小林先生と田中先生の恐竜発掘報告に“子ども記者”が迫ります

24/01/21まで

子ども科学電話相談

放送日:2023/11/26

#子ども科学電話相談#サイエンス#SDGs#恐竜

10時台を聴く
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特別企画「恐竜発掘報告2023」と題して、せらゆうわくん(小学5年生・東京都)と、ちゅうどうゆずかさん(小学6年生 岐阜県)の質問に、「恐竜」の小林快次先生と田中康平先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
小林先生:小林快次先生(北海道大学総合博物館教授)
田中先生:田中康平先生(筑波大学生命環境系助教)
成島先生:成島悦雄先生(元・井の頭自然文化園園長/獣医師)
ゆうわくん:質問者
ゆずかさん:質問者

解決しても新たな謎が。「また行かなきゃ」

――小林先生は、ことし(2023年)8月にアラスカとモンゴル、さらに田中先生と合流して、10月にはウズベキスタンに発掘調査に行かれました。発掘の成果や現地でどんなふうに調査したのかを、小林先生と田中先生にお話しいただきます。
まずはお二人ともお元気でお戻りになって、本当によかったです。小林先生、ひと言でいうと今回の調査はどうでしたか。

小林先生:
いい発見がたくさんありましたし、調査に行くとまた謎が増えるんですよね。1個解決に向かうなと思ったらまた新しい疑問が生まれたりして、「また行かなきゃ」って(笑)。

――小林先生は、発表する前のことをポロッとおっしゃることがありますが。

小林先生:
はい。きょうもサービスしましょうか(笑)。

田中先生:
ほどほどにしていただいて(笑)。

――そんなサービスも期待しつつ(笑)、早速伺ってまいりましょう。きょうは、“子ども記者”になって、小林先生と田中先生に発掘のことをいろいろ聞きたいというお二人のお子さんとつながっています。モニターでお顔を見ながらお話しできるようになっています。

ハドロ系は見つかりましたか?

――まずは東京都のお友達です。お名前を教えてください。

ゆうわくん:
ゆうわです。

――ちなみに好きな恐竜は何ですか?

ゆうわくん:
ハドロサウルスとかデイノケイルスとかマイプです。

――わぁ、いろいろ出てきました。そしてもう一人、岐阜県のお友達ともつながっています。お名前を教えてください。

ゆずかさん:
ゆずかです。

――ゆずかさんも恐竜好きですか?

ゆずかさん:
はい。

――ちなみに好きな恐竜は?

ゆずかさん:
パキケファロサウルスです。

――ではまず、ゆうわくんから質問をお願いします。

ゆうわくん:
僕はハドロサウルス類が好きなのですが、ことしの調査でハドロ系はたくさん見つかりましたか? あと、去年の密着番組で見たのですが、去年掘り切れなかったハドロサウルス類の化石は掘り出せましたか?

――これは小林先生ですか?

小林先生:
僕が答えていいかな? ゆうわくん。

ゆうわくん:
はい。

小林先生:
ちょっと1個聞きたいんだけど、ハドロ系って具体的にどんなハドロが好きなの?

ゆうわくん:
進化型の、というか、カムイサウルスとか。

小林先生:
はい、待ってました! カムイサウルスと言うのを(笑)。だってデイノケイルスが出てマイプまで出たから、ハドロ系と言わないで……

――カムイサウルスという名前を付けたのは……

小林先生:
私が田中先生と一緒に名前を付けました。ありがとうございます。それで質問の答えだけど、見つかりました。

ゆうわくん:
おぉー!

小林先生:
アラスカでは100個近くの足跡が、ユーコン川というアラスカ州を横断しているでっかい川があるんだけど、その川沿いで見つかりました。今回初めて研究者がしっかり調査として入ったんです。なので、まっさらというかほとんど研究されていない、誰も研究していないところで、“ハドロサウルス類”の足跡が小さいのから大きいのまでたくさん見つかりました。

ゆうわくん:
へぇ〜。

小林先生:
子どもだったり大人だったり大人になりきっていないのだったり、そういう足跡が見つかっています。今、質問にあった番組は「発掘ロストワールド」だよね。

ゆうわくん:
はい。

小林先生:
去年は田中先生にも一緒に発掘に参加してもらったんだけど腕の一部しか取れなくて、ことしは体の、グランドピアノぐらいの大きさの、「ジャケット」っていうんだけどそれをかぶせて結局取ったんです。まだ次から次へ骨が出てきているから、また来年。でもだいたい大方、発掘は終わったかなとは思っています。

ゆうわくん:
へぇ〜。

小林先生:
たぶんそれも、まだ確定はしていないんだけど新しい恐竜かなと先生は思っています。

ゆうわくん:
おおー!

