世界中に電話をつなぐ「ちきゅうメイト」。AIを使った最新式の入学試験の話題です。6年生の娘さんが先日受験したばかりというボッティング・大田・朋子さんにうかがいました。
【出演者】
大田:ボッティング・大田・朋子さん(ライター/イギリス・ブライトン在住)
ローズ:當間ローズさん(土曜担当MC)
中村:中村慶子アナウンサー
ローズ:
イギリスのお受験、どんな様子でしたか?
大田:
今回娘が受験したのは私立中学にあたる受験でした。日本の大学入試のように共通一次試験と、学校ごとの二次試験があるのですが、一次試験がコンピュータを使ったAI診断の「アダプティブ試験」というもので、この試験を受けた時、<最先端の試験だ!>と感心しました。
ローズ:
AI診断のコンピュータ試験ですか! それは進んでいますね! どんなびっくりポイントがありましたか?
大田:
はい! 大きく3つ、びっくりポイントを挙げたいと思います。
- ① 正解すると、問題の難易度が上がっていく試験
- ② 年齢だけではなく、生まれた日まで考慮して診断される
- ③ 私がやっても難しい! 表面的な学力ではなく、思考力や言語力を測るテスト
ローズ:
えー! 気になる! ではまず①のレベルが上がっていく、とは?
大田:
コンピュータを使った適正テストなので、正解したか不正解だったかによって、そのたびに受験生のレベルに最適な問題が出題されるんです。受験者がそれぞれ違う問題を解くなんて新しい! と思いました! 正解すればするほど問題の難度が上がっていくので、普通の試験であれば、受験の後に手応えがあったかどうかで大体の成績がわかりますが、このテストは手応えがあった問題が簡単だったと感じた場合は結果が悪く、手応えがなかった問題がどんどん難しくなった場合は試験結果がよいということになるんです。
中村:
受験をしているお子さんもとまどうでしょうし、親としてもリアクションに困りますね。
大田:
先生方からは、「練習問題や模試をやった後に手ごたえがないと子どもも親御さんも落ち込むと思いますが、『難しいと感じる方がいいタイプの試験だ』ということを理解してください!」と言われました。あと「とにかく励ましてください!」とか。
中村:
できない問題ばっかりというのは確かに心が折れそうですもんね、親の励ます力が試されそう。
ローズ:
②の生まれた日まで考慮されるというのは?
大田:
イギリスの就学は日本より1年早いので小学6年生は10歳から11歳の子どもに当たります。日本もそうですけど、誕生日によっては最大でほぼ1歳年齢が異なることになりますよね。
ですがこの試験では、受験者情報に子どもの生年月日を入力して、「〇歳△か月☆日」と設定されます。つまり日齢(にちれい)に合わせた問題が出題されるんです。
中村:
なるほど! 早生まれの不公平さがなくなるんですね。
大田:
うちの子どもも早生まれでその点は思うところがあったので、よかった点ですね。このコンピュータの試験以外にもイギリスでは早生まれの子供には加点があるなど、配慮してもらえているところは多いと感じます。
ローズ:
そして最後の「私がやっても難しい」というのは?
大田:
私も練習問題をやってみたんですが、大人の私がやっても難しい試験でした! 例えば、ラジオでわかりやすいように言語に関する簡単な例をあげると、「moon : night(月と夜)」と並んだ次に「sun(太陽)」とあったら、その次に続く単語はなにかを考えるんです。ローズさんは分かりますか?
ローズ:
えっと、たぶん「day」ですかね?
大田:
さすがですね! 正解です! 答えは「day(昼間)」です。言葉どうしの関係性を考える問題なんですよね。こうした問題がもっと難しい単語で出題されて、言語に対する理解度を測るんですね。
ローズ:
なぜ、こういう形の試験が導入されることになったのでしょうか?
大田:
AI技術の向上もあると思いますが、何より<2年後の入学>に向けて、子供の潜在的な能力をテストしたいというのがあると思います。
ローズ:
ちょっと言っていることがよく分からないのですが、入学は2年後なのでしょうか? どういうことでしょう?
大田:
ですよね(笑)。その辺りを一応説明しますね。
イギリスでは日本と似ている仕組みの公立の学校と、私立学校を指すパブリックスクールとで大きく分かれます。このパブリックスクールという方に娘は通っているのですが、13歳までは小学生となる「プレップスクール」、それに卒業すると中学と高校を兼ねた「シニアスクール」が始まります。おもしろいのは娘が通っているパブリックスクールは、卒業の2年も前にシニアスクールの受験があるんです。
ローズ:
ということは娘さんは8年生で卒業ということであってますか?
大田:
就学して8年でプレップスクール卒業ですね!
中村:
なぜ卒業の2年前に試験をするのでしょう?
大田:
優秀な生徒を確保したいということももちろんあると思いますが、大きな理由はパブリックスクールのカリキュラムでは「ペーパーテストだけではなく音楽やスポーツ、社会貢献活動などの課外活動も評価の対象」だからだと思います。入学前に自分の活動をまとめて提出して、優秀な生徒には学費が免除されるなどの制度もあります。受験後の2年間は、そういった課外活動に打ちこめる期間としても捉えられています。
ローズ:
へー! 音楽や社会貢献も入試に考慮されるんですね! おもしろい! こうした学校の仕組みについて大田さんやまわりの方はどのように感じていますか?
大田:
試験勉強だけに偏らず課外活動も評価される仕組みやそれを伸ばしていくパブリックスクールは世界的にもファンが多いです。世界中から多くの生徒がきています。実は私の家族も夫がこのパブリックスクール出身で、その教育を受けさせたい、とイギリスに引っ越してきた経緯があります。
子どもの個性を伸ばす教育方法はいろいろあると思いますが、学力だけではなく文武両道というか幅広いことにチャレンジするところや、どんなことでも子どもが好きなことに打ちこめる環境があるのがすばらしいなあと思っています。
中村:
大田さん、どうもありがとうございました!
【放送】
2024/04/13 「ちきゅうラジオ」