10時台を聴く
24/01/07まで

10時台を聴く
24/01/07まで

むとうちかさん(小学2年生・北海道)からの質問に、「科学」の藤田貢崇先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
藤田先生:藤田貢崇先生(法政大学教授)
篠原先生:篠原菊紀先生(公立諏訪東京理科大学教授)
川上先生:川上和人先生(森林総合研究所 鳥獣生態研究室長)
ちかさん:質問者


――お名前を教えてください。

ちかさん:
ちかです。

――どんな質問ですか?

ちかさん:
どうして人間はいろいろなものを作れるようになったんですか?

――ちかさん、どういうところからこの質問が湧いたんですか?

ちかさん:
考えてみたら思いついた。

――不思議ですものね。ではこれは「科学」の藤田先生、お願いします。

藤田先生:
はい。むとうちかさん、こんにちは。

ちかさん:
こんにちは。

藤田先生:
どうして人間はいろいろなものを作れるようになったのかって、これきっと、難しいですよね。

ちかさん:
はい。

藤田先生:
まず、私が考えていることをちょっとお話ししましょう。ちかさん、他の動物と人間とで大きく違うことは何だと思います?

ちかさん:
しゃべれたり書いたりとか。

藤田先生:
そうですよね。人ってたぶん、相手と話をしたり、私がこう考えていますということを他の人に伝えることができるようになっていますよね。そういうのを「コミュニケーション」といって、きっと他の動物もコミュニケーションをとれるとは思いますけど、人間にはたくさんの言葉がありますよね。

ちかさん:
うん。

藤田先生:
いろいろな種類、例えばどんな色でもたくさんの表現があるし、国語辞典があるようにたくさんの言葉がありますけど、そういうふうに言葉をたくさん持っているから自分の考えを相手に伝えやすいということが、道具を作るために、いろいろなものを作るために、1つ有効だったんじゃないかなと私は思うんです。

ちかさん:
なるほど……。

藤田先生:
他に見た目で、身の回りの動物と私たち、ヒトが違うところって、あります?

ちかさん:
細かいことができるようになっている。

藤田先生:
細かいことができますよね。細かいことをするときは体のどこを使います?

ちかさん:
指先とか。

藤田先生:
指先、使いますよね。普通の動物は4本足で歩きますよね。でも人間は二足歩行といって、2本の足で歩きます。二足歩行をできるようになると、両手が自由に使えるようになりますね。両手が使えるようになるためには、体をまっすぐ、空に向けて姿勢を立てなきゃいけないですよね。

ちかさん:
はい。

藤田先生:
イヌとかネコとかの動物は四足歩行しますけれども、頭の位置が確かに腕の上のほうには付いているけれど、四足歩行する動物は頭が前にぴょんと出ているかたちになりますね。頭がどんどん重くなっていったら、歩きにくいと思いません?

ちかさん:
はい。

藤田先生:
きっとなかなか前を向いて歩けないですよね。ところがヒトというのは、頭が一番上に来るようになりますね。そうすると背骨で重たい頭をうまく支えられるんですよ。ちかさん、そんなに頭の重さを感じること、ないですよね。

ちかさん:
ないです。

藤田先生:
なんかもう肩が凝ってしょうがない……っていうこと、ないですよね。そういうふうに重たい頭を自然に支えられる構造が、脳がより大きくなる方向に長い間進むことができたかたちだと思うんです。両手が自由になって脳が大きくなっていったという考え方もできるし、あるいは逆に、脳が大きくなったから安定させるために直立歩行した、というのは、どっちが先かは結構難しいところではあるけれど、ちかさんがお話ししてくれたとおり、いずれにせよ、二足歩行して両手が自由になったということは、いろんなことができる1つの道筋だったんだと思うんです。