小林先生:
なので、乞うご期待。

ゆうわくん:
ありがとうございます。

小林先生:
ウズベキスタンはどうだったのか、田中先生に聞いてみましょう。

田中先生:
はい。ゆうわくん、こんにちは。

ゆうわくん:
こんにちは。

田中先生:
ゆうわくん、この化石、見えてるかな?

――今、田中先生が手にお持ちのものですね。

ゆうわくん:
はい。

田中先生:
何の化石かわかるかな?

ゆうわくん:
えーっと、歯?

田中先生:
歯だと思う? これ実は、ゆうわくんが好きなハドロサウルス類の化石で、指の先っぽ、爪の化石です。

ゆうわくん:
えーっ……。

田中先生:
ウズベキスタンで見つけた化石で、半円型の形をしているんですけど。

――直径がどれくらいでしょう?

田中先生:
5cmくらいでしょうか。ウズベキスタンではモンゴルと違って全身骨格は見つかっていないんだけれども、調査した場所ではね。ただ、恐竜のパーツみたいな歯とか爪とか体の骨みたいなものが結構いっぱい落ちています。そういうのを拾ってどういう恐竜がいるのかを研究しているんだけど、ハドロサウルスの仲間とか、あと歯の化石とか背骨の化石とかもいっぱい見つかりました。

小林先生と田中先生が今回ウズベキスタンで発掘した化石

ゆうわくん:
えーっ……。

田中先生:
ハドロ系はウズベキスタンにもたくさんいたのかなということが、わかってきました。

小林先生:
おもしろいのが、アラスカとモンゴルとウズベキスタンで見つかったのは、ほとんど同じ時代の恐竜なの。すごく遠い場所なんだけど、それぞれにハドロ系の足跡だったり全身骨格だったり歯だったり爪だったりが見つかっているので、これから田中先生と共同して、その時代の恐竜がどういう生活をしていたのか、「多様性」というんだけど、どんな恐竜たちと一緒に過ごしていたのかみたいなことを、追求しようと思っています。

ゆうわくん:
おぉ……。

――同じ時代に離れた場所で同じ種類の恐竜たちが生きていたことがわかった、と?

小林先生:
そうなんです。僕の場合は、田中先生もそうなんですけど、北アメリカ大陸とアジア大陸の移動だったりでアラスカを通るんですけど、あとはシルクロードみたいな感じで、日本から今度はヨーロッパに向けて恐竜がどう移動していたかというのも田中先生とやっているので、結構おもしろいんです。

膨大な種類の恐竜をどうしたら覚えられますか?

――続いて、ゆずかさん、質問をお願いします。

ゆずかさん:
はい。テレビで小林先生が石みたいな化石を拾って、すぐにこれがどの恐竜のどこの骨かを判断されていました。どうやったら膨大な種類の恐竜の骨まで覚えられますか?

小林先生:
これはね、経験です。たくさんいろいろな国に行って骨を見るのと、あとはやっぱり発掘。論文とかで骨の形を見ることはできるんだけど、実際に触るのがすごく大事なのね。今はバーチャルというかそういう世界になってきているけれど、やっぱり本物の骨を見て触ってという、五感を使って骨の1個1個を、覚えるんじゃなくて、体で……なんていうんだろう、なじませるっていうか覚えるんです。そうすると何か骨が出てきたときに、「あ、見たことあるな」と、そういうので認識できたりしますかね、田中先生。

田中先生:
今、私、「うん、うん」ってうなずきながら聞いていたんですけど、僕、骨を見るのがすごく苦手なんですよ。僕は卵を専門にやってきたので卵はわかるんですけど、小林先生と一緒に調査で歩いていても、小林先生はどんどん「これは○○サウルスの○○だ」って言っていくんですけど、僕は横で「あぁ、そうなのか」と感心しながら聞いているんですよね。

小林先生:
でもそれは卵だと逆だもんね。

田中先生:
そうですね。

小林先生:
なんかよくわからない卵の殻を見て田中先生はすぐ「○○ウーリサス!」とかね。

田中先生:
そうですね(笑)。

――先生方にもそれぞれ分野があって。

小林先生:
あります。得意分野がありますね。

――発掘調査などに行けない私たちからすると、どういったところでそういうものを見たりできますか?

