10時台を聴く
23/12/31まで

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ふじはらあささん(小学1年生・東京都)からの質問に、「昆虫」の清水聡司先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
清水先生:清水聡司先生(大阪府営箕面公園昆虫館 副館長)
あささん:質問者


――お名前を教えてください。

あささん:
あさです!

――あささん、どんな質問ですか?

あささん:
クモがクモの巣をずっと張り続けると、いつか糸が出なくなりますか? また、クモはどうして自分の張ったクモの巣に引っ掛からないんですか?

――あささん、よく観察していますねぇ。どんなときにこの質問を思いついたのかな?

あささん:
雨が降っていたときに看板の近くにいっぱいクモがいて、その中で一番大きいクモの巣を張っていると思ったクモがいたから、きっとクモの糸は切れちゃうのかなぁと思いました。

――雨の日に、よく見ていましたね。では清水先生に答えていただきましょう。先生、お願いします。

清水先生:
はい。あさちゃん、こんにちは。

あささん:
こんにちはー!

清水先生:
おっ、元気やなぁ。あさちゃんは、クモは次々クモの巣を張る、1つ巣を作ってまた次にというふうに、ずっと巣を作り続けると思う?

あささん:
……うん。

清水先生:
巣をいくつもいくつも次々と作っていく、というふうに思ってる?

あささん:
うん。

清水先生:
そういうふうに考えているんやね。クモはね、実はいらなくなったクモの巣を食べちゃうんです。張り替えるときに古い巣を食べちゃうんです。巣を作っている糸を食べちゃうんですよ。それをまた栄養、巣を作る材料にして次の巣を作るので、普通は次々に新しい巣を作り続けるわけじゃないのね。もし、あさちゃんが疑問に思ったみたいにどんどん新しい巣を作り続けた場合、じゃあ糸は出なくなるかというと、それは出なくなると思います。クモの糸を作るのにも材料がいるでしょう?

あささん:
うん。

清水先生:
クモは、おなかのところ、お尻の近くに、「糸いぼ」とか「出糸突起」と呼ばれている糸を出すところがあるのね。今度クモを見たら、おなかの下のほうを裏側からちょっと見てください。イボイボが見えると思う。6個ぐらいあると思います。そこから糸を出すんやけれども、それが体の中の、ちょっと難しい言い方やけれども「絹糸線(けんしせん)」という糸を作る器官があります。そこで糸の材料を作ってため込んであるのね。ちょっとねばっとしたドロドロの液体みたいになっているのを、空気中に押し出しながら引っ張り出すと固まって糸になるのね。こういう材料を使って糸を作っているので、例えば無理やり引っ張り出すと……あさちゃんが見ているのはたぶんジョロウグモだと思うんだけど、ジョロウグモっていう大きなクモ、わかる?

あささん:
うん。

清水先生:
そのクモがずっと連続して糸を出すとどれぐらいかを調べると、200〜300メートル、長いと700メートルぐらいという記述があるんやけれども、数百メートルなのね。それを材料にして巣を作っていくと、どれぐらいの数ができるかちょっと計算ができないんやけれども、それを引っ張り出していていったん材料が切れたら、出なくなると思います。ただ、1つの巣を作るのにそんなに何百メートルもたぶん糸はいらないので、張り替える分には全然問題ないんです。ふだん自分で必要な巣を張っていく分には、材料として全く問題がありません。クモはね、移動するときにもお尻から糸を引っ張っていくの。今度ちょっと見てみてね。クモは歩くときにも糸をずーっと引っ張っていくの。

あささん:
なんで?

清水先生:
なんでやろな。ねぇ。自分の通った道がわからなくなると困るからかなぁ。例えばジョロウグモなんかだったら、お尻に糸をくっつけておくと敵が来たときにその糸をパッと伸ばして、その糸にぶら〜んとぶら下がるの。ちょっと意地悪かもしんないけど、今度あさちゃん、クモの巣をチョンと突いて刺激してみてください。クモは隅っこに逃げることもあるけれど、それ以上嫌がるとそこからパッと飛び降ります。お尻からの糸でぶら〜んとぶら下がってしばらく様子を見てて、本当に危ないと思ったら下まで下りちゃうけれども、その糸をまた上って巣に戻ります。そういう非常用の糸があります。だからふだんいろいろな用途に使う分の糸というのは、普通に使っているとなくならないです。クモの糸の長さの話が出たので……蚕って、知ってるかな?

