いそべゆりなさん(小学4年生・福岡県)からの質問に、「動物」の田中理恵子先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
田中先生:田中理恵子先生(埼玉県こども動物自然公園園長)
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部講師)
ゆりなさん:質問者
――お名前を教えてください。
ゆりなさん:
ゆりなです。
――どんな質問ですか?
ゆりなさん:
コウモリはぶら下がっているけれど、おしっこをするときに自分にかからないのですか?
――ほんとそうですよね。逆さまですもんね。 ゆりなさん、コウモリは見たことがあるんですか?
ゆりなさん:
はい。
――実際に?
ゆりなさん:
はい。
――それで疑問がわいたのかな。では「動物」担当の田中理恵子先生に教えていただきましょう。田中先生、お願いします。
田中先生:
はい。ゆりなさん、こんにちは。
ゆりなさん:
こんにちは。
田中先生:
コウモリを見たことがあるって、言ってたね。
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
どこで見たの?
ゆりなさん:
長崎県のバイオパークで見ました。
田中先生:
動物園で見たんですね。そのときに逆さまにぶら下がっていて、おしっこのことが気になった?
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
そうか、そうだよね。私も、初めて見たときに同じような心配をしました。ゆりなさんに質問ですけど、そもそもコウモリはどうして逆さになっているのか、考えたことある?
ゆりなさん:
……。
田中先生:
難しい?
ゆりなさん:
あるけど、わかりません。
田中先生:
うん。どうしてかっていうとね、まずコウモリは哺乳類という仲間なんです。わかりますか?
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
コウモリは飛んでいるから、ときどき鳥だと思っている人もいるんですけど、私たち人間と先祖が同じで、犬とか猫とも同じでミルクを飲んで大きくなる哺乳類なんです。だけど、空を飛んで虫を食べたり果物を食べたり……ということを選んでいった動物なんです。空を飛ぶには、たくさん翼を動かさなきゃいけないよね。
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
それで翼を動かすための胸の筋肉が発達したんです。それから、飛ぶにはなるべく体が軽いほうがいいでしょう?
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
だから足の筋肉はほとんどないんです。
ゆりなさん:
へぇ~。
田中先生:
足の爪のほうを枝に引っ掛けてぶら下がっていると、敵に捕まることもないし楽ですよね。
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
だから逆さにぶら下がることになっちゃったんです。
ゆりなさん:
へぇ~。
田中先生:
逆さにぶら下がっているコウモリは、じゃあ、おしっこどうするんだろうという話ですよね。
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
実は私、昔動物園で、オオコウモリといって人間の顔ぐらいの大きさかな、大きいコウモリを見ていたら、急に頭を上にしておしっこしたことがあるんです。どうやって頭を上にしたかというと、ゆりなさん、コウモリの翼は見たことある?
ゆりなさん:
はい、あります。
田中先生:
例えば、ゆりなさん、今、片方の手を横に伸ばすことができますか?
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
その手をパーのかたちにしてみてください。(コウモリは)親指の爪がすごくしっかりしているんです。親指の爪を残して、他の4本の指がビョーンと地面のほうに広がるように長く伸びます。コウモリの翼は、その指の間に膜ができて飛べるようになったんです。
ゆりなさん:
へぇ~!
田中先生:
何となく想像できた?
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
親指の爪はとてもしっかりしていて、逆さになっているけど「よいしょ!」ってその親指の爪を今度枝に引っ掛けて、体を逆にぶらんとぶら下げておしっこするんです。
ゆりなさん:
へぇ~。
田中先生:
だから自分にはかからなかったんです。でもね、全部のコウモリがそうするわけではなくて、コウモリは世界に1,200種類とか1,400種類もいるんです。長崎のバイオパークで見たコウモリは大きかった?
ゆりなさん:
小さいほうでした。
田中先生:
そっか。例えばもう本当に人間の顔ぐらいの大きさのコウモリもいれば、大人の人が手を握るとその中にすっぽり入っちゃうようなコウモリもいて、いっぱい、いろんなコウモリがいるのね。虫を食べるのもいれば果物を食べるものもいます。
私が勤めている埼玉県こども動物自然公園にも、長い名前なんだけど、セバタンビヘラコウモリっていう、ヘラコウモリという小さいコウモリがいるんです。そのコウモリを私が飼育係として担当したときは、頭をひっくり返しておしっこしているのを見たことがないんですよ。
ゆりなさん:
えーっ?
田中先生:
見たことがないの。大きいコウモリは前にそうしていたから、おかしいなと思って他のスタッフと見てみたんです。そしたら、飛びながらしてました。
ゆりなさん:
えーっ!
