10時台を聴く
23/12/24まで

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いのうえかいくん(中学3年生・神奈川県)からの質問に、「天気・気象」の福田寛之先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
福田先生:福田寛之先生(気象予報士)
かいくん:質問者


――お名前を教えてください。

かいくん:
かいです。

――どんな質問ですか?

かいくん:
夏とかにエアコンの室外機の前を通ったりすると、すごい熱風が噴き出してくるじゃないですか。あれでその周りの気温がちょっと上がっている、逆に言えば、そのエアコンを消したらその周りの気温がちょっと下がると思うんですけれども、今、世界中にいっぱいあるエアコンを全部消したら、地球の気温もちょっと下がったりするのかなとか、でもやっぱり難しいのかな、という質問をしたいです。

――なるほど。これは福田先生、お願いします。

福田先生:
はい。かいくん、こんにちは。

かいくん:
こんにちは。

福田先生:
気象予報士の福田です。よろしくお願いします。

かいくん:
お願いします。

福田先生:
そうですよね。真夏に室外機のところを横切ると、すごい熱風でちょっとびっくりしますよね。それで考えたのが、もし室外機がなかったら、エアコンをすべて止めたら、少しは気温が下がって夏も過ごしやすくなったりするんじゃないのかなということですよね。

かいくん:
はい。

福田先生:
かいくんとしては、室外機をすべて止めたら気温は下がると思いますか? もしくは、どのくらい下がると想像したりしましたか?

かいくん:
でもやっぱり、エアコンはいっぱいありますけど地球は大きいですから、正直そんなに変わんないのかなとか思います。

福田先生:
すごくいい着眼点だと思います。実は最近研究が出ていまして、これは大阪をもとにしているんですけど、大阪の猛暑の年の気温がありまして、そこでエアコンを全部消したときをシミュレーションしたんです。コンピューターで計算したところ、0.3℃くらい、エアコンの室外機が影響していたといわれています。

かいくん:
あぁ、そうですか……。

福田先生:
ちょっと、残念そうな感じ(笑)。でも、0.3℃はすごく小さな数字のように思うかもしれないんですけど、平均で0.3℃ですからそれほどばかにできない数字ではありますし、今後この数字はさらに大きくなる、要は地球温暖化や……「ヒートアイランド」って、ご存じですか?

かいくん:
はい、わかります。

福田先生:
ヒートアイランドというのは都市が周りの郊外より気温が高くなることで、温度の違いで表したときに気温の高い都市が低い郊外から浮かび上がった島のように見えることから、熱の島、ヒートアイランドというものなんですけど、ヒートアイランドも、どんどん進んでいくと予想されています。暑くなればなるほど、よりエアコンを使うようになるからですけど、研究によると、50年くらいたつと0.3℃からさらに上乗せされて0.6℃くらい、室外機から出る熱で気温が高くなるといわれています。ですから、かいくんが考えてくれた、少しは気温が下がるんじゃないかなっていうのは、確かにそうです。

かいくん:
あぁ……。

福田先生:
ただもう1つ、「世界中」というところがポイントで、室外機による熱の放出、熱を出すというのは世界的に広まるようなものではなくて、もっと一部の地域、局地的なんですね。さっきヒートアイランドの話をしましたが、特に都市部でその影響が大きくなるといわれています。

かいくん:
なるほど。

福田先生:
エアコンの室外機が集中しているエリアですよね。都市部がそうだと思うんですけど、そういったところがより暑くなることに影響が出るということになります。

かいくん:
あぁ、なるほど。これからどんどん気温が高くなってよりエアコンを使うようになって、それをみんな消したら、気温の下がる大きさも大きくなるということですね。

福田先生:
エアコンを使うことによって、室外機から出る熱の影響が大きくなるということですね。確かに消せばそれだけ下がる率も高くなる、割合も多少高くはなるんですけど、もう1つ違う問題があります。エアコンを使うのは暑いときで、あまり暑いと熱中症とかになってしまうじゃないですか。

かいくん:
はい。

福田先生:
そういった健康被害が起きないためにエアコンをつけるという側面がありますので、エアコンを消して将来的に1℃弱ぐらい気温が下がることを選択するのか、体を猛暑から守るためにエアコンをつけることを選択するのか、ということの違いにもなってきます。