小林先生:
大きい大たい骨とか恐竜の化石を触れるところがあります。でも基本は触れないですよね。僕のおすすめは、今の動物の骨、ですね。基本的に骨は、違うんですけど似ているところもたくさんあって、体の構造は結構共通点がありますからね。じゃあどこで動物の骨を手に入れるかということなんですけど、成島先生、いかがでしょう。

成島先生:
なかなか触るというのは難しいんですけれども、例えばフライドチキンを食べるとか、そういうときに骨が出てきますから、鳥は恐竜の子孫というか同じものでしょうから、そういうところから想像するのもいいかもしれない。

小林先生:
そうそう。骨のついた鶏肉とかを大事にとっておいてその骨を触ってみると、足の骨ってこんな形なんだな、体の骨はこんな感じかなとか、恐竜の骨を想像できるかもしれない。

――博物館なんかでも見られるでしょうかね。

田中先生:
岐阜県には県立博物館がありますね。

――身近なところだと、鶏肉を食べたときに骨を見てみるのもいいそうです。

一番楽しかったことと過酷だったことは?

――次は、ゆうわくん、お願いします。

ゆうわくん:
ことし一番楽しかった調査地、過酷だった調査地を、お二人の先生、それぞれ教えてください。小林先生は3か国の中で、田中先生はウズベキスタンの中のそれぞれの場所で、教えてください。

――おぉ、「記者」ですねぇ!

小林先生:
どちらから答えましょうか。

ゆうわくん:
えーっと、どちらでも!

小林先生:
じゃあ、田中先生。

田中先生:
僕はウズベキスタンしか行ってないから、ウズベキスタンの話になっちゃうんだけど、今回3つの地域に行って、そのうち1か所で化石がたくさん見つかったのね。もともとそこは恐竜化石が見つかる場所で、キジルクム砂漠というところなんです。僕も論文で読んだりしていた有名な場所だから、そこに行って実際に恐竜化石を見つけたのはすごくうれしかったです。しかも、ウズベキスタンは今回で3回目なのね。ようやくついに自分たちの手で恐竜化石を見つけたというのが、すごくうれしかったことです。

過酷だったことは……寒かったり崖のところに行ったりとかいろいろあったんですけど、個人的には、小林先生ともう一人の先生と一緒にホテルの部屋に泊まっているときに、小林先生が冷房をガンガンかけて、10月なのに一番低い温度で冷房をかけるから、それが一番過酷でした(笑)。

ゆうわくん:
ええっ!

小林先生:
リモコン隠してね。

田中先生:
そう! リモコンを隠すの、小林先生。

――温度を変えられないように? まさかの過酷なできごとですね(笑)。

田中先生:
そうなんです。調査はとても楽しいです。

――小林先生はいかがですか。

小林先生:
楽しいのは、当然発見もそうなんだけど、田中先生のウズベキスタンもそうだしアラスカもモンゴルもそうなんだけど、一緒に仲間と調査をしているのが楽しいの。みんなで笑いながら、過酷ではなくて本当にもう楽しい。調査といいつつ旅行に近いみたいで、終わったあとみんなで楽しかったねって帰るので、何やっても楽しいというのはあります。当然その中には新しい発見とか、ことしもモンゴルでもアラスカでもウズベキスタンでもありましたし。
過酷なところっていうのは、基本、ないね。あえて言うと、田中先生の室内の温度設定が高すぎる(笑)。それとあとやっぱり、おなかを壊したりするんだよね。

ゆうわくん:
あぁ。

小林先生:
モンゴルだと、ことしは全員、調査に参加した先生だったり北大生だったりOBの人とかも、みんなおなか壊しちゃった。あれは大変といえば大変だけど、よくあることなので。

ゆうわくん:
えーっ。

小林先生:
初めての学生とか院生は結構苦しんでたね。

――生活環境も変わったりしますしね。

小林先生:
そうそう。モンゴルの砂漠って、平らで隠れるところないんです。

ゆうわくん:
あはは。

小林先生:
急にトイレに行きたくなっても探すのが大変っていう(笑)。みんな必死。トイレ関係大変ですね。

発掘してすぐに新種とわかりますか?

――ゆずかさん、もう一問いきましょうか。

ゆずかさん:
はい。2016年に発掘した恐竜を、先日、「ヤキュリニクス・ヤルウイ」と命名されました。発掘したとき、すぐに新種とわかるのですか? 発掘されてから今までどうして教えてくれなかったのですか? 早く、知りたいです。また、どんな恐竜なんですか?