田中先生:
そして、つかまったまま、逆さのままでしているコウモリもいたんです。どうやってしていたかというと、両足を使ってぶら~んとぶら下がっているんだけど、片方の足を外してちょっと体を斜めにして、自分にかからないように、ぴゅってしているコウモリもいました。
ゆりなさん:
えーっ……。
田中先生:
さらにびっくりすることに、足を外さないでして自分の顔にかかっちゃっているコウモリもいたんです。だからね、たぶん1,000種類、もっといるから、いろいろなおしっこのしかたがあると思うんです。たくさんのコウモリ、前足の爪などが特異なコウモリは、恐らくくるっとひっくり返って人間と同じ姿勢でおしっこできちゃうんだけど、そこまで特異な力があまりないコウモリは、そのままするんだけど体を傾けたり、例えば“体斜めタイプ”だったり、そのままにしちゃったり、あと飛びながらしたりとか、いろんなのがいるんです。
ゆりなさん:
へぇ~。
田中先生:
動物園にいる同じ種類のコウモリの中でも、足を外してするタイプもいれば、自分にちょっとかかっちゃったのを一生懸命拭いてたり、そういうコウモリもいるみたいなんですね。だからいろいろかなと思います。ゆりなさん、コウモリ、好き?
ゆりなさん:
気になってはいたけど……。
田中先生:
コウモリって、ハロウィーンのときとかに悪魔の仲間みたいなイメージとか、血を吸うとかいろんなイメージがあって、でも実際に血を吸うコウモリというのは、本当は1,200~1,400種いる中で3つだけなんですよ。
ゆりなさん:
えっ!
田中先生:
そう。そういうちょっと偏ったイメージもあったりするけど、今みたいにおしっこ1つとっても、実はたぶんやり方がいろいろあります。ゆりなさんが住んでいるのは福岡県かな?
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
福岡にも例えば街なかのビルやおうちのところにも、アブラコウモリという小さいコウモリが飛んでいるし、あと日本のいくつかの動物園ではいろいろなコウモリを飼っていますから、それぞれ観察してみるとおもしろいと思います。
ゆりなさん:
はい。
田中先生:
ぜひ観察してみてください。そしてコウモリのことを大好きになってもらえるとうれしいです。
ゆりなさん:
はい。
――田中先生、そうしますと、飛びながらだったり、犬は片足上げたりしますけれどもそんなふうにちょっと体をずらしたりして、コウモリもいろいろ工夫しているんですね。
田中先生:
そうだと思うんですよね。中にはちょっとへたなコウモリもいたり。私、昔、タイのコウモリ洞窟にコウモリを見に行ったことがあるんです。ある時間になると洞窟の中から一斉に何十万、何百万羽ものコウモリがバーッと空に飛び出るんです。そのときに、おしっこの雨をくらいました(笑)。今ですと衛生的に非常にアレなんですけど、それだけみんなおしっこをたぶんしながら、おしっこをして体を軽くして飛んでいくんだと思うんです。
――コウモリも、顔や体におしっこがかかるのはきっと嫌ですよね。
田中先生:
たぶん嫌だと思いますね。体を横にしたり、かかると急いで拭いたりしていましたので、嫌だと思います。
――ゆりなちゃん、驚きましたね。
ゆりなさん:
はい。
――林先生、魚もおしっこしますよね。
林先生:
しますよ、はい。
――それは水の中で、しゃっ、と?
林先生:
はい。私たちはプールで泳いだり海水浴のとき、魚と同じようにおしっこをしてはいけないですけどね。
――人間の場合はね(笑)。
林先生:
魚はやっぱり泳ぎながらおしっこします。
ヤエヤマオオコウモリという沖縄にいるコウモリが、夕方になると群れて飛んでいくんですけど、そこの下で写真を撮ろうと思ったら、田中先生と同じで飛び立つときにおしっこの大雨でした(笑)。
――ゆりなさん、田中先生も林先生も、コウモリのおしっこの雨を浴びた経験があるということでしたよ。それにしてもコウモリはいろいろなタイプがいるんですって。驚きましたね。これからもじっくり観察して、コウモリのことも好きになってほしいですって、田中先生がおっしゃってましたけど、どうでしょう。もし機会があったら、おしっこかけられないように注意して観察してみてください。
ゆりなさん:
はい。
――おもしろい質問をしてくれて、ありがとうございました。
ゆりなさん:
ありがとうございました。
田中先生:
ありがとうございました。
――また何か疑問があったら送ってくださいね。さようなら。
ゆりなさん:
はい。さよなら~。
田中先生:
さよなら~。
【放送】
2023/12/10 「子ども科学電話相談」