かいくん:
うん……じゃあ例えば、みんなで大きい商業施設かなんかに集まってそこだけをガンガン冷やすようにしたら、その効果も大きくなる、みたいなことですかね。

福田先生:
そうですね。それを違う言葉でいうと、気候変動とか地球温暖化の「緩和と適応」といいます。地球温暖化の対策としての「緩和」はどういうことかというと、地球温暖化を進めない、温室効果ガスを減らす、省エネをするというのが「緩和」で、かいくんが言ってくれた、「エアコンを消して温度を下げるようにしよう」というのは、緩和というものだと思います。
それに対して、私がこういった側面もありますよというふうにお伝えした、温暖化で気温が上がる、ヒートアイランドで気温が上がるので、それの被害に遭わないようにエアコンをつけようとか、もしくは同じ場所に集まってなるべく被害から逃れようというのは、「適応」ですね。温暖化やヒートアイランドが進んでしまった社会の中でどう健康に生きるかというもので、この2つを考えながら、温暖化対策やヒートアイランド対策が行われているというのがあります。

かいくん:
はい。

福田先生:
ただ実は朗報もありましてですね。エアコンの室外機が少なくなる、なくす方法もあるんです。

かいくん:
おっ。

福田先生:
それは何かというと、エアコンというのは、「ヒートポンプ」といって部屋の中の熱を外に出しているんですが、そのために室外機から高い温度の熱風が噴き出しているわけなんです。それを、空気中ではなくて土の中に埋めてしまうものが、技術として今、開発されています。なぜ土の中がいいかというと、土の中は年間を通して温度がそれほど変わらないんですね。大体15℃とか17℃くらいです。部屋の中の熱を、ホース、管みたいなもので土の中に放出すると冷えて戻ってくるので、空気を温めることもないですし、夏の暑い空気を取り込んで温度を下げる電力も少なくて済むということになります。

かいくん:
へぇ〜。

福田先生:
すでに東京スカイツリーとかで使われているということなので、こういった技術によって少しずつエアコンから出る熱は少なくなるかもしれないというふうにいわれています。

かいくん:
うちの父がこのあいだ、その熱をお湯を沸かすのに使ったらいいんじゃないかという話をしていたんですけれども、それはなんか、難しいんですか?

福田先生:
エアコンの熱を、お湯を沸かすために使うということですか?

かいくん:
はい。給湯器と一緒にしちゃって。

福田先生:
これも実は、いろいろなご家庭で使われているシステムで、あります。

かいくん:
あっ、あります?

福田先生:
はい。さっき言ったように、エアコンというのは部屋の中の熱を、ちょっと難しい言葉だと「冷媒」という、熱を運ぶフロン、「フロン」って、聞いたことありますか?

かいくん:
いいえ。

福田先生:
あんまり聞いたことないかな。エアコンに使われていて、冷媒という、熱を運ぶための液体であったり気体であったりする物質があるんです。そこに乗せて運ぶんですけど、今はそれを使って、例えば室外機で外に出している熱をお湯のタンクに運んで、その熱の力でタンクを温めるというのはあると思います。

かいくん:
なるほど。

福田先生:
「フロン」と言ったんですけど、今は「代替フロン」といって、以前はフロンガスは非常にオゾン層を破壊するので問題になっていたんですけど、今はそれが少ないものを使うようになっています。それが「代替フロン」という名前です。

かいくん:
はい。

――福田先生、かいくんは本当にいろいろ考えていますよねぇ。

福田先生:
そうですね。いかに身の回りの熱いものをプラスに持っていくかということで、本当にいいですね。

――かいくん、新しい技術で解決できる問題もあるかもしれないので、これからどんどん新しい発想と技術で変えていってほしいなと思いました。かいくん、どうですか、わかりましたか?

かいくん:
はい。よくわかりました。

――質問してくれてありがとうございました。

かいくん:
ありがとうございました。

福田先生:
ありがとうございました。

――さようなら。

かいくん:
さよなら〜。


【放送】
2023/10/29 「子ども科学電話相談」

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