10時台を聴く
23/12/24まで

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くどうこうへいくん(小学1年生・宮城県)からの質問に、「動物」の成島悦雄先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
成島先生:成島悦雄先生(元・井の頭自然文化園園長/獣医師)
小松先生:小松貴先生(昆虫学者)
こうへいくん:質問者


――お名前を教えてください。

こうへいくん:
こうへいです。

――どんな質問ですか?

こうへいくん:
カブトムシやトンボは交尾をして卵を産んだら死んでしまうのに、ヒトや動物はどうして死なないんですか?

――こうへいくんはカブトムシとか飼ったことがあるんですか?

こうへいくん:
はい。

――だけど死んじゃったのかな?

こうへいくん:
うん。

――なのにどうしてヒトとか動物は長生きするんだろうという質問ですね。

こうへいくん:
はい。

――まず「動物」の先生に聞いて教えていただきましょう。成島先生、お願いします。

成島先生:
はい。こうへいくん、こんにちは。

こうへいくん:
こんにちは。

成島先生:
そうだよね。カブトムシやトンボなんかは卵を産むと成虫で死んじゃうよね。僕たち人間とかイヌとかウサギとか、周りにいっぱい動物がいるけれどもその動物は、子どもを産んでもちゃんとそれを育てて長生きしますよね。不思議だよね。

こうへいくん:
うん。

成島先生:
君は、どうして昆虫は早く死んじゃってヒトや動物は長生きすると思う?

こうへいくん:
……。

成島先生:
わかんないか、そうか。こうへいくんが言ったように、カブトムシやトンボは子どものもとになる卵を産むと死んじゃうでしょ?

こうへいくん:
うん。

成島先生:
でも子どもたちは、親がいなくてもちゃんと育って大きくなって、また成虫になって子ども(のもとになる卵)を産むじゃない。そうやって命をつないでいけるでしょ?

こうへいくん:
うん。

成島先生:
一方、人間や動物の場合は、例えば赤ちゃんを産んで、もし親が死んじゃうと、その子どもたちはどうかな。生きていけるかな?

こうへいくん:
生きられない。

成島先生:
生きられないよねぇ。やっぱりお父さんやお母さんがいないと無理でしょう? そういう生き方、どうやって命をつないでいくかという、たぶん生き方の違いだと思うんですよ。きょう、ここに「昆虫」の小松先生がいらっしゃるので、カブトムシやトンボのお話、聞いてみようか。

こうへいくん:
はい。

成島先生:
そのあとで、おじさんがヒトや動物の話をしたいと思います。では小松先生、お願いします。

小松先生:
はい。基本的に昆虫というのは、幼虫の時代と成虫の時代とで生きている目的というか、生き物が生きることに本当は意味も目的も何もないんですけど、表向きの目的が全然違っています。幼虫のときは、とにかく食べて成長するのが目的なんですよ。成長して早く成虫になるということ。成虫にならないと昆虫は繁殖できないんです。なので、繁殖できるような成虫になるために、1日も早く栄養をとって大きく育つことが目的なんです。

――こうへいくん、幼虫と成虫はわかるかな?

こうへいくん:
はい。

――よかった!

小松先生:
それで大人になったあとの成虫の目的というのは、とにかく子孫を残すことだけなんです。それさえできたら、昆虫はあとはもう死んでもかまわないんですよね。昆虫の成虫が行っているあらゆる動きは、最終的には必ず自分の子孫、自分の子どもを残すところにつながっていくんです。カブトムシとかは、オスどうしで戦うじゃないですか。

こうへいくん:
はい。

小松先生:
あれだって、結局のところライバルのオスをぶっ倒して、それでメスを独り占めする。要するにメスと交尾して自分の子孫、自分の遺伝子っていうのかな、それを持った子どもを産んでもらうのが最終的な目的なんです。ただ基本的に昆虫は、カブトムシに限らず成虫になったあとの寿命はみんな短いんですよ。チョウでもトンボでもカマキリでも、大体2か月から3か月生きたらまあまあ普通なんじゃないかなというものが多いです。ただ、コクワガタって、知ってますか?

