことができますか?
せんじゅくん:
口の中でかんだ食べ物。
篠原先生:
そうですね。口の中でかんだ食べ物を溶かすことができるんだけど、溶かせる種類っていうのがあるんですよ。でんぷんという言葉は聞いたことがありますか?
せんじゅくん:
聞いたことないです。
篠原先生:
炭水化物はわかりますか?
せんじゅくん:
なんか聞いたことあるような気がします。
篠原先生:
あぁ、そうだね。たぶん「保健」とかで勉強しているのかな。炭水化物というのは、例えばお米とかパンとかパスタとか、エネルギーになるといわれているんだけど、せんじゅくんが元気で動くための物質になるものなのね。
せんじゅくん:
うん。
篠原先生:
その炭水化物の中に、でんぷんという種類のものがあって、これを溶かすことができるのが唾液なんです。だから唾液というのは、ちょっと難しい言葉を使うと、唾液の中にはアミラーゼというものが含まれていて、このアミラーゼは、でんぷんしか壊せないのね。
せんじゅくん:
うん。
篠原先生:
だから唾液は、でんぷんを壊して小さくすることはできるんだけど、たんぱく質を壊すことはできないんです。口の中というのは筋肉とかお肉っぽいものでできているから、結局これを壊すことは、唾液にはできないということなんですね。
せんじゅくん:
あぁ。
篠原先生:
唾液は食べ物を溶かせるけど、筋肉とかそういうものは壊せないので、口の中は溶けていかないということになる。わかりますか?
せんじゅくん:
はい、わかりました。
篠原先生:
みやざきくんは、消化という言葉は聞いたことある?
せんじゅくん:
消化……消化はわかります。
篠原先生:
うん。まず、唾液によって口の中ででんぷんが溶けるというのが消化の一歩になるけど、そのあと、例えば胃の中に入ったり腸の中に入ったりして消化が進んでいくよね。食べ物がどんどん小さく分解されて、体の中に入れるようなかたちになっていく。これが消化なんだけど、口の中では筋肉とかを溶かすような物質は出ていないけど、胃とか腸とかからは筋肉を溶かすようなもの、お肉を溶かすようなもの、つまりお肉とかお魚だって分解して体の中に取り込まなきゃいけないから、そういう物質が出てるんだよね。これが出ているんだから、「胃とか腸だって溶けなきゃおかしい」とか、思わない?
せんじゅくん:
あぁ、確かに思う。
篠原先生:
そうだよね。だからせんじゅくんの考え方から言うと、口の中が溶けないのはわかったにしても、いずれ体の中のどこかでは、筋肉のようなもの、お肉とかも溶かすところが絶対どこかにあるはずだから、それが胃とか腸なんだよね。そうすると、「胃や腸はどうして溶けないの?」という疑問が出てきてもおかしくないんだよ。
せんじゅくん:
うん。
篠原先生:
ね。まぁこれは自分で問題を出して自分で答えているようなものなんだけど、実はそんな心配しなくてもよくて、みんな生きていられるから当たり前の話で、胃とか腸が溶けてたら大変なことになっちゃうんだけどね。
例えば胃なんか特にそうだけど、粘液層といって、胃の壁の上のところにちょっと膜状のというか、ねちっこい液体状のものが結構強く出てきて、胃液とかペプシンとか、そういう分解するものがなかなか胃壁に届かないようにできているんです。腸でも似たようなことが起きないようにしています。
それからちょっと傷がついても、胃の粘膜とか腸の上皮細胞はものすごく速く再生していくのであまり傷が残らない。こんな仕組みで胃や腸は溶けないことがわかっているというか、そういう仕組みになっているので、そこは安心してくださいということになります。いいでしょうか?
せんじゅくん:
はい。
――先生、例えばお米を口の中に入れておくと唾液でトロッと溶けるけど、鶏肉とか豚肉をかまないでずっと口の中に入れていても、溶けない?
篠原先生:
そうですね。口の中で若干ちっちゃくなったりはしますけど、それは消化酵素による分解ではないということになりますね。
――だから唾液の役割としては、でんぷんというものを溶かすということですね。
篠原先生:
はい。
――せんじゅくん、どうでしょうか?
せんじゅくん:
はい。よくわかりました。
篠原先生:
はーい、ありがとー。
――よかったです。また何か疑問があったら質問を送ってくださいね。
せんじゅくん:
はい。
――ありがとうございました。さようなら。
篠原先生:
さよなら〜。
せんじゅくん:
ありがとうございました。さよなら〜。
【放送】
2023/12/17 「子ども科学電話相談」