午後6時台を聴く
24/01/28まで

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日本では親しみ深い“タコ”。日本で食べられるタコの多くは西アフリカの国・モーリタニアから輸入されています。
実は、日本からの援助によって発展してきたというモーリタニアのタコ漁についてJICA専門家の椿裕己(つばき・ひろみ)さんにうかがいました!

【出演者】
椿:椿裕己さん(JICA専門家、モーリタニア水産行政アドバイザー)
TOBI:レ・ロマネスクTOBIさん(日曜担当MC)


TOBI:
モーリタニアでは昔から水産業が盛んなのでしょうか?

椿:
決してそんなことはなく、モーリタニアはもともと水産物を食べる文化はほとんどありませんでした。古くから魚を食べる民族の方もいらっしゃいますが人数は少ないです。今でも魚より畜肉などの方が好まれます。

TOBI:
それがどうして多くのタコを輸出するようになったんでしょうか?

椿:
本格的に日本に輸出されるようになったのは1970年代頃からで、日本の市場でも需要が高いマダコ資源がモーリタニアの沿岸で豊富に存在することが明らかになりました。そこで、日本への販路を広げようと、JICAなどによって派遣された中村正明さんという方が、タコ漁の技術などを伝えました。この方は初めてモーリタニアに住んだ日本人で、勲章まで授与された現地では伝説的な日本人と言われています。
モーリタニア近海は、日本の三陸沖のように寒流と暖流が交差して、とても豊かな漁場となっています。浅瀬が続いていて、エサとなる貝類がひじょうに豊富だったため、タコが生息する条件を満たしていたのです。

TOBI:
水産の文化がないところに漁を伝えるのは大変かと思いますが、どのような方法でタコ漁を行っているんでしょうか?

椿:
モーリタニアでは、大型漁船によるトロール漁業と、カヌー漁船でタコツボを使ってとる2つの方法が主流です。その中でもタコツボ漁業の方が盛んで、日本に輸出されるタコは、ほとんどがこの方法でとられています。最盛期には、1年間にだいたい2~3万トンのタコが日本へ輸出されていました。

TOBI:
なぜ、タコツボの方法が盛んなのですか?

椿:
水産の文化が浸透していなかったモーリタニアの人たちにとって、船で遠方の漁場に行くなど高度な技術を使った漁業が難しかったようです。一方で、タコツボ漁業は他の漁業に比べて仕掛けも作業も単純ですので、モーリタニアで受け入れられて産業として成長してきました。タコだけを専門でとる方法なので、鮮度管理も徹底されて輸出にも向いていました。

TOBI:
今日、その漁に使うタコツボを椿さんに持ってきてもらいました!

船にぎっしり積まれるタコツボ

椿:
これです。大きさは長さ25cm、重さは2kg、ツボの入口は12cmくらいで色は黒です。原材料はペットボトルなどのプラスチックごみ。モーリタニア国内で大量に生産されていて、ツボの中にはコンクリートが入っていて、海底を転がらないようになっています。このタコツボを海に沈めて一晩くらい置いておき、引き上げるだけでタコが捕まえられます。

TOBI:
タコツボ漁に使うカヌーの画像も見ているんですけど、これすごい量ですよね! シダ植物かと思いました!
どのくらいの数があるんですか?

椿:
モーリタニア全体で「ピローグ」というカヌー漁船が3000隻以上操業しており、5000人ほどの漁師さんがいるかと思います。

ぎっしり並んだ、タコ漁に使うカヌー

TOBI:
でもタコって、最近日本ではかなり高級品になってきましたよね?

椿:
そうですね。世界的に健康志向が高まっていることもあって、タコの消費市場が日本以外で高まっていること、そして何より、日本の消費市場を支えてきたモーリタニアでのタコの生産量が急激に落ちたことが最大の原因かと思います。

TOBI:
とれる量が減っているんですか!

椿:
そうなんです。全盛期の6割ほどです。モーリタニア政府はタコの減少に関して相当の危機感を抱いています。
原因は十分に特定できているわけではありませんが、やはりタコのとりすぎが一因であるというのが、関係者の一致した意見です。あとは、地球環境の変化も原因として指摘する専門家もいます。

TOBI:
おいしいタコをこれからも食べるためにどうしたらいんでしょう?

椿:
モーリタニア政府は日本に対しても「何よりも水産業復興分野での協力を最優先してほしい」と要請を出しており、現在、水産資源調査ための協力がJICAおよび日本外務省で審議されています。
そして、海はつながっておりますので、モーリタニアだけの問題ではなく、地球環境の問題として、私個人としてもささやかな貢献を果たしていけたらと感じております。

TOBI:
よく食べているタコについて知らないことがたくさんありました! ありがとうございました!


【放送】
2024/01/21 「ちきゅうラジオ」

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