午後6時台を聴く
24/01/21まで

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クリスマスシーズンが終わると、フランスのお菓子屋さんに並ぶのが“ガレット・デ・ロワ”。日本でも幸運を呼ぶお菓子として店頭で見られるようになってきました。フランスで親しまれているガレット・デ・ロワの風習や魅力を、パリに20年以上お住まいの盛真理子(もり・まりこ)さんにうかがいました!

【出演者】
盛:盛真理子さん(フランス パリ在住)
TOBI:レ・ロマネスクTOBIさん(日曜担当MC)
中村:中村慶子アナウンサー


中村:
まず「ガレット・デ・ロワ」はどういうものか聞かせてください!

盛:
日本語に訳すと「王様のお菓子」という意味です。
もともとは、キリストの誕生を祝うために東方から三賢者がきた1月6日を祝う風習があり、そのときに食べるお菓子でしたが、今では1月中に楽しまれるお菓子となりました。地域により多少の差はありますが、定番のものは丸いパイ生地の中にフランジパンというアーモンドクリームを入れてオーブンで焼き上げたもの。サイズは大小さまざまですが、例えば4人分だと直径20センチほどで、切り分けて食べます。

中村:
おいしそうですね! 人気の理由は?

盛:
何と言っても特徴的なのは、お菓子の中にフェーヴ(フランス語でそら豆)という小さな陶器製の人形やオブジェが入っていることです。

盛さんの食べたガレット・デ・ロワ

中村:
このパイの中にフェーヴが入っているんですね! あたりつきみたいでおもしろいですね。

盛:
そうですね! そして食べるときにもルールがあって、まずそこにいる一番年少の人が、人数分に切り分けられたガレットのひとつひとつを誰が食べるのかを指名します。フェーヴに運よく当たった人は、ガレット購入時についてくる紙の王冠をかぶって、その日1日男性なら王様、女性なら王女様になれるという習慣です。お菓子を食べ進めていくうちに、フェーヴに「カチッ」と当たる感覚は子供のみならず大人も楽しいです。

TOBI:
盛さんは今年、何回くらい食べましたか?

盛:
今年は既に3回食べました。まだ少ない方ですね、あさっては長男の誕生日なのでその日も食べます。みんなで楽しめるので、今年はあと数回食べると思います。

TOBI:
本当にフランスではガレット・デ・ロワをよく食べる! ぼくも毎日のように食べていました!

中村:
そんなに食べても飽きないんですね! いろんな味があったりするんでしょうか?

盛:
毎年各お店が工夫を凝らして新しい味のガレットも作られています。今年のパリではチョコレートやピスタチオを使ったものに加えて、かんきつ類の皮の砂糖漬けが入ったものがトレンドのようでした。近年では豆腐やキノコを使った甘くないガレットもみられるようになっています。

TOBI:
お豆腐の中にフェーヴがはいっているんでしょうか? もう、いろいろすごいですね(笑)。

中村:
それほど皆さんに親しまれているんですね。盛さんの今年食べたガレット・デ・ロワにはどんなフェーヴが入っていましたか?

盛:
近所のお気に入りのパン屋さんのガレットを食べたんですが、中には真っ白なロバをかたどったフェーヴが入っていました。そのお店は大きなロバのオブジェが目印になっていることから、毎年限定版でロバをかたどったフェーヴが入っていて人気なんです。

このようにガレットの中にフェーヴが入っている!

TOBI:
食べる時はどんな様子でしたか?

盛:
子供たちは必死で「ここがかたい、ぜったい僕だ!」と言いながら、切り分けられたガレットの中からフェーヴがあるところを予想して食べ進めます。その時に当たったのは夫で、「あった、あった!」と子供のように喜んでおりました。フェーヴは当たりませんでしたが、次男は紙の王冠をかぶって満足していましたね。

中村:
当たったフェーヴはどんな風に楽しむんですか?

盛:
一般的には子供たちのおもちゃになったり、引き出しの中にしまわれたりしてしまうことも多いですが、フランスには熱心なコレクターも少なくありません。中には数万単位でコレクションを有する人がいます。最も古いものでは19世紀末のものもあるそうで、フェーヴを展示する美術館があったり、毎年フランスの各地でフェーヴが購入できるサロンや交換会も開催されたりします。

TOBI:
そうなんですよね! フェーヴはフランスではすごい人気なんです。盛さんはそういうサロンに行ったことはありますか?

盛:
実は1月7日の日曜日にパリ近郊の街で開かれたフェーヴ専門のサロンに行ってきました。フランスで最も大きな規模のフェーヴ市で、街の文化スポーツセンターのホールを使って80組ほどの出展者がさまざまなフェーヴを展示していました。

にぎわうフェーヴ専門サロン

中村:
にぎわっていますね!

盛:
年代別、地域別、テーマ別に分類されたフェーヴがずらりと並ぶ光景はまさに圧巻でした。ひとつ10サンチーム(日本円で50円くらい)のものから、高いものだと100ユーロ(日本円で15,000円以上)ほどのものまであります。子供も大人も自分の好きなモチーフのフェーヴを探すために、時間をかけて各ブースを回っていました。

TOBI:
盛さんのまわりでも集めている人はいますか?

盛:
私の友人もフェーヴが大好きで、フェーヴ目当てにガレットを購入し、イベントにも足を運んでいます。その友人は500個くらいのフェーヴを集めていて、初めはお菓子に入っているフェーヴを集めていたんですが、最近は情熱が増して、工房から直接とか、個人のフェーヴ作家が作っているものを購入したりしているようです。友人いわく、フェーヴ集めはいろいろありすぎてキリがないので、収集家はそれぞれ自分のテーマを決めて集めるという傾向があるとのことです。

TOBI:
どんなテーマが人気ですか?

盛:
皆さん自分の気に入ったものを自由に設定していますが、フェーヴの語源になっているそら豆の形をしたものを収集している人も多いそうです。私の友人の場合は、主にガレットのお菓子の形をしたフェーヴを中心に集めていると話していました。これも人気のモチーフのようです。

TOBI:
え!? ガレットの中にガレットが入っているんですか!? ユニークですね~! 盛さんはガレット・デ・ロワについてどのように感じていますか?

盛:
クリスマスと新年を盛大に祝って、ひと落ち着きする間もなく登場するのが、このガレット・デ・ロワです。生活の中に常に楽しみを盛り込むというフランスらしさを感じます。フランスにかぎりませんが、ヨーロッパの冬は曇りがちでとても寒い場所が多く、そんな時でも室内で人が集まって楽しめる工夫のような気がします。

中村:
そうですよね、当てる楽しみと集める楽しみもあるんですからね!

盛:
そうですね。フランスには伝統的にものを収集することが大好きという人が大勢います。フェーヴだけに限らず、自分の好きなものを集めて、コレクションを作り、その思いについて家族や友達にえんえんと語るという場面もよく見かけます。子供から高齢の方まで好きなものを前に、目をキラキラさせて話す姿はとてもほほえましいです。

中村:
コレクションで交流がうまれて、さらに温かく過ごせそうですね! 盛さん、どうもありがとうございました!


【放送】
2024/01/14 「ちきゅうラジオ」

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