あささん:
知りません。

清水先生:
あっ、知らないか、そっか。糸を取るために、昔から人間が利用しているガの幼虫、ガの仲間で、使うのは幼虫なんやけど、繭を作らせてその糸でお洋服を作る布を作ったり、そういう活用をしている虫なんやけれども、それだと糸はクモよりも長くて、1,000メートルとか1,500メートルぐらいが1匹から取れるんです。

だから答えを言うと、ずっと引っ張り出し続けたらなくなると思いますけれども、次々に栄養を蓄えてそれから材料を回収して作り続けているので、生活するには全く困らないということです。それから、クモの糸はネバネバしているので引っ掛かるやん、けどクモは引っ掛かんない、ということやね。

あささん:
はい。

清水先生:
それ、すごい不思議やね。どうやっているのかというと、今度クモの巣を観察してください。縦に放射状というか、真ん中から外側に向かってまっすぐにたくさんの糸が伸びている部分は、ネバネバがありません。あさちゃんが手で触っても、くっつきません。知ってる?

あささん:
うん。

清水先生:
だけど横糸というのにはベタベタがついてるやろ? わかる? くるくるっとなっている部分、丸になっている部分ね。そこにネバネバでベタベタの小さな玉がついてるんやけれども、それが、獲物が引っ掛かるとくっつけるための糸なのね。だからクモが移動するときには、縦糸の部分とか巣を作っている枠糸の部分、ネバネバのないところをなるべく歩くようにしているのが1つあります。あと今度、怖くなかったらクモを捕まえてみてください。足の先に細かい毛がすごくたくさん生えています。それがあることで、くっつきにくくなっています。あとは生き物なので多少の脂分、ワックス分というのがあるので、それでネバネバに当たってもくっつきにくくなっています。それで、おじさん、ちょっといたずらしたことがあるんやけれども、クモを捕まえて別のクモの巣にポイッと投げたの(笑)。どうなったと思う?

あささん:
ダメなんじゃない?

清水先生:
うん。捕まっちゃったと思う? 実はね、ネバネバでくっつけるタイプのクモの巣に同じネバネバで巣を作るタイプのクモ、ジョロウグモの巣にジョロウグモを投げつけても、くっつきません。体にもすごく細かい毛が生えていて、体もくっつきにくくなっているの。今度やってみて。

あささん:
はーい。

清水先生:
ただ、お皿や布みたいに広い巣を作るクモの(巣の)上に他のクモをポイッとのせると、隠れていた場所から網の上にのったクモを捕まえるために持ち主のクモが素早く出てきて食べちゃいます。だからネバネバ対ネバネバだけにしといてください(笑)。

――清水先生みたいに詳しくないと、いろいろ触っちゃいけないクモとかもありますので気をつけないといけないですね。

清水先生:
そうですね、そのあたりは気をつけてもらいたいんですけど、きれいな巣を作るタイプのしま模様のクモはジョロウグモとかコガネグモとかの仲間なので、そういったもので見てもらったらいいかな。

――最初は昆虫館とか、詳しい大人や先生と一緒に見てほしいですね。

清水先生:
そうですね。まず大人と確認してください。背中に赤い模様のあるクモはセアカゴケグモという毒グモの可能性もあるので、これは絶対にやめといてください。

あささん:
はーい。

――あささん、どうですか、わかりましたか?

あささん:
はい。

――ジョロウグモというクモだと、糸の長さは何百メートルもあると。

清水先生:
それぐらいの糸の材料を持っていますね。

――ということだそうです。あささん、質問をしてくれてありがとうございました。また質問を送ってくださいね。さようなら。

あささん:
ありがとうございました。

清水先生:
はい。さよなら〜。

――さよなら。


【放送】
2023/11/05 「子ども科学電話相談」

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