こうへいくん:
はい。

小松先生:
コクワガタはクワガタのわりと小さめの種類ですけど、あれは成虫になってひと夏活動をしたあと、冬眠して次の年も生きるんです。カブトムシより長く生きるんです。人が大事に育てますと、そのまままた次の冬も越して、たぶん4年か5年ぐらいは生きるんです。成虫になったあと、すごく長生きするんです。ただそのコクワガタにしても、交尾させたり卵を産ませたり、繁殖をさせるのとさせないのとでは、その後の寿命の長さがだいぶ変わってきます。繁殖させてしまうと、させないときよりも明らかに早死にしちゃうんです。
体の小さい昆虫にとって、おなかに卵を作ってそれを産むという作業は、たぶんものすごく力を使うんですよね。なので、人が育ててより長生きさせたいなと思うときには、交尾とか産卵とか子どもを作らせることを一切させないほうが長くは生きます。それが果たしてその虫にとって幸せかどうかはわからないんですけれども。

ただおもしろいことに、私、きょうの最初のほうに、ルイスツブゲンゴロウという米粒ぐらいのちっちゃいゲンゴロウの話をしたんですけれども、本当にちっちゃい虫なんですけど、この仲間のある種類が、成虫になったあと2年生きることが最近わかったんです。カブトムシとかカマキリみたいなでっかい昆虫は、成虫になったあと3か月とか4か月しか生きられないのに比べて、米粒ぐらいのちっちゃい虫が成虫になったあと2年も生きるって、すごいことだと思うんですよね。私の経験上ですけど、より体がちっちゃくて大したことなさそうに見える虫のほうが、成虫になったあと、寿命が長い傾向があるような気がします。それが一体なぜなのかは、ちょっと私もよくわからないんですよね。

成島先生:
小松先生、ありがとうございました。基本的には、昆虫は大人になって子孫を残したらすぐ死んじゃうというお話でしたが、こうへいくん、それはいいですか?

こうへいくん:
はい。

成島先生:
それでじゃあ、動物の場合ですよね。例えばアフリカゾウは70年ぐらい生きるんですって。君の周りにいるイヌやネコだと、たぶん15年くらいから長生きして20歳超えるのもいるよね。ウサギだと5〜6年、それからアカネズミという野生のネズミだと2年ぐらいなので、小松先生のお話とは反対に、哺乳類の場合は体が大きいほうが大体長生きする傾向にあるんです。ここでいう動物を哺乳類というふうに考えると、哺乳類の場合は、子どもを産んだあとに育てなきゃいけないんだよね。お母さんがおっぱいをあげて育てなきゃいけない。そしてある程度大きくなったら、生きるためのいろいろなことを勉強しなきゃいけないんです。こうへいくんは今、学校に行ってお勉強してるでしょう?

こうへいくん:
はい。

成島先生:
動物たちも一人前になるために、食べ物はどうやって探せばいいかとか自分のパートナーをどうやって見つければいいかとか、いろいろなことを勉強しなきゃいけないわけ。だからそのための時間が必要なんですね。昆虫なんかと生き方が違って、生まれたあとにいろいろなことを学習しなきゃいけないということで、そのための時間が必要なんです。それで長生きをするようになったんじゃないかなと考えられるんです。

こうへいくん:
はい。

成島先生:
例えばこうへいくんが大人になるには、まだ10年ぐらいかかるじゃない? もっとかかるかもしれないけど、要するに人間はいろいろなことを勉強しなきゃいけないから、大人になるまでにたくさん時間がかかるんだよね。他の動物も同じように、大人になるまでには昆虫に比べたらものすごく時間がかかるんです。長生きをすることによっていろいろなことを学んでうまく生きて、ちゃんと子どもを作ってその子どもがまた次の世代を生きていけるようにということを考えると、昆虫の生き方と、私たち哺乳類とかいわゆる動物の生き方は違うので、その結果として、長生きかどうかというのが出てくるんだと思います。

――人間とか哺乳類は、産む数も少ないですね。

成島先生:
少ないです。

――昆虫はたくさん産みますけれども。

成島先生:
昆虫はたぶんバーッと産んであとはまあ勝手に、というのはちょっとおかしいかもしれませんけど、そういう戦略をして、(ほかの生き物に)食べられてもある程度の数が残って次の世代になればいいんだという、そういうことで生きているわけです。一方、動物の場合は、子どもの数を少なくして丁寧に育ててちゃんと大人にするという、保険でしょうけれどもそれをかけて次の子どもを作るということなので、そのためにはいろいろな投資をしなきゃいけないので、そのために時間がかかるということだと思います。

――いずれにしても、昆虫も動物も自分たちの子孫をちゃんと残すために、戦略といいますか、どういうふうにしようかというのが違うんですよね。

成島先生:
生き方、子どもの作り方の違いだと思うんですよ。ちょっと難しいかもしれないけど、なんとなくわかってくれたかな?

こうへいくん:
はい。

成島先生:
ありがとうございます。

――よかったです。自分でどうしてだろうと疑問に思って質問してくれて、そういう発想はすてきだなと思いました。またもし昆虫とか飼う機会があったら、いろいろ観察してみてください。

こうへいくん:
はい。

――質問してくれてありがとうございました。

こうへいくん:
ありがとうございました。

成島先生:
さよなら〜。

こうへいくん:
さよなら〜。

――さようなら。


【放送】
2023/10/29 「子ども科学電話相談」

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