10時台を聴く
23/08/06まで

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ただしゅんすけくん(小学3年生・広島県)からの質問に、「昆虫」の小松貴先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
小松先生:小松貴先生(昆虫学者)
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部講師)
しゅんすけくん:質問者


――お名前を教えてください。

しゅんすけくん:
しゅんすけです。

――どんなことが聞きたいですか?

しゅんすけくん:
毛虫はガの幼虫だと見るだけでわかりますが、幼虫や芋虫は、ガの幼虫なのかチョウの幼虫なのか、見るだけではわかりません。どう見分ければいいですか?

――見分け方ということですね。では小松先生、お願いいたします。

小松先生:
しゅんすけくん、こんにちは。

しゅんすけくん:
こんにちは。

小松先生:
芋虫を見て、それがガなのかチョウなのか、ぱっと見て区別する方法があるかという話なんだけれども、あのー、ありません。もしあるんだったら、逆に私が知りたいぐらいなんですよね。さっき、「毛虫はガの幼虫だと見るだけでわかる」と言ったんだけど、それはどこかに書いてあったのかな? それとも誰かが言ってたのかな?

しゅんすけくん:
……えーっ?

小松先生:
毛虫を見るとガの幼虫だと反射的に思う人が世の中にはいっぱいいるんだけれども、実はチョウの幼虫でも毛虫は結構います。中南米、外国の熱帯雨林に行くと、モルフォチョウという、羽が全部青くてキラキラしているすごくきれいなチョウの仲間がおります。

しゅんすけくん:
あぁ。

小松先生:
知ってるかな。図鑑にはよく載っているので、ちょっと調べてもらうといいんだけど、あのきれいなモルフォチョウの幼虫は普通に毛虫なんですよ。たぶんつまんで拾って何も知らない人に投げたら、「うわっ、ガの幼虫だ!」ってはだしで逃げるぐらいの、恐ろしい見た目の毛虫なんです。

しゅんすけくん:
ふふふっ。

小松先生:
昆虫に限らず、生き物は人間が作ったものではないので、例えば人間が、こういう形、特徴のものが、こういう生き物の仲間だというふうに決めたとしても、それに合致しないものがどうしても出てきちゃうんです。わかりやすいのが、キノコ。全国各地に、「毒キノコと食べられるキノコをぱっと見て瞬時に区別する方法」みたいな言い伝えがいっぱい言い残されているんです。「色が派手だったら毒キノコだ」とか、「縦に裂ければ食べられる」とか、「切って色が変わったら毒キノコだ」とか、いろんな言い伝えがあるんですけれども、これらの言い伝えは全部“ウソ”なんです。

しゅんすけくん:
うーわっ、はははは。

小松先生:
ウソっていうか、すべてにおいて例外があって、信用できないんですよ。色が派手で食べられるキノコだっていっぱいありますし、毒があろうがなかろうが大抵のキノコは縦に裂けますから。

しゅんすけくん:
あぁ。

小松先生:
結局のところ、ぱっと見て毒キノコと食べられるキノコを区別する方法なんてなくて、1種類1種類、この種類は毒である、この種類は食べられる、というふうに覚えていくしかないんです。

しゅんすけくん:
はい。

小松先生:
芋虫、毛虫も全くこれと同じで、この種類はガである、この種類はチョウであるというふうに、1種類ずつ全部覚えていくのが本当は理想なんですけれども、ガの仲間は日本だけでも5,000種類とか6,000種類いるんです。中にはまだ幼虫が発見されていない種類もあるので……

しゅんすけくん:
えぇーっ、ふふふふ。

小松先生:
ガの幼虫を1種類ずつ全部覚えるのは、現実的じゃないんです。ただチョウに関しては、少なくとも日本に確実に定着しているとわかっているのはせいぜい250種類ぐらいなので、250種類のチョウの幼虫全部を覚えていただくのが、たぶん簡単なんじゃないかなと思います。チョウの幼虫の見た目250種類を全部覚えれば、それ以外の姿、見た目をしたものは、全部ガだと言い切ることができるんですよ。

しゅんすけくん:
……はい。

小松先生:
250種類のチョウの幼虫の見た目を全部覚えるなんて、すごく大変じゃないかと思うかもしれないんだけど、実のところ、そんなに大変じゃないんです。例えば今、本屋とかに行きますと、日本にすんでいるチョウの幼虫だけの絵とか写真を紹介して、それを識別する図鑑みたいなものが10も20も出ています。そういうものを1冊買って、ちょっと時間があるときに片手間にパラパラ見るだけでいいんです。そうすると意外と普通に覚えちゃいます。私は2歳か3歳のころ、家に置いてある本で私が読んで理解できるものが図鑑しかなかったんです。だから暇さえあれば図鑑ばっかり見てたんですよ。そしたら2歳か3歳ぐらいの間に、日本にすんでいる全部のチョウの種類の幼虫の見た目を大体覚えちゃいましたから。

しゅんすけくん:
えーっ、へへへへ。すご〜い。

小松先生:
だから、たぶんできます。それに最近の子どもたちは、アニメとかゲームに出てくる敵の名前とか技の名前とか、800種類とか900種類、平気でぱっと覚えちゃうんでしょう? 何とかモンスターとかドラゴン何とかみたいな、ああいう感じで覚えられるはずなので、チョウの幼虫も何とかモンスターの仲間だと思って、図鑑を見る習慣をつければ簡単に覚えちゃいますから、だまされたと思ってやってみるといいんじゃないかなと思います。

しゅんすけくん:
はい。

――しゅんすけくん、今、「はい」って言ったけど、どう? 覚えられそう? さっき、すごく笑ってたけど。

しゅんすけくん:
わからん……。

――ねぇ。小松先生は、ちっちゃいときに覚えちゃったんですね。眺めていると、この色とこの形はこれだなっていうふうに、幼虫と大人のチョウの姿をセットで覚えちゃうんですか。

小松先生:
そうですね。

しゅんすけくん:
へぇ〜。

――しゅんすけくんはチョウとか好きなの? 虫が好き?

しゅんすけくん:
好き、だけど。

――「頑張って覚えよう!」というほどではないのかな(笑)。林先生も笑ってらっしゃいましたけど、先生もそうやって好きなものを覚えて?

林先生:
覚えようと思って覚えてはいなかったと思いますね。でも魚が好きで、生まれたところが魚市場の社宅だったから、食べられる魚だけだったんですけど、毎日のように見ていました。そのうち、捨てられた魚も見るようになって、この魚はなんだろうと調べたり。そういうので覚えたのかなと思いますね。

――覚えようというよりも、毎日ちょっとずつ眺めたりするといいんでしょうね。

小松先生:
私も、覚えようとして見ていたつもりは全くなかったです。

――そうすると、しゅんすけくん、今度幼虫見ただけでこれだなってわかって、みんなから「すごーい」って言われるかもしれませんね。

しゅんすけくん:
はい。

――毛虫だからといって、ガとは限らなくてチョウのこともあるし、本当に1つ1つ違うんだよということでした。大丈夫かな、わかりましたか?

しゅんすけくん:
はい。

――よかったです。またぜひ質問してくださいね。ありがとうございました。

しゅんすけくん:
ありがとうございました。

小松先生:
ありがとうございました。

――さようなら。

しゅんすけくん:
さよなら〜。

小松先生:
さよなら〜。


【放送】
2023/07/30 「子ども科学電話相談」

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