ちかさん:
はい。

藤田先生:
きょうは「心と体」の篠原先生がいらっしゃいますので、他にどんなことがあるか、聞いてみましょうか。よろしいですか。

ちかさん:
はい。

藤田先生:
では篠原先生、お願いします。

篠原先生:
はい。ちかさん、こんにちは〜。

ちかさん:
こんにちは〜。

篠原先生:
いま、藤田先生がお話しくださったように、ヒトは直立歩行することで、頭がどんどん大きくなることができるようになったんです。実際、人間の脳は他の動物より大きいんですよね。特に大きいのが、ちかさんのおでこのあたり、頭の前のほうですね。前頭前野というんですけれど、そこがすごく大きくなっています。鳥もなかなかすごいんだけど、人は特に大きくなっています。そこは、「あれはこういうふうにして、これはこうやって、こっちはこうやっておきながら、これをこうやる」とかいうふうに、いくつもいろいろなことを覚えたりしながら作業をしていくことに、すごく関係する場所なんです。そこが大きくなってそういう力が発達したから、「これはこういうふうにやって次にこれを付け足してこれをやったら、こんなこともできる」というふうにして、いろいろな道具が作れるようになったというふうには考えられると思います。いいですか?

ちかさん:
はい。

篠原先生:
もう1つ、よく言われるのは、もうちょっと時代があとになっての話ですが、人間というのは、お金を発明しました。お金を発明したことによって、例えばある人は農機具、農業の道具だけを作って、それを売って自分は生活をしていくということができるようになった。あるいは家具だけ作って、それを売って生きていくことができるようになった。あるいは服を作って、売って生きていくことができるようになった。

ちかさん:
はい。

篠原先生:
そうすると、ある人が農具をどんどん改良してどんどん良くして、農業の道具をたくさん作ったり、もっといいものを作ったりということができるようになった。そのことによって、技術がすごく発達して道具がたくさん生まれてきたというふうにも考えられています。さらにきょうは「鳥」の川上先生もいて、先生もおもしろい意見をお持ちのようなので、川上先生にもお話をちょっと聞きたいと思いますが、いいですか?

ちかさん:
はい。

川上先生:
はい。どうもこんにちは、川上でーす。実は鳥の中にも道具を使う鳥がいるんですけれども……

ちかさん:
カラスとか。

川上先生:
あっ、よく知ってますね! カラスの中でも例えばニューカレドニアという島に住んでるカレドニアガラスなんかが、すごく道具を作ることが知られていたり、ガラパゴス諸島にいるキツツキフィンチというのも、道具を作って使うことが知られているんです。そういう場所、島というのは、小さい陸地なので食べ物がすごく減っちゃったりすることがあるんじゃないかなと思います。そういう困ったときに工夫して食べられるようにするというので、なかなか厳しいところに住んでいる鳥が、実は道具を使うようになったりしているんですね。

ちかさん:
はい。

川上先生:
ものを考えるのは結構大変なことで、とてもエネルギーを使うんです。だから命の危険があるようなとても大変な場所、食べ物がなくなりやすいような場所で、道具が使えるようになったり、進化しているんじゃないかなと僕は思っています。

ちかさん:
はい。

藤田先生:
篠原先生、川上先生、ありがとうございました。ヒトが道具を使ったりいろいろなものを作るようになるのは、いくつも理由がありそうな感じですけれど、その中のどれが一番大事かというのは、いろいろな研究が進んでこれからわかってくることだと思います。ちかさん、いいですか?

ちかさん:
はい。ありがとうございました。

――ちかさん、いろいろおもしろいことがわかりましたね。大丈夫ですか?

ちかさん:
はい。

――よかったです。またぜひ質問してください。さようなら。

ちかさん:
さよなら〜。

藤田先生:
さよなら〜。

篠原先生:
さよなら〜。

川上先生:
さよなら〜。

――先生方が力を合わせて答えてくださいました!


【放送】
2023/11/12 「子ども科学電話相談」

10時台を聴く
24/01/07まで

10時台を聴く
24/01/07まで