――なんでもっと早く教えてくれないんですか、と(笑)。それから、すぐ新種だとわかるんですかということですが。

小林先生:
わかんないです、正直。発見したのはモンゴル人だったんだけど、それが、「アルバレッツサウルス類」っていうんだけど、モノニクスとかの一本指で有名な恐竜だったらすぐわかります。頭から尻尾から全身であったからすごい発見なのはわかったんだけど、だからといってそれが新しいかどうかというのは、その場でわからないことが多いです。

ことしモンゴルで見つけたハドロサウルス類が新しいんじゃないかと思っているのは、他の恐竜に見られない特徴が見えたからなんだけど、ヤキュリニクスの場合は、そのときはわからなかったです。そのあとで、「クリーニング」といって岩から骨を出す作業をして、これは僕の大学院生で、くぼこうたくんが修士論文・博士論文でやった成果なので、彼の研究なのでなかなか出せなかったんです。別に内緒にしているわけじゃないんだけど(笑)、彼の研究で、新しいということがわかってきたんです。

しかも、どこまで知っているのかわからないんだけど、寝姿のままの化石なんだよね。だから鳥みたいに体を巻いた状態で、体温が逃げないようにという鳥っぽい姿勢で化石になったというのが、すごくおもしろいところなのね。恐竜の寝姿というのがなかなかわからないんだけど、今回、一番原始的な鳥のような寝姿で寝ていた恐竜の化石を発掘したので、非常に大きい発見だったというのがありました。

ゆずかさん:
もう1つ、いいですか?

小林先生:
はい。

ゆずかさん:
どうやって寝ていたような化石になったかというのはわかったんですか?

小林先生:
えーっと……くぼくんという大学院生がある仮説を持っていたんだけど、、、不思議だよね、寝たままでっていうのは。言っていいのかわからないんだけど、彼の仮説では、穴の中にいたんじゃないか、みたいな。

ゆずかさん:
あぁ……。

小林先生:
それが崩れて、という考えもあるんだけど、それはまた、くぼくんが新しい研究で証明してくれると思うんだ。でも、わかんないんだよね。恐竜の生活の瞬間、例えば格闘化石とか有名なのがあるんだけど、どうやって埋もれたのか、どうやって死んで化石になったのかは結構謎が多かったりします。だから今の質問は、正直、先生もわからないです。不思議ですね。

――まず仮説を立てて、それを掘り下げていくということなんですね。

小林先生:
そうですね。ちゃんとした証明がないと、かなりの想像の部分が入ってしまうとサイエンスじゃなくなるので、もっと証拠をそろえてとは思うんですけど、ただおもしろい仮説かなとは思っています。

いつか一緒に発掘調査。そんな日が来るかもね

――ゆうわくんとゆづかさんは、発掘調査とか行ってみたい?

ゆうわくん:
はい。

――ゆずかさんも?

ゆずかさん:
いえ。お風呂に入れないからちょっと……。

小林先生:
大丈夫だよ、お風呂入れなくても。1週間や2週間ぐらい全然大丈夫だよ。

ゆずかさん:
えっ。

田中先生:
僕の調査には女性の学生さんも来てますよね。

小林先生:
うちも女性の学生も来てるし、全然平気です。心配なく。あと、テントの中できれいにするやりかたとかあるから。

ゆずかさん:
えーっ。

小林先生:
あと、乾燥してるからそんなにベタベタしないし、においもしないし、全然大丈夫ですよ。

――ちょっと心が揺らいだかな。

田中先生:
クーラーには気を付けて(笑)。

小林先生:
ははは。

――誰と一緒の部屋になるかという問題ですね(笑)。ということで、記者さんたち、いろいろ質問してくれましたが大丈夫でしょうか?

ゆずかさん:
はい。

ゆうわくん:
最後にいいですか? お二人の本をたくさん読んでいてすごくおもしろいので、ことしの発掘調査に関する新しい本を書いてほしいです。

小林先生:
田中先生、常に細かくメモを取っているので、たぶん出してくれると思います。

田中先生:
そのうちね。去年の調査のことはちょっとだけ今度出る私の本に書いてあります。ぜひ読んでみてくださいね。

ゆうわくん:
はい。

――ゆうわくん、きょう聞いてみていかがでしたか?

ゆうわくん:
意外なことも知れたし、おなかを壊したりとか大変さもわかって、とてもおもしろかったです。

――ありがとうございます。ゆずかさん、どうでしたか?

ゆずかさん:
いろいろなことが聞けてとても楽しかったです。

――いろいろ聞いてくれてありがとうございました。先生方からもお願いします。

田中先生:
二人とも、僕たちがふだん話さないような内容の質問もしてくれてとても楽しかったです。ぜひ将来、一緒に発掘調査に出かけましょう。

ゆうわくん:
はい!

ゆずかさん:
はい!

小林先生:
ゆうわくん、ゆずかさん、田中先生も言いましたけど、一緒に調査行きましょうね。

ゆうわくん:
はい!

ゆずかさん:
はい!

――そんな日が来るかもしれません。お二人の子ども記者さん、ありがとうございました。

ゆうわくん:
ありがとうございました。

ゆずかさん:
ありがとうございました。

小林先生:
ありがとうー。

田中先生:
ありがとー。

――以上、恐竜発掘報告2023でした。


【放送】
2023/11/26 「子ども科学電話相談」

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